対話型AIエージェント技術を活用した施設管理に関する共同実験を開始+建築DXを推進|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

ドコモとNTTファシリティーズでは、ドコモが独自に開発した対話型AIエージェント技術を実際の建物維持管理業務において活用し、技術の有効性を評価する共同実験を11月中旬から開始したと発表した。
本技術は、建物の複雑なデータ構造に関する専門知識や専用ソフトの操作スキルがなくてもBIMに蓄積された膨大な建物の情報を自然言語で操作可能にするものとなっている。
本実験においては、NTTファシリティーズが管理する既存建物のBIMデータを用いて、建物維持管理業務における本技術の有効性と実用性を検証することで、誰もがチャットでの自然な会話の中でBIMデータを活用できるようにし、建物ライフサイクル全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させることを目指している。
目次
直観的な操作で「専用ソフトや専門知識がなければBIMデータを活用できない」との課題解決
今回、ドコモが開発したAIによる直観的なBIM操作技術は、「専用ソフトや専門知識がなければBIMデータを活用できない」という課題を解決するものとなっている。
本技術は、主に以下の特長によって自然言語での対話を通じて誰でも必要なBIMデータを自在に引き出すことを可能とし、直感的なデータ活用を実現している。
グラフRAG※1)による複雑なデータ構造の理解
膨大で複雑なBIMデータを、AIが理解しやすいナレッジグラフ形式※2)で整理。これによって大規模言語モデル(LLM)※3)が自然言語の質問から必要な情報を正確かつ高速に検索・抽出する。
※1)RAG: Retrieval-Augmented Generation。検索拡張生成。
※2)ナレッジグラフ形式: BIMデータに含まれる「部屋」や「設備」といったさまざまな建物情報とそれらの複雑な関係性をAI が理解しやすい関係図のように整理したデータ構造のこと。
※3)大規模言語モデル(LLM: Large Language Models): 大量のテキストデータに基づいて機械学習により訓練された大規模な人工知能モデルのこと。
マルチエージェントによる高精度な対話応答
ユーザーの意図を解釈する、ナレッジグラフを探索する、回答を生成するなどの異なる役割を持つ複数のAIが連携・協調することで、単体のAIでは難しい曖昧な質問にも多角的な視点から精度の高い回答を導き出す。
維持管理におけるBIM活用を大きく前進させると共に建物ライフサイクル全体のDXを加速
両社は、本実験を実施することによって誰もが直観的にBIMデータを扱える環境を実現し、建物の維持管理におけるBIM活用を大きく前進させると共に、建物ライフサイクル全体のDXを加速させていく。
合わせて本実験を通じて得られる知見を基に本技術をさらに高度化させることで、建設・不動産業界を始めとするさまざまな領域における本技術の社会実装を目指す。
設計者だけでなく、オフィスビル、データセンター、商業施設の管理者や利用者、ビルのオーナーといった建物に関わるあらゆる人々がBIMデータを活用できる新しいワークスタイルを確立し、建設・不動産業界の生産性向上や、建物利用者の利便性向上に貢献していく。
維持管理業務の効率化や計画的な設備投資などによる建物のライフサイクルの最適化を図る
BIMは、建設業界におけるDXの中核として期待されており、近年では、建物の構築段階だけでなく、竣工後の維持管理においてもBIMデータを活用することで、建物の維持管理業務の効率化や計画的な設備投資などによる建物のライフサイクルの最適化を図る動きが広がっている。
一方で、BIMデータの操作には、専用ソフトの導入や専門的な知識が求められるため、維持管理の現場では操作性や利便性の面で導入が進みにくいという課題があった。
ドコモが全国に保有・管理する多数の自社ビルでも、施設管理の抜本的な効率化が喫緊の課題となっており、これらの建物の維持・管理を担当するNTTファシリティーズは、これまでもBIMデータを活用して建物を一元管理する仕組みの整備や施設の状況把握や整備計画の策定・改修設計への活用など施設管理のDX化を推進してきた。
