竹中工務店が病院向け低温給湯システム「ぬく水®」を開発、病院の給湯エネルギーを40%削減

竹中工務店(社長:丁野成人)は、病院における給湯エネルギーの削減を目的とした低温給湯システム「ぬく水®」を開発しました。今年2月に竣工した小田原市立総合医療センター(神奈川県小田原市)にこのシステムを導入しています。手洗いに適した25~30℃程度の温水を専用の配管で供給する仕組みで、給湯にかかるエネルギーを削減する技術です。
病院は施設の性質上、院内各所に手洗い場が数多く配置されており、こうした場所への給湯のあり方を見直すことが、省エネ化を進めるうえで重要な意味を持っています。日常的に何気なく使われる手洗いという行為の裏側に、実は大きな省エネの余地が隠れていたといえそうです。
病院特有の給湯エネルギー課題
従来の病院では、水を60℃まで温めたうえで貯湯槽に蓄え、厨房や洗浄、シャワー、手洗い場など院内のあらゆる場所へ高温の給湯管を巡らせる中央給湯方式が主流でした。
病院は広い敷地に手洗い場が数多く分散しているため、配管を伝って熱が逃げてしまう放熱ロスの大きさが長年の課題となっていました。特に手洗いについては、必ずしも高温の湯を必要としないにもかかわらず、他の用途と同じ配管系統で60℃の湯を届けていたことが、無駄なエネルギー消費につながっていたのです。
手洗い専用配管で放熱ロスを削減
「ぬく水」は、手洗いには高温の湯を必要としない点に着目し、手洗い用の給湯を中央給湯の系統から分離した仕組みです。60℃まで温度を上げる必要がないため、空調設備から出る低温の廃熱をそのまま活用できるほか、配管での放熱ロスも大きく抑えられます。
さらに、給湯管と給水管の両方が必要だった従来方式に対し、「ぬく水配管」のみで供給できるため、配管の数量を中央給湯方式に比べて約20%減らせる点も特徴です。配管量が減ることで、施工の手間やコストの面でもメリットが期待できそうです。
小田原市立総合医療センターと同規模の病院を想定して試算したところ、病院全体を従来方式で構成した場合と比較して、給湯にかかるエネルギーを約40%削減できることが確認されました。
ZEB化を阻む給湯エネルギーの重み
脱炭素社会の実現に向けてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化への取り組みが広がるなか、病院は感染対策や清浄度の確保、災害時の医療継続、24時間365日の稼働、多様な医療機器への電力供給など、他用途の建物に比べて多くのエネルギーを必要とします。
空調や照明の分野では省エネ化が着実に進んでいる一方で、給湯や蒸気にまつわるエネルギー消費への対策は後回しにされがちでした。病院で使われるエネルギーのうち給湯・蒸気が占める割合は18%にのぼるとされ、ZEB化における大きな課題となっています。
(出典:関東経済産業局「中小企業の支援担当者向け省エネ導入ガイドブック」)
システムを構成する5つの要素
「ぬく水」は、次の5つの要素を組み合わせて成り立っています。
- ぬく水配管:給水・給湯とは別系統で、夏場の水道水に近い25~30℃の湯を非循環方式で手洗い場へ届けます
- ぬく水水槽:中央給湯の貯湯槽とは別に、25~30℃程度の湯を蓄える水槽を設置します
- 残留塩素管理/制御装置:塩素注入装置と循環式の管理装置により、水槽内の残留塩素濃度を保ちます
- 換水機能:夜間や週末など使用が少ない時間帯には自動で水を入れ替え、水温と塩素濃度を維持します
- 低温廃熱の利用:60℃への昇温が不要なため、空調から出る低温廃熱を有効に活用します
病院以外への展開も視野に
竹中工務店は今後、病院の新築プロジェクトにおいて「ぬく水」の導入を積極的に提案し、普及を後押ししていく方針です。あわせて、手洗い場が数多く分散配置される病院以外の建物用途についても、システムの適用可能性を検討していく考えを示しています。
給湯という目立ちにくい設備の見直しが、建物全体の省エネ性能を底上げする一助となりそうです。今後、同様の課題を抱える施設が増えるなかで、こうした発想の転換が広がっていくことが期待されます。
出典情報など
出典:株式会社竹中工務店,手洗いに適した温水を供給する、低温給湯システム「ぬく水®」を開発~給湯エネルギーを40%削減~,https://www.takenaka.co.jp/news/2026/07/01/,リリース日:2026-07-23