ビルメンテナンス仕事内容はきつい?おすすめ資格を難易度別・順番に紹介

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著者:小日向

トレンドワード:ビルメンテナンス

「ビルメンテナンス」についてピックアップします。「仕事内容がきつい」という声も聞かれる中で、具体的な業務内容や求められる資格等についてご紹介します。ロボットやAIを導入した最新DX技術についても、チェックしておきましょう。

ビルメンテナンスとは

㈳全国ビルメンテナンス協会によると、ビルメンテナンスとは建物内の環境衛生・安全・省エネなどを、総合的な視野から専門的に管理していく社会に必要不可欠な職業」とされています。具体的にはビルの清掃、設備管理、修繕、リフォーム、保安警備、ビルマネジメントなど多岐に渡る業務のことを指します。

ビルメンテナンスは建物の快適さに影響を与えるため、利用者やテナントの満足度に直結します。また定期点検や計画的なメンテナンスは、建物の老朽化を遅らせるために不可欠です。

さらに近年では、IoTやDXを活用した設備管理も進められています。デジタル技術を用いて適切なメンテナンスを行うことで、長期的なコスト削減にもつながります。

【参考】㈳全国ビルメンテナンス協会

ビルメンテナンスの仕事内容①日常業務

ここでは、ビルメンテナンスの「日常業務」に関する主な仕事内容についてご紹介します。

設備管理

ビル内の各種設備が正常に稼働するよう、点検・保守・修理を行います。具体的な作業内容としては、下記の項目が挙げられます。

  • 空調設備:エアコンや換気システムの運転状況確認、フィルター清掃、故障対応
  • 給排水設備:水漏れ点検、配管の詰まり解消、貯水槽の水質管理
  • 電気設備:照明やコンセントの動作確認、ブレーカー点検、配線修理
  • エレベーター設備:定期的な点検や異常時の緊急対応

清掃管理

建物の美観を保ち、利用者が快適に過ごせる環境を維持するための業務です。日常的に行うフロアや廊下、トイレ、エントランスの掃き掃除や拭き掃除の他、ワックスがけ、窓ガラス清掃、カーペットクリーニングといった定期清掃も含まれます。

環境衛生管理

ビルの利用者が健康的に過ごせるよう、衛生環境を維持する業務です。具体的には下記の項目が挙げられ、特に「建築物環境衛生管理技術者(ビル管)」の資格を持つスタッフが行うことが多いです。

  • 空気環境測定:温湿度、二酸化炭素濃度、浮遊粉じんなどを測定し、快適な室内環境を保つ
  • 水質管理:貯水槽や給排水設備の水質検査、清掃作業
  • 害虫駆除:ネズミやゴキブリなどの防除対策
  • ゴミの分別・処理:廃棄物管理を通じて衛生的な環境を維持

セキュリティ・警備

建物の安全を守るための業務で、防犯や災害時の対応が含まれます。主な内容は下記の通りです。

  • 防犯設備の管理:防犯カメラセキュリティシステムの監視
  • 巡回警備:定期的な建物内外の巡回で不審者や異常を確認
  • 緊急対応:火災や地震など災害時の避難誘導や初期対応
  • 施錠確認:夜間や閉館後の鍵の管理

電力エネルギー管理

建物のエネルギー消費を効率的に管理し、省エネ対策を行います。最近ではビル全体をセンサーで管理しているケースも多く、ビルメンテナンスに活かされています。

  • 電力量の監視:エネルギー管理システム(BEMS)を活用し、消費状況を可視化
  • 設備の省エネ運用:空調や照明の稼働時間を調整し、無駄な消費を削減
  • 再生可能エネルギーの利用促進:ソーラーパネルや省エネ設備の導入サポート
  • 定期点検:電気設備の老朽化や異常を未然に防ぐ

ビルメンテナンスの仕事内容②突発的業務

ここでは、ビルメンテナンスの「突発的業務」に関する主な仕事内容についてご紹介します。

修繕・改修工事

建物や設備の故障・老朽化に対する修理や、利用者のニーズに応じた改修を行います。ドアの修理といった小規模な修繕作業であれば、ビルメンテナンスの一環として行うことが多いです。

一方で屋上や外壁のひび割れ補修、エレベーターの更新工事といった大規模な内容の場合は、専門業者に依頼して立ち会う等の業務が発生します。

トラブル対応

建物や設備の突発的な不具合・トラブルが起こった場合には迅速に対応し、利用者への影響を最小限に抑えます。具体的には停電時の発電機起動や照明復旧作業、テナントや住人からの苦情対応といった内容が挙げられます。

日常業務と比べて難易度が高い場合が多く、経験や専門知識を活かす機会でもあります。トラブルには迅速かつ適切な対応が求められるため、経験や判断力が重要です。

ビルメンテナンスの仕事内容はきつい?楽すぎ?

ビルメンテナンスの仕事内容については「きつい」「楽すぎ」という両方の声があります。ここでは、それぞれの理由について整理しておきます。これから就職や転職を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

ビルメンテナンスが「きつい」と言われる理由・デメリット

ビルメンテナンスがきついと言われる主なデメリットには、下記の点が挙げられます。

  • 突発的なトラブル対応が多い
  • 体力を使う業務がある
  • 専門知識やスキルが求められる
  • シフト勤務や夜勤がある場合も

 設備の故障や災害時には、深夜や休日でも緊急対応が求められることがあります。その際には短時間で解決しなければならず、プレッシャーが大きいです。

また清掃作業や設備点検の際、長時間歩き回ったり、重い工具を持つ場面が多いです。高所作業や狭い場所での点検もあり、体力や忍耐力が必要です。

その他にも難易度の高い専門資格の取得が必要であったり、24時間対応が必要な施設では夜勤が含まれたりする点もきついと感じられやすいです。

ビルメンテナンスが「楽すぎ」と言われる理由・メリット

一方でビルメンテナンスが「楽すぎ」と言われるメリットとしては、下記の点が挙げられます。

  • ルーティンワークが多い
  • スキルが身に付くと対応が容易
  • 比較的安定した環境

ビルメンテナンスの日常業務はスケジュールが決まっており、突発的な事態がなければ比較的安定した業務内容です。そのため特定の作業をコツコツ進めることが得意な人にとっては、楽に感じることもあります。

特に大型設備の管理が中心の現場では、デスクワークや監視業務がメインになることもあります。経験を積んで知識や技術が身に付くと、突発的なトラブルにもスムーズに対応できるようになります。

直接的なノルマや売上目標がないため、ストレスが少ないと感じる人もいます。定時で帰れる日が多い現場もあり、特にワークライフバランスを重視しやすいという点から、女性の採用事例も目立つようになっています。

ビルメンテナンスに必要な資格|取得難易度を整理

ここでは、㈳全国ビルメンテナンス協会で紹介されている資格についてご紹介します。具体的な取得難易度は、下記の通りです。

難易度合格条件
難易度1講習会の受講+試験(受講要件なし)
難易度2講習会の受講+試験(受講要件あり)または、合格率100~75%
難易度3合格率74~50%
難易度4合格率49~25%
難易度5合格率24%~

【参考】㈳全国ビルメンテナンス協会|ビルメンテナンス業のご紹介

ビルメンテナンスに必要な資格①取得難易度:低

ここでは、ビルメンテナンスに必要な「取得難易度が比較的低い資格」についてご紹介します。特に「危険物取扱者(乙種第4類)・第二種電気工事士・二級ボイラー技士・第三種冷凍機械は「ビルメン4点セット」と呼ばれることも多く、取得が推奨されています。

本記事では、ビルメンテナンス業務において「取得優先度の高い順番」でまとめています。

危険物取扱者(乙種第4類)|取得難易度3

出典:㈶消防試験研究センター,危険物取扱者試験,https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/,参照日2025.1.7

危険物取扱者(乙種第4類)は、消防法で定められた危険物の取り扱いや管理を行うための国家資格の一つです。引火性液体に分類される危険物の取り扱いや貯蔵が可能になります。

【参考】㈶消防試験研究センター|危険物取扱者試験

第二種電気工事士|取得難易度データなし

第二種電気工事士は電気設備の工事や保守・点検を行うために必要な国家資格で、電気工事士法に基づいて定められています。資格取得により、一般住宅や小規模な商業施設などで使用される600V以下の電気設備に関する工事を行えます。

【参考】㈶電気技術者試験センター|第二種電気工事士

二級ボイラー技士|取得難易度3

二級ボイラー技士は、ボイラー設備を安全かつ適切に運転・管理するための国家資格です。労働安全衛生法に基づき、一定規模以上のボイラーを運転する際に必要となります。

主に小規模から中規模のボイラーを取り扱うことが可能で、工場やビル管理、温浴施設など、さまざまな施設で活躍しています。一般に設置されている製造設備あるいは暖冷房、給湯用のエネルギー源としてのボイラーを取り扱う重要な役割を担います。

【参考】㈶安全衛生技術試験協会|二級ボイラー技士

第三種冷凍機械責任者|取得難易度データなし

第三種冷凍機械責任者は、冷凍機を安全かつ適切に運転管理するために必要な国家資格です。1日の冷凍能力が100t未満の製造施設において、設備の保守・管理が可能になります。

冷凍設備を管理するための基礎資格であり、食品工場や物流施設など多くの場で活躍できます。冷凍設備に関する知識を深めるとともに、安定した需要がある分野でキャリアを築けるため非常に有用な資格です。

【参考】高圧ガス保安協会|高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍)

消防設備士乙種|取得難易度3

消防設備士 乙種は、消防設備を設置・点検・整備するための国家資格です。消防法に基づき消防設備の運用を担当する技術者に必要な資格であり、建物や施設の安全管理に欠かせません。

消火器や火災報知器、スプリンクラーなどの消防設備に関する基本的な知識を身につけることで、専門的な業務に役立ちます。需要が高くキャリアアップの可能性もあるため、将来的な仕事の選択肢を広げるためにもおすすめの資格です。

【参考】㈶消防試験研究センター|消防設備士試験

ビルメンテナンスに必要な資格②取得難易度:高

ここでは、「ビルメン3種の神器」と呼ばれる取得難易度の高い資格についてご紹介します。どの資格も難易度が高いものの、キャリアアップや転職の際に有利に働きます。

建築物環境衛生管理技術者|取得難易度5

建築物環境衛生管理技術者は、ビルや施設の衛生環境を維持・管理するために必要な国家資格です。空調、換気、衛生設備(給排水設備)、消防設備などの点検・管理を行う技術者に与えられるもので、特にオフィスビル、商業施設、病院、学校などの管理において重要な役割を果たします。

取得難易度は高いですが、安定した需要とキャリアアップのチャンスがあります。資格を取得することで建物の安全性や快適さを保つ重要な役割を担い、法的義務を果たす技術者としての専門性を持つことが可能です。

【参考】㈶日本建築衛生管理教育センター|建築物環境衛生管理技術者 試験

第三種電気主任技術者|取得難易度5

第三種電気主任技術者は電気設備の運転・管理を行うために必要な国家資格で、特に低圧・中圧の電気設備に関わる業務を担当する専門技術者です。具体的には「電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)」を取り扱えます。

主に電気設備の運用・保守・管理を行い、安全で安定的な電気供給を確保する役割を担います。企業や工場、商業施設などでの電気管理業務に不可欠であり、法令によって資格保有者が必要とされています。

【参考】㈶電気技術者試験センター|第三種電気主任技術者

エネルギー管理士(エネ管)|取得難易度4

エネルギー管理士は、工場や事業所などでエネルギーの使用状況を監視し、効率的な運用を実現するための専門知識と技能を持つ国家資格です。電気、ガス、熱などのエネルギーを効率的に使用するために、エネルギーの管理や節約、環境への負荷を低減するための提案や実施を行います。

特にエネルギー使用量の削減やコスト削減、そして省エネルギー対策を行うため、企業や公共機関などで非常に重要な役割を果たします。資格取得により、エネルギー管理における知識とスキルを活かしてさまざまな分野で活躍できるチャンスがあります。

【参考】㈶省エネルギーセンター|エネルギー管理士

ビルメンテナンスの最新DX技術|仕事を「楽」に

ここでは、ビルメンテナンス業界で導入が進められている最新DX技術をご紹介します。デジタル技術やロボットの導入により、業務効率化が進められている段階です。

清掃ロボット|アイリスオーヤマ

出典:アイリスオーヤマ,ビルメンテナンス業(オフィス),https://www.irisohyama.co.jp/b2b/robotics/products/cleaningrobot/office/,参照日2025.1.7

アイリスオーヤマでは、ビルメンテナンス向けの清掃ロボットサービス「Whiz i アイリスエディション」を提供しています。かんたん操作で誰でも使いやすい設計になっており、清掃ルートをロボットに覚えさせればボタン一つで自動清掃が可能です。

センサーが搭載されているため、人や障害物にぶつかるリスクが少ないのが特徴です。ビル清掃業では高齢化による人手不足が深刻ですが、ロボットの活用で業務効率化に貢献しています。

警備ロボット|SQ-2

出典:SEQSENSE,ビSEQSENSE,https://www.seqsense.com/,参照日2025.1.7

SEQSENSEは、自律移動型ロボットの開発・製造・サービス提供を行っています。現在は自律移動型警備ロボット「SQ-2」シリーズを中心にサービスを提供しており、2024年にはNECネッツエスアイ本社ビルに採用されました。

具体的には深夜帯の巡回警備や立哨業務、設備点検にSQ-2を活用することで、施設全体の警備員の負担軽減に寄与しています。エレベーターとの連動により、複数フロアにわたる巡回・点検も可能です。NECネッツエスアイ本社ビルでは、年内を目途にエレベーターを使用した夜間のオフィスフロアの巡回・点検を開始する予定です。

まとめ

ビルメンテナンスには多くの業務が含まれ、中には難易度の高い資格取得が求められる場合もあります。「仕事内容がきつい」という声もありますが、ロボットやAIの活用により女性等も含めて柔軟に働ける環境が整備されつつあります。今後のさらなる活用が期待されます。