建機の遠隔操作装置『Model V』、建機シミュレータ『OCS』のデモを CSPI EXPOで公開
建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAV株式会社(本社:東京都文京区本郷)は、5月25日から5月27日まで幕張メッセで開催されたCSPI EXPO 2022 建設・測量生産性向上展にて、建機の遠隔操作装置『Model V』および建機シミュレータ『OCS』のデモ展示を行いました。
ARAV屋内展示ブース。建機の遠隔操作装置『Model V』および、建機シミュレータ『OCS』を展示。
ARAV 屋外展示ブース。小型建機に自動化センサセットを搭載したデモを公開。
建機遠隔操作の可能性
建機の遠隔操作には大きく2つの可能性があります。
- 建機を無人で運用できるため落石や横転による突発的な人災事故を防ぎ、熱中症や被爆といった長時間の運用が危険な現場でも安全な施行が可能
- 稼働時間帯の異なる複数台の建機を1人で操作したり、過疎地にある建機に乗り込む必要がないため移動時間の削減に繋がり、効率的な複数台運用が可能
危険な現場が多いとされる建設業界では、年間15,000名以上の方が病気や怪我などにより4日以上の休業が発生しており、その中の250名以上の方が亡くなられ、国内の労働者の死亡事故の3割以上は建設業界となっております。安全に施行できるという利点は、毎年各地で発生している土砂災害の復旧工事における二次災害、解体工事やトンネルの発破作業での割れた石が運転席に飛来する危険、炎天下での長時間作業における熱中症リスク、建機を使った廃炉作業での被爆リスクなど、危険な作業を安全な作業に切り替えることが可能です。
建設業界では人手不足も加速しており、2021年度の有効求人倍率は5倍強と、他産業と比較し減少に歯止めをかけられない状況が続いています。2028年の建設業における人手不足は11万人不足の試算となっています。建設現場の作業において1日の稼働時間帯が異なる建機であれば、1人で複数台の建機を操作でき、現場の生産性向上に貢献可能です。
ARAV遠隔操作装置のデモ。幕張メッセから千葉県柏市の現場の建機を操作した。
なぜARAVの建機遠隔操作が注目されているのか
このように多くのメリットがある建機の遠隔操作は、大手建機メーカーでも研究開発が取り組まれてきました。しかしながらK社が提供するソリューションはK社製のみに対応、また同様にH社が提供するソリューションはH社製のみと限定される問題がありました。ARAVが開発した『ModelV』では、建機のメーカーに縛られずにどんな建機にも後付けで取り付け可能なため、多種多様な建機が入れ混ざる建設現場においても、建機遠隔操作装置の導入の障害になることはありません。
ARAVではこれまで20社以上と共同実証実験を進めてきており、マイナーチェンジを繰り返しながら地道なアップデートを行ってきました。当分野で特許を3件出願しています。
後付けで搭載することができる遠隔操作機器はARAV以外でも複数存在します。ARAVの遠隔操作装置の特徴は小型軽量であることです。遠隔操作装置を搭載した状態でも運転席内のスペースを広く確保することができ、そのままオペレータが乗り込むことができます。遠隔操作装置の電源をOFFにしておけば、何も分解することなくそのまま有人操作することができます。実際の現場ではトレーラーでの建機の輸送時や普段のメンテナンス時など、有人で操作したい場面が発生します。ジョイスティックのグリップ部も交換を行っていない無いため、普段通りの感覚で有人操作が可能です。
ARAV遠隔操作装置を搭載した建設機械キャビン。小型軽量のためそのまま有人操作も可能。
ARAVの遠隔操作装置は、建機周囲を安全に確認することが可能なサラウンドビューシステムを内蔵しています。建設機械は乗用車とは異なり視界が非常に悪く、周辺環境の視野確保が困難故に起因する事故が多発しております。例として構造物が入り込む狭い現場であれば現場作業員との接触や建物との接触事故の発生、また郊外の現場であっても足場の悪い山道や高所からの転落事故の発生などがあります。ARAVのサラウンドビューシステムはこのような事故リスクを低減することに大きく貢献します。カメラ合成の継ぎ目が無く色味に違和感の無い映像は好評頂いております。特にキャリアダンプとの相性が良く、顧客からは有人操作では困難なバック走行が遠隔操作だと可能になる、狭い道での切り替えしの必要が無く操作がしやすいというお声を頂いています。
サラウンドビューシステムを内蔵。事故発生リスクを大きく低減。
ARAVの遠隔操作装置は建設現場の未来の働き方を見据えたオプションも搭載しています。建設現場と全ての拠点を接続し、世界中どこからでも操作を可能とする。このミッションを達成するためにはあらゆる機器からアクセス可能なマルチデバイス対応は欠かせません。ARAVの遠隔操作装置は運転席を模擬した操作席のみにとどまらず、スマートフォン、タブレット、ノートPC等、多くの機器に対応しております。専用のURLとパスワードを共有するだけで、ブラウザを開くことができれば世界中どこからでも操作を可能とします。このようなマルチデバイス対応は実際の利用実績はまだ多くはありませんが、遠隔操作装置を導入頂いたお客様からは、新卒また中途採用の候補者から未来の働き方を経営層が考えていると採用力向上に繋がった、役所や発注者からのイメージアップに繋がったなど、副次的な効果も少なくありません。ARAVでは建設現場に喫緊に迫った課題解決だけでなく、建設現場の未来を見据えた研究開発を推進しています。
スマートフォン、タブレット、ノートPC等、多くの機器に対応。
建機シミュレータOCSをFRJと共同開発
ARAVの技術力は建設機械の遠隔操作にとどまりません。CSPI EXPO ではロボット技術者コミュニティのFRJ(Field Robotics Japan) と共同開発した建機シミュレータ『OCS : Open Construction Simulator』も展示しました。
建設機械の操作に習熟するためには長時間の訓練を行う必要があります。しかしながら現在の建設業界では必要なときだけ建機をレンタルする運用が多く、建設現場が稼働しない期間に操作練習ができるとは限りません。建設施工会社に就職した新入社員全員に長時間操作する機会を確保することは困難です。そこではARAVでは建機訓練シミュレータの開発、試験提供を開始しています。建機訓練シミュレータOCSで繰り返し操作練習することで初級オペレータが早期に現場で活躍されることが期待されます。
Open Construction Simulator 訓練用エディション。
また当シミュレータは建設施工会社向けのオペレーターの訓練だけでなく、自動運転研究機関向けの検証シミュレータとしても利用可能です。建設機械の遠隔操作および自動運転を開発するには、多くの実証実験を行う必要があります。しかしながら、自動運転や遠隔操作アルゴリズムをいきなり実機に搭載して検証するのは危険が伴います。実機に近い形で事前に繰り返し検証することで実験中の事故リスクの低減、また研究技術者が勤務してオフィスから実験現場への移動時間を削減、結果としてイテレーション回数が増えるため短期でのアルゴリズム性能向上が期待できます。仮想環境に配置した LiDAR 、IMU、GNSS、RGB Camera といったセンサデータをROSへリアルタイムに取り込むことができるインターフェイスを内蔵しているため、ROSベースで開発されている研究機関であればすぐに連携することが可能です。
Open Construction Simulator 開発画面イメージ。
共同実証実験パートナー募集のお知らせ
CSPI EXPO で展示したARAVのソリューションはほんの一部に過ぎません。導入事例や今後の開発ロードマップなど、詳細な説明をご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせをお願いします。ARAVの株式会社は建設現場のDX・遠隔・自動化の共同実証実験パートナーを募集しています。
【お問い合わせ】
本件に関するお問い合わせはARAV株式会社公式WEBサイトまでお願い致します。
https://arav.jp/
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