スターリンク(Starlink)とは?簡単に解説|メリット・デメリットやゼネコン活用事例
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「スターリンク(Starlink)」についてピックアップします。イーロンマスク氏によるスペースx社が開発する次世代衛星インターネットサービスで、従来とは違い地上のインフラ整備がほぼ不要な点が注目されています。本記事では、スターリンクのメリット・デメリットやゼネコンでの活用事例についてご紹介します。
スターリンク(Starlink)とは|仕組みを簡単に解説
スターリンク(Starlink)とは、低軌道衛星を介して提供されているブロードバンドインターネットサービスのことを指します。数千台の低軌道周回衛星によって構築されており、従来の衛星通信サービスに比べて大幅に高速・低遅延のデータ通信を実現しているのが特徴です。
従来のインターネットでは、光回線網や基地局といったインフラを整備する必要がありました。しかしスターリンクであれば地上の工事は不要で、アンテナのみで利用できるという違いがあります。
高度約550kmを飛ぶ非静止衛星を用いることで、エリア・環境に左右されない高速でのインターネット通信が可能になっています。
イーロンマスク氏によるスペースx社が開発
スターリンクは、イーロンマスク氏によるスペースx社が手掛けているサービスです。宇宙船と軌道上運用の両分野における豊富な経験と、最先端の衛星とユーザーハードウェアを組み合わせて、世界中のユーザーに高速・低遅延のインターネットを提供しています。
スターリンク(Starlink)の概要
①速度
スターリンクの公称の回線速度は、日本全域で「下り速度150Mbps、上り速度25Mbps以上」です。これは、一般的な通信よりも高速な環境となっています。
②料金
スターリンクの主な料金は、下表のようになっています。
プラン | 料金 |
---|---|
標準 | ¥6,600/月 |
プライオリティ | ¥9,600~56,000/月 |
モバイル | ¥9,900/月 |
モバイルプライオリティ | ¥33,408~¥668,160/月 |
固定された場所で利用する場合には比較的リーズナブルですが、海上などでモバイル利用する場合には料金が上がります。
スターリンク(Starlink)のメリット
ここでは、スターリンクの主なメリットについてご紹介します。
高速低遅延の通信
従来の衛星インターネットは通信に数万キロメートル離れた静止軌道衛星を使用するため、遅延が大きいのが課題でした。一方、スターリンクの衛星は地表から約550kmと非常に低い軌道に配置されているため伝送距離が短く、遅延が大幅に減少します。
高速低遅延の通信により、オンラインゲーム、ビデオ会議、ストリーミングなど、リアルタイム性が求められる場合でも快適に利用できるのが大きなメリットです。
山間部・海上でも通信可能
従来のインターネットサービスは地上のインフラ(光ファイバーや基地局など)に依存しているため、山間部や離島、海上といった場所では接続が困難でした。しかしスターリンクは地上のインフラに依存せず、地球全体を覆う衛星ネットワークを通じてインターネット接続を提供します。
これにより、山岳地帯や海上のような通常のインフラが届かない場所でも、安定したインターネット接続が可能となります。通信環境が不安定な地域での利用や、船舶やキャンプ、アウトドアでの活動中にも、途切れのないインターネットアクセスを提供できる点がメリットです。
災害時の対応力が高い
従来の通信インフラだと、地震や台風、洪水などの自然災害によって損傷を受けると通信の途絶や障害が発生するリスクがあります。光ファイバーや通信基地局が破壊された場合、インターネットや電話が利用できなくなり、救援活動や情報収集が大きく妨げられることも多いです。
しかしスターリンクは地上の通信インフラに依存しないため、地上設備が損傷を受けても、衛星を通じて通信を維持できます。これにより災害時にも迅速にインターネット接続を確保でき、迅速な復旧や救援活動に貢献します。
面倒な工事が不要
従来のインターネット接続では光ファイバーの敷設や配線工事が必要であり、多くの時間とコストが掛かるのがデメリットでした。また建物内での配線や設置場所の確保も手間がかかり、手続きや調整が必要になることも少なくありません。
一方、スターリンクでは専用のアンテナを設置し、それを電源とルーターに接続するだけでインターネットが利用可能です。このアンテナは自動的に最適な衛星を追跡し、地球低軌道衛星との通信を確立するため、複雑な設定や工事は不要です。
スターリンク(Starlink)のデメリット・課題
スターリンクは新しい技術なので、まだまだデメリットや課題が残っています。
遮蔽物に弱い
スターリンクでは、衛星との通信を確立するためにアンテナを使用します。そのため、一定の範囲内での障害物のない視界が必要です。適切な環境を整えるためには、設置位置の調整や、遮蔽物を取り除くための追加作業が求められることもあります。
遮蔽物の有無はスターリンクの設置や利用において考慮すべき重要な要素であり、特に都市部や周囲に障害物が多い地域では、通信品質の確保が難しくなることがあります。
料金が高い
スターリンクのサービスを利用するためには、専用のアンテナやルーターを購入する必要があります。また月額料金は、従来の地上インフラによるインターネットサービスと比べて高めに設定されています。
これには、衛星ネットワークの運用や維持にかかるコスト、地球低軌道にある衛星の数や技術的なコストが影響しています。まだ新しい技術であり、広範な衛星ネットワークを維持するためのコストが高いため、そのコストがサービス料金に転嫁されていると考えられます。
スターリンク(Starlink)の活用事例
ここでは、スターリンクが実際に活用されている事例についてご紹介します。ゼネコンでは山間部等での工事も多く行われており、DX化に伴って快適なインターネット環境整備のニーズが高まっているのです。
大林組
大林組では、「Starlink Business」を導入しています。実際に、2022年に青森県深浦町で行われた「グリーンパワー深浦風力発電事業」において、通信手段として活用されました。
こちらは携帯電波が入りにくい山間部で、外部へ連絡するには電波の入る場所まで山道を2kmも移動する必要がある現場でした。しかし「Starlink Business」は衛星アンテナを設置・設定するだけですぐに利用でき、クラウドやウェブカメラを存分に活用できました。
大林組では、今後も「Starlink Business」の活用を全社的に進めていく予定です。
清水建設
清水建設では、スターリンクを活用したauの通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」をトンネル坑内で導入しました。これにより、4G LTEの通信エリア化を実現しました。
これまではWi-Fiが活用されていましたが、通信エリアの狭さ等が課題でした。しかし「Satellite Mobile Link」であれば、最小限の設備で約4キロメートルの範囲に通信環境を構築できます。
これにより、電子図面の活用による施工管理・高解像度の遠隔臨場といったICT活用が可能になりました。「Satellite Mobile Link」でトンネル坑内の工事現場に通信環境を構築したのは、国内初の事例です。
竹中工務店
竹中工務店では、建設現場において初めてデータ通信網の完全無線化を実現しました。これにより、建設現場のデータ通信網の構築にかかる時間を約80%削減しました。
具体的には、建設中の建物屋上にスターリンクアンテナを設置して建設現場内に無線インターネット回線を導入しています。これにより、外部からの光ファイバーケーブルの配線を不要としました。また基地局数と設置手間を減らすことによって、データ通信網構築にかかるコストを30%程度削減することができると試算しています。
まとめ
建設業ではインターネットが通じにくい山間部での工事も多く、通信環境の整備が大きな問題となっています。スターリンクでは既存基地局の有無に関わらずインターネットが使えるようになるため、DX化に大いに役立ちます。今後、さらなる活用が期待されています。