
省エネ大賞受賞 太陽光・蓄電池を初期費用ゼロ ZEH普及推進 高砂建設「彩樹の家LCCM×レジリエンス」 シリーズ
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「LCCM住宅」についてピックアップします。地球温暖化対策の必要性が高まる中、建築から解体・再利用等までのライフサイクル全体を通じて「CO2排出量をマイナスにする」という考え方が注目されています。本記事ではLCCM住宅とZEHの違いや、ハウスメーカーの事例についてご紹介します。
LCCM住宅とは、建設・運用・廃棄時のすべての過程を通じて「CO2の収支をマイナス」にする住宅のことを指します。言葉の由来は「ライフサイクル・カーボンマイナス」の頭文字です。
近年SDGsへの注目度が高まる中で、太陽光発電や家庭用蓄電池といった設備を活用して環境負荷の低減を図る狙いがあります。
国土交通省では、LCCM住宅のデモンストレーション棟を発表しています。
太陽熱利用給湯器や太陽光パネルを搭載し、再生可能エネルギーを存分に活用できます。また通風や採光にも配慮されており、夏と冬の両方で過ごしやすい設計です。
LCCM住宅の認定には下記2つのルートがあり、どちらかの基準に適合する必要があります。
LCCM適合判定ツールを使用して計算された内容(結果)を基に認定します。
詳しくは、一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターのサイトにてご確認ください。
LCCM住宅のメリットは、下記が挙げられます。
LCCM住宅の最大のメリットは「CO2のトータル排出量がマイナスになる」という点です。太陽光発電などのシステムにより、住宅の長い生涯を通してCO2排出を相殺できます。
また断熱性能も高いため、寒い冬でも暖房使用量を抑えられるのがメリットです。「浴室がヒヤッとする」といった住宅内部での温度差が軽減できるので、ヒートショック等による事故も減らせるでしょう。
一方でLCCM住宅には、下記のデメリットがあります。
LCCM住宅には、太陽光発電装置や断熱窓といった設備が必要です。そのため建設時の費用が高めになります。太陽光パネルを載せる屋根の面積が必要になることから、間取りデザインの制限もかかってくるでしょう。
またLCCM住宅基準を満たす必要がありますが、まだまだ基準に対応しているハウスメーカーは限られています。
LCCM住宅と似た言葉に「ZEH(ゼッチ)」があります。ZEHとは「再生可能エネルギーの導入で、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す住宅」のことを指します。
ZEHの対象は「運用時のみ」なのに対して、LCCM住宅は「建設時から廃棄時まで含めたライフサイクル全体」という点が主な違いです。断熱性能向上や省エネという点ではどちらも同じですが、住宅の生涯にかかるCO2まで考慮されているLCCM住宅の方が高レベルと言えるでしょう。
ここでは、主要ハウスメーカーで開発されているLCCM住宅の事例をご紹介していきます。
セキスイハイムのスマートハウス「グリーンモデル」は、暮らしで使う電気の約7割を自給でき、住んでいるだけでCO2削減に貢献できます。
約10kWの太陽光発電パネルに約12kWhの蓄電システムと、大容量を搭載しているのが特徴です。これによりほぼ太陽光発電の電力だけで「自給自足」の生活ができ、LCCM住宅にも対応しています。
ミサワホームは2010年に業界に先駆けてLCCM住宅「エコフラッグシップモデル」を発表するなど、SDGsへの取り組みを積極的に行ってきました。
2022年に新発売した「CENTURY 蔵のある家 ZEH ADVANCE」は、ミサワホームの最上位ブランドとしてラインアップされました。「スマートECOフォルム」により、32坪程度の広さでも大容量の太陽光パネル搭載が可能です。
ミサワホームの特徴である「蔵」を生かし、日常で利用するものを適所に収納しながら災害にも備えられる設計となっています。
住友林業では、2022年に環境フラッグシップモデル「LCCM住宅」を発売しました。優れた断熱性能や高性能な設備機器、大容量太陽光発電システムなどを駆使し、木の家の利点を生かして住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにします。
木造であるメリットを生かし、長期間炭素固定を図ります。オリジナルの「BF(ビッグフレーム)工法」は、木質梁勝ちラーメン構造として優れた耐震性や耐久性を発揮するのが特徴です。また使用した木材分を再植林して森林を若返らせ、C02吸収量を増やす取り組みも行われています。
パナソニックホームズの「カサートX 平屋LCCMモデル」は、LCCMに対応した平屋住宅です。省エネ性に優れた全館空調システムや高い断熱性能、大容量の太陽光発電システムを搭載しています。
住宅設備機器のコントロールには、パナソニックのAiSEG2を標準搭載しています。ホームナビゲーションモニタやスマホから、照明や空調、電気錠、太陽光発電、給湯器などの操作が可能です。
パナソニックホームズは大手電機メーカーの系列という強みがあり、スマートホームへの取り組みが進んでいます。建材から設備まで「サッシ以外は何でも揃う」と言われており、ほぼすべての商品を自社で調達できて連携もスムーズです。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、経済産業省・国土交通省・環境省の3つが連携して住宅の省エネ・省CO2化を進めています。
その中でLCCM住宅の補助金に関しては、国土交通省が「LCCM住宅整備推進事業」を行っています。補助金制度の主な内容は、下記の通りです。
LCCM住宅(戸建て)(※ZEHより省CO2化を進めた先導的な住宅)
上限140万円/戸 かつ、掛かり増し費用1/2以内
他の補助金制度との併用可否はケースバイケースのため、必ず事業者に確認するようにしましょう。
2022年10月からは住宅性能表示基準が改正される予定で、「断熱性能6、7」が新設されるなど住宅品質の大幅な向上が期待されています。
住宅建設時にはどうしてもCO2が排出されてしまいますが、長寿命化を図り「ライフサイクル全体を通してマイナスにする」という考え方は重要です。LCCM住宅の普及で、「暮らすほど環境に優しい住まい」の広がりが求められます。
二級建築士/インテリアコーディネーター(IC)/福祉住環境コーディネーター。 建築学科卒業後、インテリアメーカーにてICの業務を経験。 現在は建築・住宅系ライターとしてコラムを担当。ハウスメーカー、リフォーム、住宅設備会社での執筆多数。