奥村組ら建設大手9社、高強度鉄筋による新杭工法の設計手法を確立、環境負荷低減とコスト削減を実現へ

奥村組(社長:奥村太加典)を含む建設業大手9社は、場所打ちコンクリート杭の主筋に高強度鉄筋を使用する新技術を共同開発し、一般財団法人ベターリビングから設計手法に関する評定を取得しました。この技術により、建築物の基礎工事における効率性向上と環境負荷低減の両立が可能となります。

従来技術との違い

これまでの場所打ちコンクリート杭では、主筋として降伏点強度490N/mm²以下の鉄筋が使用されてきました。今回開発された技術では、降伏点強度590~685N/mm²の高強度鉄筋を採用することで、必要な鉄筋本数を減らしながら、より高い構造性能を実現できます。

技術開発の背景

場所打ちコンクリート杭は、地盤を掘削した後、特殊な安定液で孔壁を保護しながら鉄筋かごを設置し、コンクリートを打設して造成される基礎構造物です。この杭には、建物の重さを支える役割だけでなく、地震時に発生する水平方向の力に対して抵抗する機能も求められます。

近年の建築物は大規模化が進み、より高い耐震性能が要求されるようになっています。これに対応するため、従来は杭径を大きくするか、鉄筋量を増やすなどの対策が取られてきました。しかし、杭径を大きくすると掘削土量やコンクリート使用量が増加し、環境負荷やコストが増大します。一方、鉄筋量を増やすと、鉄筋が密集して施工性が低下し、コンクリートの充填不良などの品質低下も懸念されていました。

新技術の特徴と利点

本技術の開発では、高強度鉄筋を杭の主筋として使用した場合の構造性能を詳細に検証しました。特に、これまで確立されていなかったパイルキャップ(杭頭部)への定着方法や、鉄筋の重ね継手に関する設計手法を新たに確立しました。

この新技術による主な利点は以下の通りです。

1.鉄筋本数の削減が可能となり、施工性が向上

2.鉄筋の密集度が緩和され、コンクリートの充填性が改善

3.基礎梁の鉄筋との干渉が減少し、施工がスムーズに

4.高強度鉄筋により杭耐力が向上

5.条件によっては杭径の縮小が可能となり、環境負荷とコストを低減

共同開発各社の詳細

本技術の共同開発に参画したのは以下の9社です。

・株式会社奥村組(大阪府大阪市)

・株式会社安藤・間(東京都港区)

・佐藤工業株式会社(東京都中央区)

・鉄建建設株式会社(東京都千代田区)

・東急建設株式会社(東京都渋谷区)

・戸田建設株式会社(東京都中央区)

・西松建設株式会社(東京都港区)

・株式会社長谷工コーポレーション(東京都港区)

・三井住友建設株式会社(東京都中央区)

今後の展開

共同開発に携わった9社は、この新技術を実際の建築プロジェクトに積極的に採用していく方針です。高強度鉄筋を用いた場所打ちコンクリート杭の普及により、建設現場における作業効率の向上、工期の短縮、環境負荷の低減が期待されています。

技術の社会的意義

建設業界では、環境負荷の低減や施工品質の向上、作業効率の改善が重要な課題となっています。本技術は、これらの課題に対する有効な解決策として注目されており、今後の建設工事における基礎工法の新たな選択肢として、幅広い活用が見込まれています。

出典情報

株式会社奥村組リリース,場所打ちコンクリート杭への高強度鉄筋の適用手法を確立~設計手法に関して評定を取得~,https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2024/post-57.html