住宅確保要配慮者支援とは|定義や家賃補助を解説

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著者:小日向

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住宅確保要配慮者」についてピックアップします。国土交通省でも支援が検討されており、高齢社会において大きな問題となりつつあります。本記事では、住宅確保要配慮者の定義や具体的な対策事例などをご紹介していきます。

国交省、住宅確保要配慮者への居住支援を検討

国土交通省では、2023年7月3日に「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(第1回)が開催されました。

これは厚生労働省、国土交通省、法務省の3省合同によるもので、住宅確保要配慮者の円滑な住まいの確保や、住宅政策と福祉政策が一体となった居住支援機能等のあり方について検討されてます。

日本はすでに高齢社会となり、今後ますます住宅確保に困窮する世帯が増加する見込みです。そのため、住宅確保に関するニーズの高まりが予想されているのです。

住宅確保要配慮者とは

ここでは、住宅確保要配慮者の定義や課題についてご紹介します。

住宅確保要配慮者の定義

法律では、住宅確保要配慮者は「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯」と定められています。また国土交通省令では「外国人、東日本大震災等の大規模災害の被災者等」が定められています。さらに地方公共団体によっては、「新婚世帯等への支援」を独自に定めているケースも見られます。

住宅を取り巻く課題

日本の住宅確保要配慮者を取り巻く課題としては、下記が挙げられます。

  • 高齢の単身世帯が大幅に増加
  • 若年層の収入源による少子化
  • ひとり親世帯の低収入
  • 生活保護世帯等への入居拒否

単身の高齢者世帯は「孤独死による事故物件化」「残置物の処理問題」といったリスクから、賃貸住宅への入居が避けられる傾向にあります。非婚化が進む中で、こういった世帯はますます増加するでしょう。

また若者の低収入化も進んでおり、「子どもを育てる自信が無い」という理由から少子化にも繋がっています。ひとり親世帯は特に低収入の傾向が見られ、住宅費が大きな負担となっています。

さらに生活保護世帯等は、「家賃滞納への不安」から入居拒否されるケースが報告されています。一度入居したら無理やり追い出すことは人道上難しいため、入居時の審査が厳しくなってしまうのが実情です。

一方で、住宅ストック市場にも課題は多いです。

  • 公営住宅の不足
  • 空き家の増加

公営住宅は家賃が安く、セーフティーネットの役割を持っています。しかし数が圧倒的に不足しており、入居の順番待ちをしている方も多いです。民間の空き家・空き室は増加傾向にあるものの、有効に活用されているとは言えないでしょう。

現状の対策事例①|住宅セーフティネット制度とは

ここでは、住宅確保要配慮者への対策の具体事例をご紹介します。日本では2017年から「住宅セーフティネット法」が施行されており、住宅の確保を支援しています。住宅セーフティネット法は、下記3つの柱から構成されています。

①住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度

住宅確保要配慮者とされる方は、様々な理由から賃貸住宅に入居できないケースが見られます。そういった事態を防ぐため、「セーフティネット登録住宅」を登録する制度が実施されています。2023年現在、セーフティネット登録住宅の数は「848,846戸」です。

セーフティネット登録住宅では基本的に入居を拒まれないため、安心して申込できます。ただし登録の際には、入居を拒まない住宅確保要配慮者の「範囲を限定することが可能」です。例えば「障害者の入居は拒まない」、「高齢者、低額所得者、被災者の入居は拒まない」等の区切りを設けて登録できます。なお集合住宅については、住戸単位での登録が可能です。

②登録住宅の改修や入居者への経済的な支援

登録住宅の改修への支援と、入居者の負担を軽減するための支援です。具体的には、共同居住用住居に用途変更するための改修・間取り変更やバリアフリー改修の費用に対して、「50万円/戸」が補助されます。

また低所得者向けの経済的支援として、家賃補助も実施されています。対象は「月収15.8万円(収入分位25%)以下の世帯」であり、「原則2万円/戸・月、国費総額240万円/戸」と定められています。

セーフティネット登録住宅に低額所得者が入居する場合に、地方公共団体と国が協力して補助を行います。

③住宅確保要配慮者に対する居住支援

実際に住宅確保要配慮者の生活をサポートする取り組みとして、「居住支援活動」も行われています。具体的には「賃貸住宅への入居に係る情報提供・相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者への家賃債務保証等の業務」を行っています。

生活保護受給者については、代理納付に関する新たな手続きが設けられています。さらに家賃債務保証業者や居住支援法人が、住宅確保要配慮者に対して家賃債務を保証する場合に、住宅金融支援機構がその保証を保険する仕組みも創設されています。

現状の対策②|東京都住宅確保要配慮者賃貸住宅供給促進計画とは

東京都では、独自に「東京都住宅確保要配慮者賃貸住宅供給促進計画」を定めています。これは、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給を促進するための取り組みです。

国土交通省の定義に加えて、「海外からの引揚者、新婚世帯、原子爆弾被爆者、戦傷病者、児童養護施設退所者、LGBT等、UIJターンによる転入者、住宅確保要配慮者に対して生活支援を行う者」にも範囲を広げているのが特徴です。

また東京独自の住宅事情を鑑み、既存住宅を活用する場合は国の面積基準を緩和しています。具体的には、着工年度別に各戸の床面積の基準(25㎡以上)を緩和しており、「平成18年度以降に着工:20㎡以上」といった基準が定められています。

まとめ|すべての人に安心できる住まいを

日本は少子高齢社会に突入しており、今後は「家が余る」と言われています。しかし実態としては適切な住宅が確保できない住宅確保要配慮者の数は増えており、サポートが必要です。すべての人々が安心して暮らせるよう、仕組みづくりが急がれます。