4月から始まる建築確認申請の「BIM図面審査」を前にデジタル状況を取り巻く現在地を俯瞰(第一回)|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

国土交通省は、BIMの普及促進と建設業の革新を目指して建築BIM推進会議を設置した。ネット上でも、時々の建築BIM推進会議の動向に関する情報がタイムリーに公開され、建築分野のデジタル化、BIM化を目指して活動している関係者の奮闘も目を見張るものがあった。
建築BIM推進会議の動向とも軌を一にするように、建築基準法施行規則、建築確認等に関する指針なども改正され、「建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン」も公表された。
4月からは、建築確認申請へのBIM援用の最初の窓口となる「BIM図面審査」が開始される。本稿では、「BIM図面審査」の開始を迎えるに際して「BIM図面審査」を概観し、合わせてBIM状況を取り巻く現在地を二回に分けて報告する。
目次
確認検査機関も「BIM図面審査」の開始を公表する中で明らかになる確認申請用CDEの概要
確認検査機関の日本ERIでは、「BIM図面審査」を2026年4月より全国の支店において開始すると公表した。
「BIM図面審査」とは、BIMによって作成されたPDF形式の申請図書を確認申請用CDE(Common Data Environment:共通データ環境)を使用して申請、審査する新たな電子申請方式を指す。CDEのクラウド環境を活用することによって申請者と審査者が申請図書を共有し、必要に応じてIFC形式のBIMデータ(3次元モデル)も参照する。
確認申請用CDEによって実現する申請者とのコミュニケーションの精度向上、IFC形式のBIMデータ(3次元モデル)による設計内容の視覚的理解の促進が期待される。加えてBIMデータの作成基準である「入出力基準」に従い作成された申請図書を用いることによって「申告書」に基づく項目について整合性の確認を一部省略できる。
「BIM図面審査」の中核をなすと考えられる確認申請用CDEを主たる15の機能から推認

広く公開されている情報を綜合すると、確認申請用CDEは、15の主たる機能から構成されていることがわかる。申請者に「BIM図面審査」に関するより具体的なイメージをもってもらうべく、「BIM図面審査」の中核をなす確認申請用CDEの機能について推認する。
1. PDFの差分チェック
逐次的に提出されたPDFの変更箇所を自動的に抽出し、確認する機能。
2.3次元データの閲覧
申請図書と共に提出されたIFCデータを3次元で表示し、視点を変えて閲覧、拡大縮小して形状の把握・理解に利用する機能。任意の位置で軸方向に断面を切って表示する断面表示機能、IFCデータの空間構成やオブジェクトのプロパティ情報を確認できるプロパティ情報確認機能をもつ。
3. マークアップ機能
図面にコメントや指摘を追加できる機能。
4. チャット機能
申請者と審査者間においてリアルタイムでコミュニケーションを取るための機能。
5. フォルダ管理
プロジェクト案件ごとにフォルダを作成し、関係者にアクセスを許してデータを共有する機能。
6. アクセス権管理
プロジェクト案件の管理者が関係者へアクセス権を付与し、情報のセキュリティを確保する機能。
7. 図面の連動表示
複数のPDFファイルを同時に表示し、比較する機能。
8. 計測機能
2点間の距離を測定する機能。
9. 属性情報の確認
IFCデータが保有するオブジェクトに関連するプロパティ情報を確認する機能。
10. ファイルロック機能
審査中に申請者がファイルを修正できないようにする機能。
11. 履歴管理
変更履歴を追跡し、過去のバージョンを確認する機能。
12. データの一元管理
申請図書やデータをオンラインで一元的に管理する機能。
13. 審査状況の通知
フォルダに対するステータス機能を用いて審査者から申請者に審査状況を通知する機能。
14. 図面配置の調整
図面の配置が変更された場合に重ね合わせの位置を調整する機能。
15. 消防同意の管理
消防機関からの指摘を確認して必要な手続きを行うための機能。
上記の「BIM図面審査の概要」を再確認してほしい。IFCデータとして提出されるBIMデータ=3次元の建物モデルは、審査対象外なのだが、「BIMビュアーにより閲覧し、形状の把握・理解に利用」との記述からもわかるように、実質的に、BIM図面審査において重要な意味を持つのではないだろうか。図面間での整合性が取れた確認図面による審査といえども、3次元の建物モデルを参照する機会は、増えるのではと想像される。このことは、合わせて2029年から開始される「BIMデータ審査」への導入準備にもなると考えられる。
CDE導入企業が約7割に及ぶ一方で4割以上が「効果的な活用が進んでいない」のが現状
応用技術(大阪市北区: 代表取締役社長: 船橋俊郎)では、建設業界でDX推進に関わる担当者を対象に、「建設現場における情報共有・データ管理の実態」に関する調査を実施した。前段で検証したように、「BIM図面審査」に確認申請用CDEが用いられるなど、広くCDEに関心が集まる中、この調査では、CDEの導入と活用の実際を明らかにしている。その結果、CDE導入企業が約7割に及ぶ一方、4割以上が「効果的な活用が進んでいない」現状が浮き彫りになった。
◇調査概要:「建設現場における情報共有・データ管理の実態」に関する調査
◇調査期間:2025年11月10日(月)~2025年11月11日(火)
◇調査方法:応用技術によるインターネット調査
◇調査人数:1,019人
◇調査対象:調査回答時に建設業界でDX推進に関わると回答したモニター
◇調査元:応用技術
◇モニター提供元:PRIZMAリサーチ
◇「情報共有・データ管理の方法」
最初に「自社や協力会社間でどのような情報・データを取り扱っていますか?」として「情報共有・データ管理の方法」について聞いている。
現状では、従来の2次元図面・CADデータがいぜんとして大きな割合を占めている。一方で、BIM/CIMモデルや施工管理データなども一定の割合で活用されており、 約半数弱のプロジェクトで何らかの3次元モデルや管理情報が共有されている。ただし、BIM/CIMが前提となるプロジェクトとそうでないプロジェクトが混在している状況で、発注者要件やプロジェクト規模によってデータ形式の選択にばらつきが生じている。

◇「データ管理・共有ツールに対する満⾜度」
「データ管理・共有ツールに対する満⾜度」では、クラウド型のオンラインストレージについて利用者の過半数以上が満足している結果となっており、最も評価の高い運用手段といえる。SaaS型のプロジェクト管理ツールやCDEについては、満足との声も一定数あるものの「使っていない」との回答も約2〜3割程度見られた。特定のツールが導入されているプロジェクトと従来型の共有方法にとどまるプロジェクトが混在している現状を反映している。

◇「情報共有・データ管理の課題」
「情報共有・データ管理の課題」について最も多く挙げられたのは、プロジェクトごとに共有手段やツールが異なることで、コミュニケーションや運用ルールの不統一や情報管理の煩雑さを生んでいる点だ。具体的には、現場ごとに異なるツールや運用方法を使用していることが情報共有を妨げる大きな要因となっていることが分かる。ツールや手段の不統一は、情報の整合性を欠いたり、作業の遅延を引き起こしたりする原因となり、この課題の解決のためにはツールや運用方法の標準化が求められる。

◇「データ管理施策の実態と満⾜度」
「データ管理施策の実態と満⾜度」については、利用ルールやファイル履歴の管理には一定の満足度がある一方、データ連携やアクセス権限など運用を支える仕組みにはまだ改善の余地がある。詳細には、「利用方法についてのルール整備」「ファイル履歴(変更履歴)の管理」に対しては満足している企業が多く見られた。これらの取り組みが情報共有の透明性を高め、ミスやトラブルを減少させるために効果的であることが分かる。「様々なツールとのデータ連携・一元管理」については、 多くの企業が不満を抱えている。複数のツールを使用している現場においては、ツール間でのデータの整合性や連携に課題があることが背景にある。ツール間のデータ共有をスムーズに行うためにはシステム間の連携強化が求められている。

◇「情報管理のためのルール実態」
「情報管理のためのルール実態」については、基礎的な情報管理ルールが整備されていない企業が半数近く存在していることがわかった。具体的には、「アクセス権限の設定」「標準的なフォルダ構成」「ファイル名の命名ルール」などの基本的な情報管理ルールについても、半数近くの企業で規定されていない可能性があることが明らかとなった。このような基本的な情報管理ルールの未整備は、業務の効率化に大きな支障をきたす。アクセス権限が適切に設定されていない場合、重要なデータへの不正アクセスや誤操作が発生するリスクが高まり、情報漏洩やデータの破損に繋がる恐れがあるし、データが整理されず、必要な情報を素早く探し出せないなど業務の非効率が生まれる。

◇「今後の情報管理のニーズ」
「今後の情報管理のニーズ」について聞いた処、リアルタイムでの情報共有ニーズの高まりが見られ、多様なデータ形式を跨いだ一元管理への期待も寄せられている。現場では即時対応や迅速な意思決定が求められている。プロジェクトの進行中にタイムリーで正確な情報を共有することで問題の早期発見と対応が可能となり、全体の効率化が進む。リアルタイム共有の実現には、クラウド技術を活用することが不可欠である。「様々な形式のデータ連携・一元管理」も上位に挙げられており、図面・3次元モデル・写真・点群・センサーデータなどが散逸的に管理されている現状からの脱却が求められている。運用ルールの整備やデータ共有の一貫性を高めることで情報管理の質も向上する。変更履歴の管理やアクセス権限の設定など透明性と整合性のある運用体制を築くことがプロジェクト全体の進行を円滑にし、リスクを最小化するために重要である。

◇「CDEの導入状況と導入課題」
「CDEの導入状況と導入課題」については、「効果的に活用できている」と表明したのは全体の約4分の1に留まっている。導入していないという回答も約3割あり、企業規模やプロジェクト特性によっては、CDEの必要性がまだ明確になっていないケースもある。 CDEを効果的に活用できていない理由としては、「使い方を習得するまでの学習コスト」「システムの複雑さ」が主要な障壁となっており、CDEの導入には一定の学習やシステムへの理解が必要であり、これをクリアするためには、適切なサポートや教育が不可欠である。


申請者と審査者が申請図書を完成版にまで収斂させる情報プラットフォームとしてのCDE
前述した確認申請用CDE の15の機能からもわかるように、CDEは、申請者と審査者が協働して申請図書を完成版にまで収斂するために用いる情報プラットフォームと定義づけられる。デジタル化された申請図書は、情報プラットフォーム内を行き交うメディア(媒体)となり、デジタルデータの優れた流通性、可用性をいかんなく発揮する。
応用技術が行った「建設現場における情報共有・データ管理の実態」調査からは、「データ管理・共有ツールに対する満⾜度」において、クラウド型のオンラインストレージについて利用者の過半数以上が満足していることがわかる。一方で、図面・3次元モデル・写真・点群・センサーデータなどが散逸的に管理されているため、それら多様なデータ形式を跨いで横断的に一元管理するCDEへの期待が大きいことも判明した。
次回は、共通データ環境= Common Data Environmentと明示されるCDEの概要を、代表的なCDEとして注目を集めているカテンダ社の「Catenda Hub」の紹介を通して検証する。