AIで2次元図面の解析と構造化を実現する「平面図解析技術」開発+設計要件照合などに援用|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

テクトム(渋谷区・代表取締役北村尚紀)では、AIによる2次元図面の解析と構造化を実現する「平面図解析技術」を新たに開発した。
「平面図解析技術」は今後、テクトムの建築設計AIプラットフォーム 「 Tektome Platform 」に順次適用される予定となっている。これによって平面図から室名・室床面積・室容積などをAIが自動で解析し、※「KnowledgeBuilder」上で構造化データとして活用できるようになる。取得した情報は、過去アーカイブの検索、統計分析、設計要件照合や基準チェックなど「Tektome Platform」上の各ツールとの連携活用を想定している。
テクトムでは、今回の平面図解析技術を皮切りに断面図・立面図・設備図など2次元図面への対応を順次拡大していく。更にその先には、BIM データへの応用も視野に入れ、将来的に設計から施工・維持管理まで各プロセスでのデータ活用を実現していく。
※「KnowledgeBuilder」: 主に建設業界向けに開発されたAIソリューション。過去の設計図面や関連情報を自動的に構造化し、検索可能な形に変換するツール。設計者が自然言語で指示を出すことで図面、議事録、写真などの多様なフォーマットから重要な情報を抽出し、整理することが可能となる。
目次
寸法補助線が重なることによる誤認識を解決+線の太さ・破線・点線なども正確に判別
AIが平面図からレイアウト情報を高精度に抽出できるようになったことで、次のような課題を解決した。
寸法線や線表現の多様性実現については、壁線・部屋境界線と寸法補助線が重なることによる誤認識を解決し、線の太さ、破線、点線なども正確に判別できるようになった。図面のノイズやバリエーションについては、スキャン歪み、解像度不足、印刷かすれ、手書き修正、設計事務所ごとの作図ルールの違いにも対応できるようになった。注記や文字の干渉については、「浴室」「 EPS 」などラベルが空間をまたいでも正しく判定できるようになっている。
「平面図解析技術」によって次のような設計環境を実現している。
部屋の寸法・形状の抽出については、縮尺が異なる図面でもスケールを読み取り、寸法・形状を正確に測定可能とした。室名や室用途の推論に関しては、開口や扉で途切れて完全に囲まれていない空間も、AIが「一部屋」として認識できるようになった。建具(
ドア・窓)の特殊表現解析については、開き戸の円弧や引き戸の矢印などの建具記号を理解し、面積や開口部を正しく計算できる。これらの技術によって平面図から室名・室床面積・室容積などをAIが解析し、設計に活用できるデータとして自動的に構造化する。

平面図データを活かした検索・分析・設計支援+平面図情報のデータベース化を実現
期待される活用シーンは、次の通りである。平面図データを活かした検索・分析・設計支援が実現する。平面図情報のデータベース化を実現し、一元的に整理・活用できるようになった。
平面図には、室名や仕様、数量などの文字・数値情報に加え、線や寸法・配置・面積といった形状情報も含まれている。これらの情報をAIが解析し、部屋の配置や用途の分布、面積効率など、建築計画に直結する情報を幅広く自動抽出する。その結果、新規計画の効率化や統計データに基づく意思決定、設計レビューの省力化、積算の自動化などを実現する。
続いて主な活用例について報告する。
アーカイブ検索では、文字・テキストベースのみでなく、図面から室面積や寸法などの形状情報が解析できるようになり、「500平米以上あるホール」「奥行き15m以上のオフィス専有部」など空間の特徴を用いた高度な検索が可能だ。
統計分析においては、「小学校の柱スパン」「貸室の天井高さ」「レンタブル比」など、室床面積や形状情報の取得が可能となり、竣工プロジェクトの統計・傾向分析を行い、現行の設計に活用できる。
自動チェックでは、「平均天井高さ2.1m以上」「避難における歩行距離30m以下」など、建築関連法令や設計基準への適合性を自動判定する。
自動設計においては、「教室の形状は7mx9mが多い」「都内の1万平米規模のオフィスビルは貸室の奥行き約14〜16m程度が多い」など、部屋の形状や寸法をAIが学習し、レイアウト案を自動生成する。
AIが解析・構造化したデータは「KnowledgeBuilder」に蓄積され、設計事例の検索や設計傾向の把握、AIによる学習・自動設計に活用される。更に加えて、「ReqManager 」や「SmartCheck 」では要件管理・基準チェックに利用でき、「Tektome Platform」全体で高度な連携が可能になる。

2次元図面を解析+構成や配置に基づく図面検索や設計傾向の統計分析などへの応用が可能
建設業界において、従来の2次元図面を解析し、データ化することは長年の課題とされてきた。特にAIにとっては、複雑な寸法線や空間をまたいだ注記の干渉、スキャン時の歪みや手書き修正といった要因によって誤認識が生じやすく、極めて困難な領域であった。更には、建具の特殊記号や組織・担当者ごとの作図ルールの違いも解析精度を阻む要因となっていた。
そこでテクトムでは、これらの課題を解決するため、AIによる2次元図面解析の実用化を目指し、「平面図解析技術」を開発した。建築設計において、平面図は空間構成や動線計画、機能配置といった建築の根幹を規定する最も本質的な図面だ。これらの情報を解析することで、構成や配置に基づく図面検索や設計傾向の統計分析など多様な応用が可能となる。
パイロットユーザー募集
「平面図解析技術」の実用化を更に推進するためテクトムでは、実際の業務において検証してもらえるパイロットユーザー企業を有償で募集している。
募集要項
- 対象:建築設計事務所、ゼネコン、不動産開発会社など建築図面を扱う事業者。
- 応募方法:以下の「募集要項」をクリックして申し込むこと。