奥村組、環境残留性の高いPFASを99%除去する新技術 名大との共同開発で成功
株式会社奥村組(大阪市阿倍野区、代表取締役社長:奥村太加典)と名古屋大学(名古屋市千種区、総長:杉山直)の研究チームは、環境問題として注目されている有機フッ素化合物(PFAS)を浄化する革新的な技術の開発に成功しました。この技術について、2024年7月19日に特許出願(特願2024-116259)を行っています。
深刻化する環境汚染問題
PFASは「フォーエバーケミカル」(永遠の化学物質)という呼び名で知られ、様々な工業製品に使用されている化学物質です。この物質の最大の問題点は、自然界でほとんど分解されず、環境中や人体に長期間残り続けることです。特に、PFASの仲間であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサン酸)については、人体への悪影響が科学的に証明されています。
国内外での規制強化
こうした健康への懸念から、これらの物質は国際的な「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)や、日本国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)によって、製造・輸入・使用が厳しく制限されています。
既存の処理方法の限界
現在、河川水や地下水、土壌におけるPFASの環境基準値は定められていませんが、国内での汚染事例が次々と報告され、問題が顕在化しています。これまでの処理方法は、活性炭などの吸着剤にPFASを吸着させて除去する方法が主流でしたが、処理できる量に限界があることや、使用済み吸着剤の処分方法が課題となっていました。
革新的な浄化技術の仕組み
今回開発された技術の核となるのは、名古屋大学物質科学国際研究センター/大学院理学研究科の山田泰之准教授と田中健太郎教授のグループが開発した「金属錯体担持カーボン触媒」です。この触媒は、特殊な二階建て型構造を持つ金属錯体をカーボン(炭素)に付着させることで、極めて高い酸化力を実現しています。
高い処理効果を確認
研究チームは、この触媒を用いることで、水溶液中の様々なPFAS類を効果的に酸化分解できることを確認しました。実験では、汚染された河川水からPFOAを99%以上除去することに成功。さらに、除去したPFASの一部を完全に分解することにも成功しています。
技術の特長と将来性
この技術の最大の特長は、PFASを単に吸着するだけでなく、実際に分解できる点です。これにより、使用済み吸着剤の処分という従来からの課題も解決できる可能性が開かれました。
今後の展開
研究チームは、触媒の性能をさらに向上させる研究を継続するとともに、この技術の実用化を目指しています。具体的には、PFAS汚染が確認された地下水や土壌の浄化工事への応用を計画しており、環境修復・保全の観点から社会貢献を目指しています。
なお、本技術の開発は、2023年9月に締結された両機関の共同研究契約に基づいて実施されました。この画期的な環境浄化技術の実用化により、深刻化するPFAS汚染問題の解決に向けた大きな一歩が踏み出されることが期待されています。
開発機関の概要
■株式会社奥村組
所在地:大阪府大阪市阿倍野区松崎町二丁目2番2号
代表者:奥村太加典(代表取締役社長)
事業内容:建設工事の設計および施工、建設コンサルタント業務、都市再開発事業、不動産事業など
■国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
所在地:愛知県名古屋市千種区不老町1番
総長:杉山直
出典情報
株式会社奥村組リリース,有機フッ素化合物(PFAS)による地下水・土壌汚染浄化技術の開発~超強力酸化触媒による分解に成功~,https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2024/content.html