【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第5回)AIがやってくる

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Category:建築DX

著者:髙木 秀太

髙木秀太事務所 代表 髙木秀太です。「建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術」も連載最終回です。最終回のテーマはいま、最もホットなトピック「AI」と設定してみました。AIは建築設計の実務をどう支援してくれるのでしょうか。

過去の連載記事はこちら

第一回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第1回)「髙木秀太事務所白書」で自己紹介

第二回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第2回)ヒトのためのデジタル

第三回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第3回)モノのためのデジタル

第四回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第4回)ヒトにやさしく

ついにAIがセカイを変える・・・のか?

正直に言います。私も困惑しています。まさか、この半年から1年ほどの間でAIがここまでの進歩を遂げるとは予想だにしていませんでした。読者の中には私よりもトレンドを良く追えている方も多いのではないでしょうか。特に、画像生成システム「Stable Diffusion」「Midjourney」、対話型チャットbotシステムの「ChatGPT」などの評価は日に日に高まる一方で、業界は騒然としています。

建築設計の業界でも、その有用性が活発に議論されています。上述のサービスを用いた建築パースの自動生成や、コンセプト文の自動生成などは、もはや「実務の実用に足る」という主張も出てきています。

私たちの仕事はAIに奪われるか?

AIの目覚ましい進歩と同時に、いま活発に交わされる議論があります。「ヒトの仕事(建築設計業務)の大半がAIに奪われていくのではないか」という議論です。冷静に考えれば、有史以来、ヒトの仕事を奪うのは新しい道具や技術そのものではなく、それらを駆使したヒトでした。

つまり、結局、ヒトの仕事を奪えたのはヒトだけという歴史です。

今回のAI事変はこの歴史を変える可能性がありますが、一方で、「所詮、前例に漏れない」という可能性も十分あります。残念ながら、ここでの結論は「わからない。可能性はある。」というところに留まります。

私たちの仕事はAIを駆使したヒトに奪われる

しかし、ほぼ間違いないと主張できることもあります。それは「ヒトの仕事はAIを駆使したヒトに奪われる」という点です。というか、すでに沢山の仕事が奪われているはずです。これは全く嘆かわしいことではなく、先の文章にもある通り、これまでの人類が繰り返してきた「進歩」に他ならず、まさに「前例に漏れない」人類の前向きな「進化」であると私は捉えます。

今日も新しい仕事が生まれる

そして、誰かの仕事が奪われる一方で、いまこの瞬間にも新しい仕事が生まれ、それが誰かのものになっていきます。

実際すでに、AI技術を用いて「狙ったパース画像やコンセプト文章をもっと効率的に出力する」ようにチューニングを施そうとするヒト、AI技術を「既存の設計工程にどう埋め込めるのか」を検討しているヒトなどが出現しています。

半年前には「存在しなかったヒト」です。それらが「新しい仕事」に昇華されるタイミングはもうすぐそこです。AIに対して・・・と言うよりは、この「普遍的な営み」に対して、髙木秀太事務所はポジティブな思考と冷静な姿勢で接していこうと考えます。

AIを用いた髙木秀太事務所のチャレンジ

髙木秀太事務所でも、すでに(広義の)AI技術を用いた様々な建築設計支援を試みてきました。ここでは2点を「髙木秀太事務所白書」よりご紹介します。

「現地のらしさ」を学習させる

沖電気 OKI 本庄工場H1 棟 ファサードデザイン(設計:大成建設株式会社一級建築士事務所)を紹介します(図1)。

図1

画像データの深層学習技術を用いて、計画敷地の「現地らしさ」をAIに学習させる試みです。設計者が撮影してきた大量の現地写真を入力することによって、あたらしく計画する建物のファサードデザインが「現地らしさ」にマッチするかどうか、判定を行う試みです。

「AIがデザインを決定する」というというよりは、「AIにデザインを決定するためのアシストをしてもらう」というようなコンセプトで使用しました(図2)。

図2

トイレ空間の設計を支援する

LIXIL A-SPEC(クライアント/ディレクター:株式会社LIXIL、共同開発:株式会社AMDlab)を紹介します(図3)。

図3

パブリックトイレの自動設計補助サービスです。昨今流行りのAIモデルとは少々異なる仕組みなのですが、自動設計エンジンが搭載されたweb サービスとしてβ版が2020 年にリリースされました。求められた条件を入力すると、その場でエンジンが試行錯誤し、レイアウト案を複数案提示してくれます。下記のURLにアクセスしていただければ、だれでも、いつでも、どこでも、サービスが体験できます(図4)。

▶LIXIL「A-SPEC」サイト:https://a-spec.lixil.com/

図4

やっぱり、AIもヒトのために

「なんでも出来てしまう」ように思えてしまうAIですが、まだまだ出来ること・出来ないことの精査はこれからです。どのような技術だったとしても、ヒトが「楽しい」「面白い」と感じている要素をわざわざAIに置き換える必要はありませんし、また、万人が同じような使い方をする必要もありません。

どちらにせよ、主役はヒト。それさえ忘れなければ、これまでと同様に、健全な建築設計へ向かっていけると、私は思います。

全5回の連載を終えて

以上で全5回の連載「建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術」は終了です。髙木秀太事務所が「大切にしている考え方」のようなものは、読者のみなさんに共感いただけたでしょうか。1ヶ月間、ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!

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