建設コンサルタントの仕事とは?ゼネコンとの違いや年収・必要資格について解説
建設業の仕事のなかでも、設計に携わる建設コンサルタントに興味をお持ちの人も多いでしょう。しかし、具体的にどのような仕事内容なのかわからない人もいるはずです。
そこでこの記事では、建設コンサルタントの仕事内容やゼネコンとの違いを解説したのち、求職者が覚えておきたい仕事内容、年収、必要資格について紹介します。
目次
建設コンサルタントとは
建設コンサルタントとは、主に土木業界で次のようなインフラ全般の計画・調査・設計・維持管理の業務を担う仕事です。
- 道路
- 橋梁
- 河川・海岸
- 上下水道
- トンネル
- ダム
- 公園
- まちづくり
上記の業務範囲はあくまで一例であり、ほかにも公共施設に関わる工事前の計画・調査・設計業務はもちろん、工事後の維持管理について、図面の作成はもちろん、数量の算出、概算工事費の算出など、専門家という立場から提案をおこないます。
主に国や自治体が発注者であることから、一般的なサービス業とは違い、入札形式(くじ引きのようなイメージ)で仕事を受注するのが特徴です。
ゼネコンとの違い
建設コンサルタントが設計業務を担当する一方、ゼネコンは主に設計のほかに、施工管理にも携わります。
一部、建設コンサルタントと似ている設計業務は含まれていますが、ゼネコンの主力となる業務は施工管理です。期日が決められている工期のなかで、計画的に工事を完了させなければなりません。
なお、施工管理ではスケジュール管理のほかにも、人材の配置や建材の発注管理、天候によるスケジュールの調整など、管理に関わる仕事をおこないます。
建築設計事務所との違い
同じ設計をする会社として挙げられるのが、建築設計事務所です。建築設計事務所も建設コンサルタントと同じように、図面の作成や数量の算出、概算工事費の算出などに対応しますが、次のポイントが違います。
建設コンサルタント | 建築設計事務所 | |
主な業界 | 土木業界 | 建築業界 |
発注者 | 主に国や自治体 | 主に不動産会社や個人 |
設計するもの | 主に公共施設 | 主に住宅や施設(建物) |
求められる資格 | 技術士 | 建築士 |
建設という言葉には、土木・建築の両方の意味が含まれていますが、そのなかでも建設コンサルタントは土木、建築設計事務所は建築の分野を中心に活動しています。求められる資格、活躍できる資格も違う点に注意しましょう。
建設コンサルタントの仕事内容
建設コンサルタントは、以下に示す建設事業における一連の流れのうち、1~3、および5の仕事に対応します。
- 計画
- 調査(測量や地質など)
- 設計
- 施工
- 維持管理
例えば、一部エリアの都市計画業務を受注した場合には、都市計画の基本設計を実施します。また、測量などの事前準備がなされていない設計業務の場合は、調査を巻き込んだ設計業務に対応するのが一般的です。(調査済みであれば調査は省略される場合もあり)
また近年では、ゼネコンなどが施工した構造物について、点検や補修、補強業務などを受注して、構造物の長寿命化対策を実施することも増えてきました。場合によっては、自治体が管理する市や町全体の構造物について、どの構造物を優先して維持管理すべきか優先順位を決めるなど、計画検討の業務を発注される場合もあります。
設計業務だけが建設コンサルタントの仕事ではないのはもちろん、担当する設計分野も多岐にわたるため、担当する業務ごとの専門知識が必要になると覚えておきましょう。
建設コンサルタントが身につけるべき知識やスキル
建設コンサルタントとして働くためには、コンサルティングに欠かせない知識やスキルを身につけることが重要です。具体例を挙げながら、入社後に身につけたいポイントを整理しました。
CAD・BIM/CIMの操作スキル
建設コンサルタントのほとんどすべての業務では、設計図を作成します。そのため、成果品として求められるCAD図面の作成はもちろん、BIM/CIMのワークフローを活用したBIM/CIMモデルの制作スキルを身につけることが欠かせません。
企業によって導入しているCADソフト、BIM/CIMソフトが異なりますが、基本的な使い方は同じです。入社後すぐに使うように指示されやすい要素ですので、できる限り入社後の早い段階で操作を覚えておくのがよいでしょう。
示方書やマニュアルの知識
建設コンサルタントは、成果品として提出する設計資料を作成しなければなりません。このとき、設計資料をつくる際の基礎となるのが、国や自治体、研究機関から発行されている示方書やマニュアルを理解することです。
一例ですが「第3種第5級の道路の幅員は4m(やむを得ない場合は3m)とする」など、示方書やマニュアルには、細かな条件が示されています。示方書やマニュアルに基づかない設計は成果品として受領してもらえないため、社内に用意してある書類などを読み込み、内容を理解することが欠かせません。
計算スキル
建設コンサルタントの設計業務では、最終的に完成した図面の数量を拾い出し、概算工事費としてまとめなければなりません。このとき必要となるのが、数量計算書をまとめるための計算スキル、そして概算工事費を計算するための単価情報の収集です。
なかでも単価情報は、国内の情勢に合わせて頻繁に数値が変化します。「建設物価」「土木工事標準単価」などの書籍が必要なことはもちろん、場合によっては自治体ごとに単価ルールが決められている場合もある点に注意しつつ、計算をしなければなりません。
建設コンサルタントの平均年収
厚生労働省が公開している就職情報提供サイト「jobtag」によると、建設コンサルタントの年齢別における平均年収は次の通りです。
年齢層 | 平均年収 |
19歳以下 | 約276万円 |
20~24歳 | 約400万円 |
25~29歳 | 約506万円 |
30~34歳 | 約606万円 |
35~39歳 | 約635万円 |
40~44歳 | 約612万円 |
45~49歳 | 約661万円 |
50~54歳 | 約721万円 |
55~59歳 | 約709万円 |
出典:厚生労働省「jobtag」
建設コンサルタントは、年齢とともに昇給しやすいのが特徴です。また、国税庁が公開している「平均給与」では、全業種における平均年収が461万円(全年齢)と算出されています。建設コンサルタントならではの特徴として、残業時間が多い点もありますが、平均年収が相場よりも高めであるのが魅力です。
建設コンサルタントの必要資格
建設コンサルタントは無資格でも入社できますが、メインで活躍したい場合には次の資格を取得する必要があります。
技術士は、建設コンサルタントにおける最上位の資格です。特定の業務を受注する際の管理技術者、照査技術者として名前を出すためには技術士の資格が必要になります。また、技術士の代わりとして利用できるのがRCCMという資格です。一部の設計業務を除けば、RCCMという資格でも仕事の受注が可能となります。
なお、技術士の合格率は5〜10%程度と高難易度です。また、RCCMについては25~50%と業種によって難易度に幅があると覚えておきましょう。
まとめ
建設コンサルタントは土木系の事業における設計業務を中心に、計画・調査・維持管理などにも携わる仕事です。
また業務のなかでは図面作成のスキルはもちろん、法律・示方書・マニュアルに定められるルールを守りながら設計資料を作成することを求められます。ほかにも計算スキル、プレゼンテーション能力などがあると働きやすい業種ですので、設計業務に興味がある方は、建設コンサルタントにチャレンジするのがおすすめです。