「暗黙値を視覚化する」3Dバーチャルコラボレーションツールの建設業界での可能性を探る【後編】
目次
「MEs」の建設業界における活用の可能性と魅力
ユーザーの思考(暗黙値)の可視化に特化したバーチャルツール「MEs(ミーズ)」を開発する、O株式会社CEOのa春氏のインタビュー。前編では、MEsの特徴と開発秘話についてa春氏に伺いました。後編では、建設業をはじめとする幅広いビジネス分野でメタバースを展開していく未来について語ります。
「MEs」の建設業界における活用の可能性
-建設業界とMEsはかなり親和性が高いのではと感じますが、今後の活用の可能性についてはいかがでしょうか。
例えば一人の建築家がいたとして、その人の頭の中を多くの人に共有したいときにMEsは非常に便利です。MEsの3D空間の中にWebリンク、YouTube、テキストや画像など様々なデータを入れて、建築家が考えていること(暗黙知)をリアルタイムに可視化してチームに共有できます(共有知)。今まではプロジェクトマネージャーやマーケター・エンジニアが見えなかった領域も、MEsを使うことで共通言語のタッチポイントを増やしながらディスカッションができるようになります。
-なるほど、そうすると建築家の考えをいつでも3D空間でチェックできますし、施工・販促などの各プロセスで建築家の想い・理念・信条が末端まで伝わりますね。
おっしゃる通り、MEsは「暗黙値を視覚化して理解できるツール」ということです。ある企業では、アイデアを整理したり新しいひらめきをチーム内で発信するための思考ツールとしてMEsを使っています。また、日々のミーティングルームの代わりとしている企業もあります。
一般的なミーティングツールでは一人ずつしか画面共有ができず、有機的なコラボレーションの機会が限られてしまいます。MEsならば、みんなが同じ空間に入って同時にプレゼンテーションファイルを開いてコメントし合うなど、ダイナミックかつリアルタイムなディスカッションができます。
イメージとしてはプロジェクターが20個あって、ホワイトボードが無限に使えるような、理想的なプロジェクトルームの中で会議ができるような形です。メンバーが毎日同じオフィスで働いていたとしても、MEsをアイデアの蓄積場所として使っていくことができます。
-プロジェクトに関わる人たちが共有できるデータの幅が広がり、双方向のコミュニケーションが叶いそうですね。同時に資料やメモの保存先としても優れたツールだと感じます。
MEsの3D空間が美術館になる感覚に似ていると思います。従来はフォルダやファイルとしてハードドライブやサーバーで眠っていたものや、それらを一つひとつダウンロードして見る必要はなく、その空間自体がプロジェクトのアーカイブルームになっている。それを簡単に共有できることで、柔軟性と情報濃度の高い情報共有が実現します。
データがどんどんストックしていけば、その組織やチームならではの美術館になっていきます。新しいプロジェクトメンバーが入った際も「今までの事例を見ておいてね」と簡単に共有できます。過去のプロジェクトがなぜ成功したのかや、ここはまだ検討の余地があるなどの思考情報を含めて、メンバーのメモや考えの欠片が一緒に保存されている、メタ情報が保存しやすいところがMEsの非常にユニークなポイントです。
-思考のプロセスや過去の事例を一つの作品としてメンバーに共有できると、人手不足と言われる建設業界の中でも経験者の知恵・勘どころをうまく継承していけそうです。
使ってみるとさらに理解が深まる「MEs」の魅力
-まだまだ3D空間やコラボレーションツールになじみがない方も多い中で、ツールの提案の際にはどんな工夫をしていますか。
当初は資料ベースでミーティングをしていたのですが、本当に必要なのか、またその価値がよくわからないという反応が多かったです。そこが大きく変わったきっかけは、最初のミーティングでデモ体験をするワークショップを提供し始めたことです。MEsは触ってみないとその価値や便利さがわからないものであり、資料では伝えづらい部分も多いので、今はそういう取り組みをしています。
3Dツールはまだ見ること・使うことに慣れてない人たちも多いかもしれません。しかし、一度その良さを感じるとどんどん深めて使いたくなる方も多いので、ぜひその体験を多くの方に伝えていきたいと思います。
-やはり、体験ベースで魅力を訴えていくことが重要なのですね。実際に導入したユーザーの声としては、どのような内容が聞かれますか。
「お互いの暗黙知がツールによって見えるようになった」とか「チームの考えを視覚化できたことで、コミュニケーションの質とプロジェクトの質の両方を高めることができた」という声をいただいています。また、ユーザーの中にはMEsを使うことで集中力が高まったり、作業に集中したフロー状態に入りやすい、その中でコラボレーションすることで新しいものが生まれるという声もありました。
ユーザーフィードバックを反映しつつ、より使いやすく楽しいサービスを目指す
-a春さんがMEsを開発するうえで大切にしている考え方はどのようなものでしょうか。
プロダクトとサービス開発で当社が重視するプロセスは、まず人間がどういう課題を抱えているのかを考えることです。中でも根本的なものとして、「人間の問題解決能力を高めなければならない」という部分は非常に着目しているポイントです。
問題解決能力が高まらない原因は何か、それを高めてくれるものは何か、その力を持つのはどういう人たちでどんな思考を持っているのか。そんなことを分析する中で感じるのは、クリエイティブ思考、自ら考えるゼロイチ思考、そして創造力が共通して足りないということです。「それらを毎日使うツールの中で、自然と高められないか?それを私たちが作れないか?」という発想から生まれたのがMEsです。
-単なる3Dツールという枠を超えて、人間の成長や思考力を磨くためのものとしてMEsがあるということなんですね。今後の事業の展望について、MEsをどのように進化させていきたいと思いますか。
今後はMEsをさらにアップデートさせつつ、様々な企業やクリエイターなどの新しい思考や価値を作っている方々からフィードバックも集めていきたいと考えています。それらのニーズをしっかりとサービスに反映しながら、ますます人々が使って楽しいサービスを作っていきたいと思います。
まとめ – BuildApp 編集部感想 –
「MEsは暗黙知を可視化するためのツール」という言葉が非常に印象に残りました。企業のあらゆるプロジェクト推進においてはもちろん、建設業界にも非常に親和性が高いツールだと感じます。これからのMEsの発展と、幅広い業界への応用が期待されます。
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