酸欠とは?何パーセントから危険?|建設現場での症状・原因・対策を解説

マンホールやピット、タンクなどで行う作業には、酸欠(酸素欠乏)の危険があります。酸素濃度の低下は目やにおいでは判別できず、気づいたときには自力で避難できない状態になっていることもあります。
さらに、倒れた作業員を助けようとした人まで被災する「二次災害」が起こりやすい点にも注意が必要です。
そこでこの記事では、建設現場で働く人に向けて、酸欠の症状や原因、危険な場所、事故を防止するための対策を解説します。
酸欠(酸素欠乏)とは?何パーセントから危険?
酸欠とは、空気中の酸素が不足している状態のことです。通常の空気には約21%の酸素が含まれていますが、法令上は、酸素濃度が18%未満の状態を「酸素欠乏」と言います。
以下のように、酸素濃度が低下するほど症状が重くなり、著しく低い場合は、一呼吸で意識を失うこともあります。
| 酸素濃度 | 主な症状・状態の目安 |
| 21% | 通常の空気の状態 |
| 18% | 安全限界。継続的な換気が必要 |
| 16% | 頭痛、吐き気 |
| 12% | めまい、筋力低下 |
| 8% | 失神・昏倒し、7~8分以内に死亡する危険 |
| 6% | 瞬時に昏倒し、呼吸停止・死亡に至る危険 |
出典:厚生労働省「酸素欠乏症・硫化水素中毒防止 チェックリスト」
※症状の現れ方には個人差があります。酸素濃度18%未満は、酸素欠乏症等防止規則における「酸素欠乏」に該当します。
酸欠は必ずしも徐々に息苦しくなるとは限りません。作業員の感覚に頼らず、測定器で酸素濃度を確認することが重要です。頭痛や吐き気、めまいなどの異常があった場合は、直ちに作業を中止して安全な場所へ退避してください。
また、汚水槽や下水道では硫化水素中毒、換気が不十分な場所で発電機などを使用した場合は一酸化炭素中毒が同時に発生する可能性があります。
建設現場で酸欠が起こりやすい場所
酸欠は、酸素が消費されたり、空気がほかの気体に置き換わったりすることで発生します。以下に、労働安全衛生法施行令別表第六で定められている、注意が必要な場所の例をまとめました。
- マンホール、暗きょ、ピット
- 長期間使用されていない井戸や立坑
- 雨水、湧水、汚水が滞留した槽や地下設備
- タンク、ボイラー、反応塔などの内部
- 地下室、倉庫などの通風が不十分な場所
- ケーブルやガス管を収容する地下設備
- 汚泥や腐敗しやすい物質がある槽、管、溝
- 窒素、アルゴン、炭酸ガスなどを使用した設備
- ドライアイスを使用する冷蔵庫やコンテナ
たとえば、マンホール内に水が長期間滞留すると、微生物の活動によって酸素が消費されます。鋼製タンクでは、内壁のさびによって酸素濃度が低下することがあります。また、窒素や炭酸ガスなどが漏れると、空気がそれらの気体に置き換わり、酸素濃度が低下します。開口部がある場所でも安全とは限りません。
マンホール内で発生した酸欠事故の事例
厚生労働省によると、造成工事中にマンホールへ入った作業員が酸素欠乏症で倒れ、呼吸停止となる事故が発生しています。
現場では、マンホールのふたを約10分間開けただけで、酸素濃度の測定や強制換気を行っていませんでした。事故後に測定すると、深さ2m以下の酸素濃度はほぼ0%でした。
この事例からも、ふたを開けるだけでは十分な換気にならないことがわかります。マンホールなどに入る前には、必ず酸素濃度を測定し、換気や保護具の準備を行うことが重要です。
出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト|造成作業における酸素欠乏症」
建設現場で必要な酸欠対策4選
前項で紹介した災害事例のように、換気や濃度測定を行わずに危険場所へ立ち入ると、重大な酸欠事故につながる可能性があります。ここでは、建設現場で実施すべき4つの酸欠対策を解説します。
作業前に酸素濃度を測定する
酸素欠乏危険作業を行う場合は、その日の作業開始前に酸素濃度を測定します。
また、休憩などで全員が作業場所を離れた後に作業を再開するときや、作業員の身体、換気装置などに異常があったときも再測定が必要です。
なお、測定は安全な外部から行うことが原則です。開口部から安易に頭や上半身を入れてはいけません。測定日時、場所、方法、結果、測定者、実施した措置などは記録し、3年間保存してください。
換気して酸素濃度を18%以上に保つ
作業場所は十分に換気し、酸素濃度を18%以上に保ちましょう。硫化水素が発生するおそれのある第二種酸素欠乏危険作業では、酸素濃度18%以上に加え、硫化水素濃度を10ppm以下に保ちます。
換気するときの主な注意点は次のとおりです。
- 作業中も換気装置を停止しない
- 作業場所全体に空気が行き渡るようにする
- 送気口付近に発電機や車両を置かない
- 換気後も濃度を測定する
- 換気に純酸素を使用しない
なお、換気に純酸素を使用してはいけません。酸素濃度が過度に高くなると、火災や爆発の危険性が高まるためです。測定と換気に関する義務は、酸素欠乏症等防止規則に定められています。
必要な呼吸用保護具を使用する
換気できない場合や、作業の性質上、十分な換気が難しい場合は、空気呼吸器、酸素呼吸器、送気マスクなどを使用します。
注意点として、一般的な防じんマスクや防毒マスクは、周囲の空気をろ過するもので、酸素を供給できません。酸素欠乏環境では使用できないため、給気式の呼吸用保護具が必要です。
監視・連絡・退避体制を整える
作業状況を監視できる体制を整え、作業員の人数、連絡方法、異常時の退避手順、救助方法を確認しましょう。
換気装置の停止、測定値の異常、ガスの流入、作業員の体調不良などが発生した場合は、直ちに全員を退避させます。安全を確認するまで、関係者以外を立ち入らせてはいけません。
酸欠作業に必要な資格・教育
酸素欠乏危険作業を行う場合、事業者は所定の技能講習を修了した人から、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければなりません。作業主任者の主な役割は、次のとおりです。
- 安全な作業方法の決定と作業員への指揮
- 作業開始前などの酸素濃度測定
- 測定器や換気装置、呼吸用保護具の点検
- 呼吸用保護具の使用状況の監視
一方、実際に酸素欠乏危険作業へ従事する作業員には、特別教育の受講が必要です。技能講習と特別教育は、対象者と目的が異なります。
| 区分 | 必要な講習・教育 | 主な役割 |
| 作業主任者 | 技能講習の修了 | 現場の安全管理や作業指揮を担う |
| 作業員 | 特別教育の受講 | 作業主任者の指示に従って作業する |
たとえば、第一種酸素欠乏危険作業では、「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」または「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」の修了者から作業主任者を選任します。硫化水素中毒のおそれがある第二種酸素欠乏危険作業では、後者の講習を修了した人から選任しなければなりません。
技能講習と特別教育の違い、資格の取得方法、講習期間・費用などは、以下で解説しています。
【重要】酸欠で倒れた人を防護具なしで助けに行かない
酸欠事故では、倒れた作業員を救助しようとして危険場所へ入り、救助者も倒れる二次災害が繰り返し発生しています。
事故が起きたときは、自分だけで救助に入らず、周囲へ異常を知らせて119番通報してください。内部での救助は、空気呼吸器などを装着した訓練済みの要員が行わなければなりません。
また、「息を止めれば入れる」「短時間なら大丈夫」という判断は非常に危険です。厚生労働省の建設業向け安全衛生教材でも、防護具を使用せずに救助へ向かわないよう注意を促しています。
酸欠についてよくある質問
酸欠は何パーセントからですか?
法令上、空気中の酸素濃度が18%未満になると酸素欠乏に該当します。通常の空気に含まれる酸素は約21%です。
防毒マスクがあれば酸欠場所に入れますか?
防毒マスクや防じんマスクは酸素を供給できないため、酸素欠乏環境では使用できません。空気呼吸器や送気マスクなど、給気式の呼吸用保護具が必要です。
酸欠で人が倒れたらどうすればよいですか?
防護具なしで救助に入らず、周囲へ異常を知らせて119番通報します。内部での救助は、空気呼吸器などを装着した訓練済みの要員が行います。
まとめ|酸欠事故を防ぐには測定・換気・教育の徹底を
酸欠とは、空気中の酸素濃度が18%未満になった状態です。マンホール、ピット、タンク、地下設備などでは、見た目やにおいに異常がなくても酸素濃度が低下している可能性があります。
酸欠事故を防ぐためには、危険場所を事前に把握し、作業前の濃度測定、継続的な換気、適切な呼吸用保護具の使用を徹底することが重要です。また、作業主任者の選任と作業員への特別教育、監視・連絡・退避体制の整備も欠かせません。万一、人が倒れても、防護具なしで救助に入らないことが二次災害の防止につながります。
※実際の作業では、最新の法令、現場の作業計画および作業主任者の指示に従ってください。