急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡(第一回)|深堀り取材【毎月3回更新】

自由に情報交換できる建設系のSNSのみならず、公式見解が発表される建設系の既存メディア上でも、AIの積極的な援用に関する情報が数多く見られるようになった。そのような状況を受けて、本稿でも継続的に建設分野でのAI援用の現在地を追跡していくことにしよう。
目次
アンドパッドが建設業界のAI活用に関する調査結果を公表:AI活用は3割程度に留まる
クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を運営するアンドパッド(港区: 代表取締役稲田武夫氏)では、建設業界のAI活用の実態に関する独自調査を行い、その結果を公表した。それによると、建設従事者のAI活用は3割程度に留まり、活用目的については、業務効率化だけでなく、品質・安全管理の面でも活用が求められていることが明らかになった。
建設業界では、深刻な人手不足や「2024年問題」に伴う労働時間の制限、更には、建築確認申請のBIM援用、施工管理の高度化など、解決すべき課題が山積している。これらの解決策として「AI」への期待が急速に高まっている一方で、「なにができるのか」「具体的にどう業務に活用できるのか」といったAIの活用面においての模索も続いている。
このような背景を受け、アンドパッドでは建設業界に従事する2,000名を対象に「AIの利用に関する実態調査」を実施した。建設業従事者のAI利用度、目的、実際の利用内容とその満足度などがわかる内容となっている。
調査概要
「建設業におけるAI利用実態調査」
2026年:アンドパッド
- 調査方法:インターネット調査
- 調査主体:アンドパッド
- 調査時期:2025年12月
- 調査対象:20~69歳の建設業従事者
- 有効回答数:2,000件
AI活用: 「積極的に活用」「試験的活用」34.8%
日常業務でのAI活用については、「積極的に活用」「試験的活用」が34.8%で、「活用予定なし」が47.3%であった。活用しているとした者の内、「毎日」「週に数回」利用していると約64%が回答している。

導入目的: 「省力化・作業効率化」39.7%
AI導入の目的は、「省力化・作業効率化」39.7%、「人手不足への対応」33.8%となるなど業務効率化が最多であり、次いで「品質の安定化・ミス削減」30.3%、「技術・ノウハウの継承」21.3%、「安全性の向上・リスク低減」20.3%などとなっており、「安定した施工品質」への指向も重要視されている。

重要視する要素: 「現場と事務の両方で使える汎用性」27.9%
AI導入に際して重要視する要素は、「現場と事務の両方で使える汎用性」が27.9%と最も多く、「図面・画像・帳票など建設特有データへの対応力」24.3%、「既存システムとの連携性」19.4%と続く。一方、「わからない」との回答も32.6%に上り、具体的な選定基準に迷う層の多さも浮き彫りとなった。

業務領域: 「書類作成」36.8%+「施工・安全管理」24.6%
AIを活用している業務領域については、「書類作成」が36.8%と最も多く、「施工・安全管理」24.6%、「工程・進捗管理」24%といった建設特有の領域での活用が進んでいる。積算、設計、原価管理の領域でも約2割となっており、現場からバックオフィスまで様々な領域でのAI活用が始まっている。

導入効果: 「効果を実感している」76.4%
AI導入の効果については、AIを活用している者の内、76.4%が「効果を実感している」と回答しており、導入効果として「作業時間の削減」に関しては66%が実感している。次いで「ミス・手戻りの削減」48.9%、「人材育成」24.8%の者が効果を実感している。

課題: 「社内ルールの未整備」20.4%
AI導入・活用における課題については、「社内ルールの未整備」20.4%、「導入コスト」20%が上位となった。一方で「わからない」22.9%という回答が最上位となり、AIの活用イメージが沸きにくい層が多いこともわかった。

品質向上や人材育成などに効果が出ている反面でまだ取り組んでいないなど二極化も顕著
建設業界においても、AI活用に関しては、約3割が導入し、資料作成の効率化などに留まらず、品質管理への貢献や人材教育においても効果がでていることが明らかになった。一方で、AIにまだ取り組んでおらず、活用のイメージが湧いていない層も多く、二極化している。
今後もAIを活用する企業・組織が増えることが予想され、その中でも「現場と事務の両方で使える汎用性」や「図面・画像・帳票など建設特有データへの対応力」など、建設業界特有の業務に活用できることが重要視されていることも明らかになった。
今後もDX推進及びAIを活用した機能開発を迅速に行うと共に建設業界の課題解決を支援
AIの活用に際しては、自社のデータが安定的かつ継続的に収集、蓄積でき、活用できる仕組みや環境が前提となる。特に建設業界においては、図面など独自のデータが膨大に存在するなど汎用的に援用できるAIは存在しない。そのため業界特化型のプラットフォームを構築することで「施工・安全管理」や「工程・進捗管理」などでのAI活用の精度が向上する。
アンドパッドでは、今後もDX推進及びAIを活用した機能開発を迅速に行うと共に、きめ細やかなサポートを通して建設業界の課題解決を支援できるよう取り組んでいく。
ANDPAD Stellarc(アンドパッド・ステラーク)は、AIソリューション事業とAIプロダクト提供を両輪とし、建設業界の深刻な担い手不足や技術伝承の課題解決を目指すプロジェクトで、AIモデルやプロンプト、ワークフローが高速に生まれ、学び合い、重なり合うことで、刻一刻と変化する現場に沿って進化する「群知能」の構想を具現化したAI基盤である。
現在、アンドパッドでは、AI戦略を共に推進するため、AIアルゴリズム開発やLLM活用を担うAIエンジニア、AIソリューション事業における営業の採用を強化している。
マルチモーダル生成AIの活用で土木工事での全体施工計画書作成を支援するシステム開発
大成建設では、「生産プロセスのDX」の一環として、最新の生成AIである視覚言語モデル(※1:VLM)を基盤とした※2:マルチモーダル生成AIを活用し、土木工事における全体施工計画書の作成を支援するシステムを開発した。
当該システムは、公共工事の発注情報と大成建設が蓄積してきた膨大な技術ナレッジを基に、国土交通省書式に準拠した土木工事全体施工計画書のドラフト原稿を自動生成する。経験の少ない社員でも正確かつ迅速に作成でき、作業時間を従来比で約85%削減可能なことから業務の大幅な効率化と品質向上が実現する。
今後は、当該システムで確立した生成AIによる文書作成技術を全社へ展開し、更なる業務効率化と品質向上を目指すと共に、AIと人の協働による「生産プロセスのDX」を加速させ、土木分野における安全・安心で持続可能な社会基盤づくりに貢献していく。
※1:VLM( Vision-Language Model): 画像とテキストなどの複数情報を統合して処理できるマルチモーダル大規模言語モデル。発注図・写真などの視覚情報と特記仕様書などの文書をAIが同時解析し、文書生成に活用する。
※2:マルチモーダル(Multimodal)生成AI: 生成AIの内、通常対象とされるテキストで記述される言語情報のみならず、画像や動画、音声といった複数の形態にまたがる情報を解釈・生成できるもの。

国交省の書式に準拠した土木工事全体施工計画書のドラフトを自動作成する支援システム開発
公共工事における全体施工計画書は、受注者が工事着手前に発注者へ提出する書類で、国土交通省の指針に沿って地方整備局ごとに書式や章立てが詳細に定められている。全体施工計画書の内容は、工程や施工方法、使用資材・機械、安全・品質管理、環境保全対策、組織体制など多岐に渡り、工事規模によっては500ページを超えることもある。
従来まで全体施工計画書の作成は、正確性と高い専門性が求められることから、経験豊富な技術者の監督・指導の基、多数の担当者が手作業で進めており、膨大な作業負担の増加と属人化が大きな課題となっていた。
それらの背景を受けて、大成建設では、最新のマルチモーダルAIを活用し、国土交通省の書式に準拠した土木工事全体施工計画書のドラフト原稿を自動で作成できる支援システムを開発した。当該システムの適用によって大幅な時間短縮と品質の均一化が可能となる。
全体施工計画書原稿を自動生成+ Word形式での正確な出力+誤認・誤情報抑制で品質向上
当該システムの特長を列記する。発注情報と自社技術ナレッジを基に全体施工計画書原稿を自動生成する。
入札公告・工事概要・特記仕様書などの発注情報と、受注に際して作成・蓄積した技術提案などの社内ナレッジを入力することによってAIの文書解析機能により全体施工計画書作成に必要な情報を抽出する。これら抽出情報と社内で作成した施工計画書の記載事例を基にマルチモーダルAIが専門用語、文章、図表を適切に組み合わせ、約10分で施工計画書の原稿を自動生成する。
Word形式での正確な出力により作成ミスを防止する。
国土交通省の書式に準拠した施工計画書の原稿をAIが自動生成し、規定書式のWord形式で正確に出力する。従来のAIチャットボットの利用時などに生じやすい入力作業におけるミスを抑制できるだけでなく、文章の修正や図表の差し替えなどの編集も容易となる。
生成AIの誤認・誤情報を抑制し、全体施工計画書の品質を向上する。
VLM出力の信頼性が低い箇所を自動特定する技術を開発し、出力されたWordファイル上で誤認・誤情報の出力を抑制する。これによって生成AI活用時のリスクの一つである※3:ハルシネーション(AIの幻覚)を防止する。更に特定箇所を経験豊富な技術者が精査することによってより高品質な全体施工計画書を効率的に作成することが可能だ。
蓄積技術や知見の伝承を支援する。
長年に渡り培ってきた土木施工に関する技術や安全・品質管理に関する知見・ノウハウを施工計画書の作成プロセスを通じて自然に学ぶことができる。当該システムによって施工品質の向上と人材育成が同時に実現できることから、経営資源を更に発展させ、将来へと繋いでいくことが期待される。
※3:ハルシネーション(Hallucination): AIが根拠なしに事実と異なる内容について、あたかも真実であるかのようなもっともらしい嘘を生成してしまう現象。