木材利用の現状とは。推進される3つの理由と事例を解説

近年、カーボンニュートラルの実現や省エネルギーを意識した建物が注目を集めています。また、森林循環や脱炭素社会という観点から木材利用も進んでいる状況です。

木材は、環境問題に対応できることに加え、地域経済の活性化に大きく貢献することができます。本記事では、木材の利用が推進される3つの理由と地方自治体の取り組み事例についてみていきましょう。

「トレンドワード:木材利用」

木材利用とは、森林から採取された木材を住宅建築やインテリア、家具などに利用することを意味します。近年では、環境問題が深刻化する中で、持続可能な資源としての木材の価値が再認識され、再生可能な素材としての日本では政府が利用を推進している状況です。

建築物に関しても、他の素材と比較して、施工から解体までの二炭素酸化の排出量が少なく、カーボンニュートラルへの貢献も期待されています。また、木材は断熱性や耐久性にも優れているため、素材としても評価されているといえるでしょう。

適切に管理された森林から伐採された木材は、再生可能な資源として循環的に利用できるため、環境負荷が少ない点が特徴です。木材は加工が容易であり、コンクリートや鉄鋼と比較して軽量だといえます。

また、十分な強度があるため、木材利用促進法で公共の建築物は、基本的に木造建築とすることが義務化されています。

木材利用が推進される3つの理由

ここでは、木材利用が推進される3つの理由についてみていきましょう。環境に配慮した建築物の施工では、木材を利用されることが多く、ZEH・ZEBでも木材が使用されるケースが増加しています。

1. 環境負荷を軽減する必要がある

建築物省エネ法も含めて、日本では、環境負荷を考慮した建物作りが義務化されつつあります。実際に温室効果ガスの総量を見てみると、2022年度の場合は、日本全体で約10億8,500万トンのCO2排出量があり、15%程度は各家庭によるものとなっています。一度建築した建物は、長期間使用されるため、環境に配慮した住宅・建物作りが求められている状況だといえるでしょう。

また、木材は加工過程のエネルギー消費が少なく、鉄やコンクリートと比べた場合、環境負荷が低いため、政府としても木材利用を促進している状況にあります。

2. 建物の施工時時のエネルギーを抑えたい

木造建築は、軽量であることに加え、容易に加工できます。そのため、建設工程においても、エネルギー消費を抑えることが可能です。木造と比較した場合、鉄骨造は2倍、鉄筋コンクリートは約2.5倍のCO2排出量となります。

木材に関しては、プレハブ工法やCLT(直交集成板)といった工法も開発されているため、ビルや3階以上の建物でも使用できるようになった点も大きな変化です。断熱性にも優れているため、建物のエネルギー効率を向上させられます。総じて、建築物のエネルギーコストを下げるために木材が活用されているといえるでしょう。

3.  公共建築物での木材利用の義務化

木材利用促進法によって、公共建築物の建物については、木造化建築を基本とすることになっています。木材の需要拡大を促し、地域の森林産業の活性化や適切な森林管理が各地域で実施されやすくなることに加え、カーボンニュートラルの実現手段の1つとして施行されています。

木材に関しては「地域材」の使用が推奨されており、地方公共団体と事業者等が建築物木材利用促進協定を結べるようになりました。そのため、地域の森林資源が有効に活用される環境も整いつつあります。

木材自給率と木材供給量の現状

日本国内の木材自給率は、2018年以降は32%以上36%以下となっており、供給量は61,000立方メートルから73,500立方メートル以下です。主伐期にある人工林の年間成長量が年間で、約4,800万立方メートルであることを考えると、木材の供給力が低い状況にあるといえます。

今後、木材利用促進法や各自治体の協定も含めて次のような対策が取られていくと予想されます。

  • 放置林の適切な管理(管理団体がいない場合、設置し管理できる体制を作る)
  • 建設業における木材利用のコスト助成(輸入材よりも高額となるケースがあるため、国内の木材を利用する場合、補助金などによって建材となるフローの確立や導入事例の増加を図る)
  • 林業の待遇改善(入職者の増加や手作業の軽減・DX化を政策として進める)

ただし、個別の企業がどうにかできる対策は少なく、制限が掛かっている地域も多い状況です。そのため、木材自給率と供給量を底上げするためには、各地方自治体と企業が力をあわせる必要があるでしょう。

地方自治体における木材利用の事例

ここでは、木材利用の事例についてみていきましょう。現状では、地方自治体による木材利用の取り組みが多いものの、今後は民間企業との連携も増加していくと予想されます。

長野県

長野県では、根羽村森林組合と県内の工務店約70社で構成される「長野WB工法友の会」が「建築物木材利用促進協定」を締結しました。現在は年間200立方メートルほどの利用量である県の木材を5年後には、1,000立方メートルにすることを目指します。

森林の主伐から造林などの管理を徹底し、循環利用を今後より促していく予定です。

福島県

福島県では、次のような建設プロジェクトで県産木材を活用しています。

  • 幼稚園の増築園舎-県産木材を建物の構造材や仕上げ材などを隠すためにそのまま見せる現しとして、使用した。
  • 鉄骨の躯体に対してカラマツの耐火被覆を行う庁舎の建設も実施。内外装飾にも県民材を活用した

愛知県

愛知県では次のような建設プロジェクトで、木材を活用しています。

  • 5階建ての社屋-カラマツの集成材の中にH型鋼を内臓した「木質ハイブリッド集成材」をガラスで挟み込み、外観に使用した。
  • 信用金庫ー外観部分で木材を格子状に組み合わせて外壁を覆った。天井の仕上げ材にも木材が使用されている。

まとめ

木材利用が推進される理由は、カーボンニュートラルやエネルギー削減といった環境問題への対応が強く求められているためです。また、地方経済の活性化にもつながるため、

政府や地方自治体は木材利用の促進に力を入れている状況です。

また、多くの地方自治体では、地域の森林資源を有効活用するための事例が増加しつつあります。今後も官民一体での取り組みがさらに増加し​​ていくでしょう。