大成建設、CO2排出量80%削減のグラウト材を共同開発 環境配慮と施工性を両立
大成建設株式会社(社長:相川善郎)とブイ・エス・エル・ジャパン株式会社(社長:山村徹)は、環境負荷を大きく低減した画期的なグラウト材「T-eCon/アンカーグラウト」を共同開発したことを発表しました。
開発の背景
建設現場では、斜面を安定させたり地滑りを防いだりするために「グラウンドアンカー工法」という技術が広く使われています。この工法では、地盤に穴を開けてアンカーと呼ばれる棒状の部材を挿入し、セメント系のグラウト材で固定します。
しかし、従来のグラウト材は大量のセメントを使用するため、その製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)が環境への負担となっていました。そこで両社は、大成建設が開発した環境配慮型コンクリート「T-eConcrete」の技術を応用し、環境負荷を大幅に低減した新しいグラウト材の開発に取り組みました。
新グラウト材の特長
1. 大幅なCO2排出量削減を実現
新開発のグラウト材は、セメントを使用しない特殊な結合材を採用することで、従来製品と比べてCO2排出量を約80%も削減することに成功しました。これは、建設業界における環境負荷低減への大きな貢献となります。
2. 二つのタイプで様々な現場ニーズに対応
本製品には「通常型」と「早強型」の2種類があります。早強型は、工期を短縮したい現場向けに開発され、施工後わずか3日で必要な強度(圧縮強度24N/mm2)に達します。早強型は少量のセメントを使用しますが、それでも従来製品と比べてCO2排出量を約75%削減できます。
3. 従来製品と変わらない使いやすさ
新グラウト材は、従来の製品と同じ方法で製造・施工が可能です。ポンプでの圧送のしやすさや、硬化後の強度なども従来製品と同等の性能を維持しています。
実績と今後の展開
すでに名古屋市の春日井浄水場沈澱池整備事業において、仮設アンカー工事の一部に早強型グラウト材が約38立方メートル使用され、良好な結果が得られています。
両社は今後、この新グラウト材をVSL仮設アンカー工事に積極的に導入していく計画です。さらに、より長期的な使用が必要となる永久アンカーへの適用も検討し、グラウンドアンカー工事全般での活用を目指しています。
製品仕様
新グラウト材の水粉体比(水と粉体の割合)は42~44%、混和剤の添加量は2~3%と設定されています。これは従来製品(水粉体比45~55%、混和剤2%)と同等の作業性を確保できる配合となっています。
環境への貢献
建設業界では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが急務となっています。このような環境配慮型の新素材の開発と実用化は、業界全体の環境負荷低減に大きく貢献することが期待されます。両社は、この新グラウト材の普及を通じて、持続可能な建設技術の発展を推進していく方針です。
本開発は、建設現場における環境負荷の低減と、工事の品質確保という二つの課題を同時に解決する画期的な成果として、業界内外から注目を集めています。今後のさらなる技術改良と用途拡大が期待されます。
出典情報
大成建設株式会社リリース,環境配慮型グラウト材「T-eCon®/アンカーグラウト」を開発-製造時のCO2排出量を大幅削減し、従来と同等の施工性・性能を発揮-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250110_10280.html