実務者による書き下ろしで初刊行となる「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

福井コンピュータアーキテクトのBIM建築設計支援システム「GLOOBE Architect」の関連書籍「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」が刊行された。「GLOOBE Architect」に関する書籍としては、初刊行となる。著者は、BIMプランニング株式会社の代表取締役である小林美砂子氏、株式会社鴻池組でBIM推進役を務める内田公平氏、協力者としてBIMコンサルタントの株式会社びむてく工房代表取締役の浅野博光氏が参加している。
「GLOOBE Architect」のユーザー会として活動しているJapan-BIM connectの知見も数多く取り入れられている。筆者は、この書籍の端緒となる企画立案者として版元の日刊建設通信新聞社での出版のきっかけづくりを担った。

「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」は、BIMを援用した建築確認申請が本格的に始まるというタイミングに合わせて企画した。2026年からはBIMソフトで作成した確認申請図書(PDF形式)による図面審査が開始され、2029年以降には BIMデータそのものを使った審査も予定されている。確認申請の流れが大きく変わる可能性があり、建設業界全体の次なる動きにも繋がっていくと考えられる。

実務者による書き下ろしで初刊行

国産BIMとして建築基準法に関わる情報を内包+ BIMでの確認申請の推進に貢献する可能性大

BIMを援用した建築確認申請が本格する状況の中で、「GLOOBE Architect」が持つ国産BIMならではの優れた機能は心強い。具体的には、建築基準法に関する情報をシステムに取り込み、「申請面積の自動計算」「有効採光・換気・排煙計算」「防火・防煙区画のチェック」「平均地盤算定」などを支援してくれる。更には、「日影図・斜線図・天空図」「延焼・燃焼ラ イン」の算定も可能で、確認申請図書の作成を円滑に進めることができる。

筆者自身は、建築分野におけるコンピュータ活用の調査・執筆を始めてから足掛け40年以上が経過した。福井コンピュータアーキテクトについては、1991年に「アーキトレンド11Ver.2トレーニングマニュアル」を出版した頃から国産のソフトベンダーとして注目してきた。それ以来、純国産BIMとしての「GLOOBE Architect」の成長も注視しながら、「いつかこのソフトの魅力を伝える本を出したい」と思い続けてきた。今春、ようやくその思いが叶い、感慨深い。

本書がBIMによる確認申請の推進に貢献し、建設業界全体のデジタル援用に役立てば、企画者としてこれ以上の喜びはない。本稿では、合わせて「建築とコンピュータ」に関わる編集者の立場からBIM建築設計支援システム「GLOOBE Architect」の特性を良く表す援用事例についても報告する。

副題「企画設計からモデリング・確認申請図書までこれ一冊」+無料体験版の入手方法明記

「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」は、B5判・444ページ・全ページオールカラーという大著である。本書を読み進めるに際しては、「GLOOBE 2025 Architect」がパソコンにインストールされているのが最善である。そのため、本書の9ページには、「GLOOBE 2025 Architect」の無料体験版の入手方法が記されており、18ページでは、本書で使用する教材データのダウンロード方法が明示されている。

本書は、読者対象を「初めてBIMを学ぶ方」としているが、副題に「企画設計からモデリング・確認申請図書までこれ一冊」とあるように、確認申請に使用する建物モデル・図面を作成するために、事前に確認申請用のテンプレートを設定すること(Chapter 1 準備編 1-1 テンプレートの設定)から始まる構成となっている。

RC造7階建て店舗付き共同住宅(延床面積785平米)を対象建物としており、企画設計からモデリングそして最終的に確認申請図面作成までに至るプロセスが一貫したBIMワークフローとして解説されている。

実務を担う設計者に確認申請に至るBIMワークフローを実体験してもらう目的で書き下ろし

「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」は、BIMソフト操作習得の観点も含めて、あくまでも実務を担う設計者に、確認申請に至るBIMワークフローを実体験してもらう目的で書かれている。そのため、実際の設計実務に近似して手戻りや試行錯誤を繰り返しながら建物モデルを構築していくプロセスも取り入れている。合わせて実際の設計実務で起こり得る判断や調整のプロセスも再現し、BIM援用のリアルな流れも体感できる内容となっている。

Chapter 1の「準備・設定」では、最も重要な確認申請用のテンプレートの設定を行う。「部品ファイルの設定」「設定(ユーザープロパティ)の共有」「3Dカタログ部品の設定」などの事前準備も行う。

Chapter 2の「企画の事前設定、企画」では、いわゆる企画設計段階でのモデリングを行う。「ボリューム解析機能」を用いて建築基準法に合致した建物を企画設計する。敷地情報を入力してボリューム解析も行う。

Chapter 3の「基本となるスペースの入力」では、企画設計段階での用途区画に基づき「建築設計」タブの「スペース」コマンドを用いて部屋割りを行う。確認申請に必要な計算や法規設定の基礎情報として「スペース」を入力していく。

Chapter 4の「基本となるモデルの入力」では、建物の外形や壁・開口部・階段・設備スペースなどを入力し、企画設計から実施設計へと連動して建物モデルを構築する。

Chapter 5の「図面作成の準備」では、確認申請に必要な法規の設定とそれに伴う面積の再確認を行う。採光・換気の項目では、居室の床面積や有効開口面積が適切に設定されているかを確認する。確認申請図面作成のために、完成した建物モデルデータによって再度、ボリューム解析を行い、容積率・建蔽率を計算する。これによって確認新設図面作成のための最終的な数値を生成できる。

次いで、完成した建物モデルデータに対して確認申請に必要な法規の設定を行い、採光・換気・防火区画などの法規データを建物モデルに紐づけする。完成した建物モデルデータによって確認申請図面に必要な情報を解析し、図面作成の準備を行う。

Chapter 6の「図面作成」では、本書の根幹をなす確認申請図面の作成を実行する。設定済みの建物モデルを使用して確認申請図面として出力し、建物モデルから平面図、立面図、断面図などの確認申請図面を作成する。

作成できる各種図面の構成内容(本書17ページより抜粋)

教育機関でも高い評価を受ける「GLOOBE Architect」+法規に係る授業への適用を探るべく検証

「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」が明示しているように、「GLOOBE Architect」は、建築基準法インフォメーション(データベース)を内包している。

これら国産BIM特有の優位性からも「GLOOBE Architect」は、教育機関からも高い評価を受けている。2024年5月の段階で、早稲田大学創造理工学部研究科建築学専攻石田研究室では、「GLOOBE Architect」を試験的に導入し、建築のワークフローにおける初期段階でのBIM援用、法規に係る授業への適用の可能性を探るべく検証を行った。

既存建物である喜久井町キャンパスを対象建物として鳥かごを作成し、新築する場合を想定、喜久井町キャンパスが斜線制限に抵触せず高度地域内にも収まっており、仮想的な増築も可能と確認を済ませている。

石田研究室では、最初に建築計画の最上流に位置する日影規制、斜線制限などの法的規制の検討において「GLOOBE Architect」がどのように挙動し、有効性を発揮するのかの確認に着手した。

喜久井町キャンパスは、多目的グラウンドを中央に挟み、グリーン・コンピューティング・システム研究開発センターをもつ40号館、第一・第二研究室、内藤記念館などをもつ41号館から構成されている。喜久井町キャンパスの鳥かご作成においては、最初に公開されている地籍図を用いて「GLOOBE Architect」に敷地情報を入力した。

「東京都主税局のweb[地籍図公開(23区)]サービス」を通して入手した喜久井町キャンパスを含む近辺の地籍図を用いて、喜久井町キャンパスを含む敷地をなぞるようにして「GLOOBE Architect」への敷地入力を行った。

「新宿みんなのGIS」を用いて用途地域などの都市計画情報を入力した。その結果、喜久井町キャンパスを含む敷地は、近隣商業地域、第一種住居地域、第一種中高層住居専用地域に跨るように混在することが判明していく。

地籍図で喜久井町キャンパスの敷地をなぞる
「GLOOBE Architect」での地籍図読み込み画面

「GLOOBE Architect」は建築基準法における平均地盤面からの高さ算定など複雑な計算にも対応

平均地盤面の検討も行った。建築基準法では、平均地盤面からの高さは、対象建物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さを指している。加えて対象建物が周囲の地面と接する位置の高低差が3メートルを超える場合であっても平均地盤面は1つとなり、同一敷地に二以上の建築物がある場合は、これらの建築物は一つの建築物とみなされ、平均地盤面は一つとなる。

「GLOOBE Architect」で地盤面の高さを算定するためには、「専用設計ツール」タブの対象「ボリューム解析」をクリックして、「地盤計算」タブのコマンドを用いる。「算定ポイント」で計算建物の外周上の点と地盤が接する高さを設定し、「地盤算定」で平均地盤高を算出すると、その結果が「敷地境界・地盤」のプロパティにセットされることになる。その結果、40号館の仮想空間上での改築を想定しても、十分な余裕をもって可能であると判明している。

更に加えて、建築基準法との関連においては、各種建築部材がコマンドとして揃っているため、名前や形を覚えることができ、教材としても活用できる。合わせて、法規チェック機能によって日影計算や面積計算、採光換気排煙計算などの根拠に基づき、理解を深めることができる。

40号館・41号館含む鳥かご図・俯瞰

明らかとなる市場での占有率が高い海外出自のBIMソフト「Revit」との共存・併用の可能性

建築確認申請のBIM援用が俎上に上がる以前から「GLOOBE Architect」は、システムが内包する建築基準法インフォメーション(データベース)の有効性おいて国産BIMとしての特性を顕著にしていた。

ある大手組織設計事務所では、BIMソフト「Revit」をベースにした建築基準法関連のシステム開発と並行して「GLOOBE Architect」の運用も試行していた。当該設計事務所は、BIMソフト「Revit」をベースにした各種システムの開発を行い、テンプレートの外販も行うなど、デジタル化に先駆的であるとして知られていた。そのような状況下、「GLOOBE Architect」が確認申請に関わる実務の中で有効かの検証を行った。

「Revit」操作画面
「GLOOBE Architect」操作画面

BIMソフト「Revit」の運用|体制は活かし建築基準法関連の領域については「GLOOBE Architect」と併存

「GLOOBE Architect」は、BIMソフト「Revit」のネイティブデータ形式である「.rvt」データを直接、インポートでき、対応バージョンはRevit 2016から最新の2026にまでに及んでいる。これによってインポートされた建物データは、「GLOOBE Architect」内で居室判定や各種計算などに最大限、有効利用できる。当該設計事務所は、BIMソフト「Revit」をベースとする運用                             体制は活かしたまま、建築基準法関連のシステム領域については一部、「GLOOBE Architect」に任せることとした。

 BIMソフトの普及状況を見る時、市場供給を先行したことなどもあり、BIMソフト「Revit」他の海外出自のシステムが多くを占めている。一方で、当該設計事務所のケースに見られるように、今後は、確認申請と極めて親和性の高い「GLOOBE Architect」との共存、併用が行われる可能性は大きいと考えられる。その意味からも、「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」の刊行は、時宣を得たものといえる。

「GLOOBE Architect」での「.rvt」データの読み取りの概念図

BIMソフトは敷居が高くメリットを感じにくいという設計者の現状に一石を投じるべく刊行

最後に、著者へのヒアリングと筆者が取材を通して知り得た情報を含めて、設計者を取り巻くBIM状況を俯瞰してみる。

設計者を取り巻くBIM状況を見る時、設計実務にBIMソフトを用いるのは敷居が高過ぎるとよく聞く。現状では、設計情報の流通は2次元図面が中心であり、BIMソフトによって建物3次元モデルを構築しても、設計者はメリットを感じにくいし、場合によっては、2次元と3次元の重複手間が起こっている。そのため設計は従来通り、2次元CADで行い、建物のモデリングが必要であれば、オペレータや外注事務所に任せるという本末転倒が起こっている。BIMソフトは本来、設計者が自ら使ってこそBIMなのだとの理解が進む中でも、BIMソフトへの様子見が起こっている。そのような状況下、設計者にとってBIMソフト使用時のメリットを感じてもらうべく「GLOOBE ArchitectではじめるBIM活用入門」は刊行された。

2次元CADによる手作業に頼る設計者の実務を質量共に改善+各種の確認申請図面の完成

本書刊行の一義的な目的は、「GLOOBE Architect」による確認申請図面の完成であり、3次元建物モデル化には力点を置いていない。その点がBIMソフトの操作習得、3次元建物モデル構築に向けて書かれた書籍と趣を異にしている。

本書の流れに即して「GLOOBE Architect」を用いて、コマンド通りに壁や柱や建具を配置していけば建物3次元モデルはでき上がるし、法規情報を確認しながらBIMソフト側の指示に従い、チェックを加えれば、各種の確認申請図面ができあがる。このように「GLOOBE Architect」を用いて設計実務を追体験すれば、これまで2次元CADよる手作業に頼っていた設計実務も質量共に改善され、何よりも設計者は楽になる。

確認申請図書(PDF形式)による図面審査に際して、2次元CADによる図面を提出するわけにはいかないだろう。BIMソフトによって実現している各図面間の整合性がとれたPDFファイル形式のデータを提出する必要があるからだ。確認申請のBIM援用というターニングポイントを迎えるに際して、BIM環境の構築は待ったなしだといえよう。