スマートグリッドをわかりやすく理解|「家庭用蓄電池」の時代が来る?
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トレンドワード:スマートグリッド
「スマートグリッド」についてピックアップします。電力不足や再生可能エネルギーへの移行といった課題を解決するため、ニーズが高まっています。本記事ではスマートグリッドの定義や主な事例、建設業との関わりについてご紹介していきます。
スマートグリッドとは|定義を簡単に解説
経済産業省では、スマートグリッドとは「変化する電力の需要と供給をITによってコントロールし、無駄なく安定的に電力を活用する送電網」と定義されています。
従来の電気メーターとは違う「スマートメーター」を各戸に設置することで、「発電所と電力使用者の双方」のやり取りが可能になります。これにより「電力不足時に蓄電池に切り替える」といった細かな対応ができるのです。
スマートグリッドの事例
①東京電力|スマートメーター
https://www.tepco.co.jp/pg/technology/smartmeterpj.html
東京電力では、2020年度までに全ての世帯・事業所に約2,840万台のスマートメーターを設置しました。同時に「30分ごとの電力使用量(積算値)を30分ごとに送信・処理する」プロジェクトに取り組みました。現在は、スマートメーターシステムの安定運用等に取り組んでいます。
スマートメーターには、「電力メーター情報発信サービス(Bルートサービス)」機能が備えられており、HEMS機器にスマートメーターの計量値を「リアルタイム送信」できます。スマートメーターから受信した情報により電気ご使用量の見える化を行えば、「電気のご使用量が多い時間帯において、HEMS機器により家電機器等を制御する」など、より効果的な省エネ効果が期待できます。
②トヨタ|トヨタスマートグリッドプロジェクト
トヨタは「未来のモビリティ社会」の実現のため、次世代環境車の開発を進めています。EV(電気自動車)へのシフトが進められる中、適切な電力需要に対応するための「スマートグリッド」への取り組みも強化しています。
具体的には、「トヨタスマートセンター」を中核に、トヨタホーム開発の「スマートハウス」で家庭での電力需給を管理し、各家庭の電力使用状況を情報センターで把握、さらに地域全体でCO2削減と費用負担の最小化を実現していくというものです。
③テスラ|蓄電池・Powerwall(パワーウォール)
https://www.tesla.com/ja_jp/powerwall
電気自動車メーカーとして有名なテスラ社は、家庭用蓄電池「パワーウォール」も手掛けています。日中に太陽光発電した電気を蓄電することにより、夜間に自宅で使えます。これにより、電力会社への依存を軽減できます。
スマートグリッドでは電力の流れを供給側・需要側の両方から制御します。そのため家庭やビルでの「蓄電」も重要なのです。EV車で覇権を握った後、テスラは家庭用蓄電池を広く普及させるのではないかと見られています。
スマートグリッドのメリット
スマートグリッドのメリットとしては、下記が挙げられます。
- 電力供給効率が上がる
- 電力が安定共有できる
- 再生可能エネルギーの課題を解決できる
- 電気の見える化ができる
スマートグリッドでは電力需要を正確に予測して必要な量の電力を供給できるため、電力供給効率が向上します。また送電網のロスを最小限に抑えられるため、無駄なエネルギー消費が減少します。
さらにスマートグリッドは発電所への一極集中を避けられるため、災害時にもリスクが軽減されるでしょう。また太陽光発電など再生可能エネルギーの「天候に左右されやすい」というデメリットも、スマートグリッドで蓄電することにより解決できます。
スマートメーターが各戸に設置されることで、電力ピーク時が自動で見える化できます。これにより発電計画が効率化できるのもメリットです。
スマートグリッドの背景|なぜ必要?
ここでは、スマートグリッドが注目されるようになった背景を見ていきましょう。
①エネルギー不足問題
スマートグリッドは、もともとアメリカで生まれた考え方です。アメリカでは大停電が起こりやすく、電力不足が課題でした。そのため2003年頃、グリーン・ニューディール政策の一環としてスマートグリッドが打ち出されたという背景があります。
日本でも電気代高騰問題や太陽光発電などの再生可能エネルギー促進という面から、スマートグリッドの必要性が高まっています。
「電気代高騰」について詳しくは、下記記事をご覧ください。
②発電所の「変革」が必要
日本では現在、大規模発電所からの電力を一方向送電する「集中型」が主流です。しかし距離の遠い場所への送電ではロスが多く、また災害時にはダメージが広範囲に渡るというデメリットがあります。
しかしスマートグリッドにより「分散型」にすれば、電力を近所でやり取りするといった「地産地消」が可能になります。これによりエネルギーの安定的供給や、再生可能エネルギーの促進といったメリットが生まれるのです。
これから電気自動車(EV)が普及すれば、「家庭にバッテリーを置く」という形態が一般的になるでしょう。「電気は貯めて使う」という方法にシフトすることで、大幅なエネルギー効率化が期待できます。
スマートグリッドの課題・デメリット
スマートグリッドには、デメリットもあります。具体的な例は以下の通りです。
- 費用やコストが掛かる
- サイバー攻撃のリスク
- プライバシー保護の問題
スマートグリッドの導入には、スマートメーターや通信インフラといった設備投資が必要です。そのため初期費用が高額になり、費用回収のために利用者への負担が増える可能性があります。
また各家庭での電力使用状況が把握できてしまうため、サイバー攻撃によるプライバシー侵害のリスクもあるでしょう。
スマートグリッドと建設業の関わり
ここでは、スマートグリッドと建設業の主な関わりについてまとめます。
①HEMS・BEMS・MEMS・FEMS
まずHEMSとは「家庭で使用するエネルギーを管理するシステム」のことを指します。「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略語で、スマートメーターや家電製品と接続して電気使用量を「見える化」します。
同様にBEMSは「ビル」、MEMSは「マンション」、FEMSは「工場」が対象となります。使用電力量が基準を超えると「自動で節電モードに切り替える」機能等が使えるため、省エネに貢献できます。
②スマートシティ
スマートシティとは、ICTデータを活用して地域内での安全管理やサービス向上を実現している都市のことを指します。具体的には、ICTを活用した健康管理、災害のリアルタイム情報、キャッシュレスなデジタル決済などが挙げられます。都市内でのデータ利活用で、「市民の幸福度」を向上させることが主な目的です。
スマートシティではスマートグリッドが活用され、高度なエネルギーマネジメントが実現します。電気自動車(EV)や家庭用蓄電池といった「分散型電源」が活用されているのも特徴です。
スマートシティについて詳しくは、下記記事をご覧ください。
2023スマートグリッドEXPOが盛況
https://www.wsew.jp/hub/ja-jp/about/sg.html
スマートグリッドに関するイベントとしては、「スマートグリッドEXPO」があります。
VPP(仮想発電所)やDR(デマンドレスポンス)関連技術、エネルギーマネジメントシステム、蓄電池、EV活用などが出展し、世界各国から多くの専門家が来場します。開催日程は、下記の通りです。
- 春展:2023年3月15日(水)~17日(金) @東京ビッグサイト
- 秋展:2023年9月13日(水)~15日(金) @幕張メッセ
- 関西展:2023年11月15日(水)~17日(金) @インテックス大阪
世界中から人と情報が『リアル』に集まる本展は、face to faceで電力ビジネスを加速させる重要なプラットフォームに位置付けられています。詳しくは公式サイトをご覧ください。
まとめ|スマートグリッドで省エネ促進
電気代高騰や再生可能エネルギーの需要増を受け、スマートグリッドの重要性が高まっています。分散型の発電への切り替えが進めば、電力不足等の問題も解決するかもしれません。コスト面や家庭用蓄電池の普及など課題も多いですが、今後の広まりが期待されます。