スモールコンセッションとは何か?建設業に与える影響を考察

スモールコンセッションは、建設業界における新しいビジネスモデルとして注目されています。地方自治体が抱えているインフラや施設の維持といった課題に、対応できるようになるため、双方にとってメリットのある施策だといえます。

本記事では、スモールコンセッションの概要や建設業界に与える影響についてみていきましょう。

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スモールコンセッションとは、小規模な公共インフラや建設プロジェクト(空き施設など)において、民間企業が建設から運営、維持管理を請け負う契約方式です。現状では、地方自治体や小規模な建設プロジェクトで導入が進んでいます。

スモールコンセッションと大型コンセッションとの違いは次のようになります。

  • プロジェクトの規模:大型コンセッションは、大規模なインフラプロジェクトや国家的規模の公共事業を対象とする。対して、スモールコンセッションは、学校や公共交通、地域インフラといった、比較的小規模で地域密着型のプロジェクトを対象としている。
  • 資金調達の規模とリスク分担:大型コンセッションでは、プロジェクトの資金調達が大規模・複雑であるため、リスクも高い。対して、スモールコンセッションでは、プロジェクトの規模が小さいため、資金調達が容易で、リスクも低減しやすい。そのうえで、民間企業が資金を投入し、プロジェクトの運営・維持管理を行う責任がある

また、大型コンセッションでは、契約期間が20〜30年を超えるケースも珍しくありません。対して、スモールコンセッションの場合は短期間の契約が多く、運営期間も限定的です。運営形態も柔軟であり、中小企業が参画しやすいといえるでしょう。

建設業にスモールコンセッションが与える影響

ここでは、スモールコンセッションが建設業界に与える影響について、みていきましょう。前提として、地方自治体では、人口や税収減少が進んでいるため、インフラ整備や公共サービスの維持管理にかかるコストを賄うための予算が不足しています。

地方自治体と民間企業の連携が期待できる

スモールコンセッションによって、地方自治体のインフラや設備が維持しやすくなります。その理由としては、民間企業がプロジェクトに必要な資金を調達し、プロジェクトの設計・建設・運営・維持管理を担当できるためです。

そのため、地方自治体は財政的なリスクを軽減したうえで、民間の技術力と企業力を活用できます。民間企業は、競争市場で生き残ることを目的に、常に技術を追求しています。

たとえば、新しい建設技術やエネルギー効率の高い設備、デジタル技術を活用したスマートインフラなどは代表的な技術だといえるでしょう。地方自治体がスモールコンセッションを通じて民間企業と連携すれば、最先端技術を導入したうえで、インフラや設備の効率化を図ることが可能です。結果として、運営コストの削減やインフラの耐久性向上、メンテナンスの効率化を実現できるでしょう。

建設業界のコスト管理の緩和に期待できる

建設業界は、公共工事においても、次のような要因から厳格なコスト管理が求められています。

  • 資材費の高騰:世界的な需要増加やサプライチェーンの混乱、原材料価格の上昇が資材費の高騰につながっている。そのため、建設工事のコストが増加しており、企業の利益率が下がっている
  • 人件費の上昇:技術者や労働者の不足、労働条件の改善が求められている。また、高度な技術が求められる分野では、経験豊富な労働者を確保するためのコストが高額である点もコスト増加の原因となっている。
  • 規制の強化:環境規制はコスト増加につながっている。たとえば、環境に配慮した建設材料の使用や設備の研究はコスト増加といえる。

そのうえで、スモールコンセッションの活用によって、効率的な資源管理やコスト削減が可能となります。たとえば、民間企業が持つ効率的なプロジェクトマネジメント技術や最新の建設技術を駆使して、資材や労働コストを最適化できるためです。

また、プロジェクトの採算性が取りやすくなるため、プロジェクトのシミュレーションもこれまで以上にスムーズに実施できるようになるでしょう。

小規模プロジェクトの需要増加に対応できる

人口減少によって、地方都市では大規模インフラの需要が減少し、小規模なプロジェクトが増加しています。たとえば、コミュニティセンターの改修や地域交通の整備、小学校のリニューアルといったプロジェクトが増加傾向にあります。

そのうえで、スモールコンセッションを導入した場合は、予算に合わせた効率的な工事の進行や雇用創出も可能です。結果として、地方自治体の活性化につながるといえるでしょう。

建設業におけるスモールコンセッションの成功事例

スモールコンセッションは、建設業界での導入が進んでいます。ここではいくつかの成功事例についてみていきましょう。

地方の公共施設リノベーション事例

ある地方自治体が管理する公共施設では、老朽化が進み、利用者からの不満が高まっていました。しかし、限られた予算の中で大規模なリノベーションを行うことが困難であり、工事が長引くことで住民に対するサービス低下も懸念されている状況でした。

そのため、スモールコンセッションを導入し、民間企業にリノベーションプロジェクトの設計から施工、運営までを委託しています。民間企業がノウハウや資金力を持っていたため、資金調達や最新のリノベーション技術を活用して、工事が成功しました。

結果として、当初よりもコストを削減でき、予定より短期間で完成しています。また、リノベーション後の施設は利用者の満足度が向上し、地域コミュニティの中心的な役割を果たせるようになりました。

地域交通インフラプロジェクトの成功例

ある地方自治体では、公共交通インフラの老朽化や利用者の減少による運営コストの増加が深刻な問題となってる状況でした。とくに、今後インフラの更新や維持が十分に行えず、安全性の低下や交通の便が悪化するリスクを抱えていました。

そこで、地域交通インフラの再構築を民間企業と協力して、スモールコンセッションを導入しています。このプロジェクトでは、民間企業が資金を調達し、設計から施工、完成後の維持管理までを一貫して担当しました。

また、地方自治体と話し合いながら、交通インフラの再配置を行い、道路の幅員を拡大するといった安全性と効率性の向上を図っています。結果として、地域交通インフラの運営コストの削減、利用者満足度にもつながりました。交通の利便性が向上し、住民の移動が活発化したことで地域経済も活性化しています。

まとめ

建設業界におけるスモールコンセッションの導入は、コスト削減や工期短縮、利用者の満足度向上といった多くのメリットを得られます。とくに、地方自治体が限られた予算の中で質の高い公共サービスを提供するための手段として、スモールコンセッションが今後重要な役割を果たす可能性があります。

今後、スモールコンセッションが地方自治体の中でも注目されていくため、建設業としても動向を見守っておきましょう。