竹中工務店が既存建物を活かし環境配慮型の建築手法を実現―神戸で初の取り組み

竹中工務店(佐々木正人社長)は、環境に配慮した新しい建築手法「サーキュラーデザインビルド」を取り入れた初めてのプロジェクトを完成させました。

兵庫県神戸市にある「大阪避雷針工業神戸営業所」では、これまでの建て替えとは異なるアプローチを採用。既存の建物の良さを最大限に活かしながら、新しい機能を効果的に組み込むことで、画期的な建物の再生を実現しています。

環境負荷を大幅に削減した改修工事

この改修工事では、建物の不要な部分を取り除く「減築」と、新しい部分を付け加える「増築」を組み合わせることで、既存の建物を効果的に活用しています。

環境に優しい建材を積極的に使用し、木材の活用や二酸化炭素排出量の少ない電炉鋼材、特殊なコンクリート(ECMコンクリート®)を採用したことにより、新しく建て直した場合と比べて、建設時の二酸化炭素排出量を約70%も削減することができました。

建物の断熱性能も大幅に向上

外壁や窓などの断熱性能を高める改修工事により、建物の省エネルギー性能は大きく向上しました。竹中工務店の評価によると、建物の外皮性能指標(BEI)は0.40となり、建築物の環境性能評価システム(CASBEE)でも最高ランクのSランク相当を達成しています。

なぜ建て替えではなく改修を選んだのか

当初、この建物は取り壊して新しく建て直す予定でした。しかし、1989年に建てられた既存の建物を詳しく調査したところ、建物の骨組みがしっかりとしており、外壁タイルの傷みも軽微だということがわかりました。
そのため、建物を完全に取り壊すのではなく、必要な部分は残しながら改修する方法が選ばれました。

技術的な工夫と環境への配慮

築35年の建物ですが、調査の結果、今後70年以上使用できる耐久性があることが確認されました。工事では、増築する部分と減築する部分の位置や重さを細かく計算することで、既存の建物に余分な補強工事をすることなく、新しい空間を作り出すことに成功しました。

地域の資源を活かした取り組み

敷地内にあったクスノキは、伐採せざるを得ませんでしたが、神戸の木材活用事業者であるSHARE WOODS(山崎正夫代表)と協力して、建物内で使用するテーブルや手すりとして生まれ変わりました。さらに、木材を加工した際に出たおがくずは、3Dプリンターを使って植木鉢として再利用されています。また、以前使用していた照明器具や家具もリメイクして活用することで、資源を大切に使う工夫をしています。

将来を見据えた設計

建物の所有者が自分で修理や改造ができるように工夫もされています。新しく付け加えた部分の木材や内装材、外装材は、将来取り外しやすいように、ボルトやねじを見える形で取り付けています。

今後の展望

竹中工務店は、「サーキュラーデザインビルド」という考え方に基づいて、これからも環境に配慮した建築活動を進めていく方針です。この考え方は、以下の3つの方策から成り立っています。

1.「つくる」:建設時に出る廃棄物を極力減らす
2.「つかう」:建物と建材を長く使い続ける
3.「つなぐ」:地域の資源を循環させ、次の世代に引き継ぐ

この神戸営業所の改修プロジェクトは、建物を長く使い続けることで環境負荷を減らし、循環型社会の実現に貢献する新しい試みとなっています。既存の建物を活かしながら新しい機能を付け加えるという方法は、これからの建築のあり方を示す良い例となることでしょう。

建物の基本情報

・建築主:大阪避雷針工業株式会社(代表取締役:山下充周)
・建設地:神戸市兵庫区
・敷地面積:660.87平方メートル
・建築面積:297.14平方メートル(改修前は235.75平方メートル)
・延床面積:471.59平方メートル(改修前は857.86平方メートル)
・階数:地上2階(改修前は地上4階)
・構造:既存部分は鉄筋コンクリート造、増築部分は鉄骨造と木造の組み合わせ

出典情報

出典:株式会社竹中工務店リリース情報,減築と増築で既存躯体を活用した「大阪避雷針工業神戸営業所」が竣工~サーキュラーデザインビルド®初のプロジェクト~,https://www.takenaka.co.jp/news/2024/10/02/