首都直下地震・南海トラフはどっちがやばい?|違いやゼネコンの対策まとめ
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トレンドワード:首都直下地震
「首都直下地震」についてピックアップします。南海トラフと同様にいつ起こってもおかしくないと言われており、適切な備えが求められます。そのため本記事では各地震の比較や、大手ゼネコンの地震対応事例についてご紹介します。
地震対策に注目が集まる
2024年8月に日向灘を震源とする地震が発生したことを受けて、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。その後1週間経過した段階で呼びかけが終了されましたが、日本ではいつ大震災が発生してもおかしくないということが改めて認識される機会となりました。
南海トラフ地震は特に甚大な被害が予測される大地震であり、発生時期が明確に予測できないため、いつでも備えておく必要があります。家屋の耐震性の確認や、防災用品の準備、避難経路の確認など、個人や家庭レベルでできる対策を再確認することが重要です。
首都直下地震と南海トラフの違い|どっちがやばい?
日本国内で発生が懸念されている大規模な地震として、「首都直下地震と南海トラフ地震」が挙げられます。ここでは、それぞれの違いや特徴について整理しておきます。
①想定被害範囲・被害者数
首都直下地震の想定被害範囲は「東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県」で、死者最大約2万3,000人とされています。一方で南海トラフ地震の範囲は「静岡県から宮崎県にかけて」の広いエリアで、死者は最大約32万3,000人です。
首都直下地震が首都圏を中心とするのに対して、南海トラフ地震は太平洋沿岸部が広く被害を受けると予想されています。特に津波の被害が深刻で、太平洋沿岸部では広範囲にわたる浸水被害が考えられます。
一方で首都圏は人口が密集しており、重要なインフラも集中しています。これによる群衆雪崩や感染症の発生といった、二次災害も懸念されるのが特徴です。東京都心部では、強い揺れによる建物の倒壊や火災も大きなリスクです。
②地震の種類
地震は、発生メカニズムや発生場所によって種類が分類されています。ここでは、首都直下地震と南海トラフ地震の地震の種類を整理しておきます。
海溝型(南海トラフ)
南海トラフ地震は、「海溝型」に分類されます。これは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所で発生する地震のことを指します。大陸プレートのひずみが限界に達することで跳ね上がり、地震が発生するというメカニズムです。
比較的規模が大きく、揺れる時間が長いのが特徴です。そして震源地が海のため、津波が発生します。2011年3月に発生した東日本大震災も、このタイプに分類されます。さらに1度発生した後の周期が短く、地点によっては100年程度の間隔で発生することもあります。
内陸型(首都直下地震)
首都直下地震は「内陸型」に分類されます。これは、陸地の下にある活断層がずれ動くことで発生する地震です。日本は大陸プレートの端部に位置するため、活断層が多く存在します。
震源が浅いため、震源地では非常に強い揺れが発生しやすくなります。直下型であることから、緊急地震速報の発信が追いつかないことも多いです。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震も、内陸型に分類されます。
③発生確率
国土交通省によると、首都直下地震の発生確率は「マグニチュード7程度の地震の30年以内の発生確率は70%程度」とされています。そして南海トラフ地震は「マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%」となっています。両者ともに発生確率が高く、日本全体に甚大な影響を及ぼす可能性があるため、防災対策の重要性が強く認識されています。
国の対策|首都直下地震対策検討ワーキンググループ
国では、「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」を立ち上げて地震対策に取り組んでいます。主な議題は、下記2点です。
- ① 防災対策の進捗状況の確認や被害想定の見直し
・ 防災対策のフォローアップを実施し、被害想定の低減に向けた既存対策の課題を抽出
・ 最新の知見や社会状況の変化を踏まえた被害想定の見直し
・ 新たな被害想定を基に、課題の解決に向け、より直接的に減災効果がある施策を検討
- ② 新たな防災対策の検討
・ 技術の進展や他の災害の教訓、社会状況の変化等を踏まえ、今後の防災対策の検討に当たって考慮すべき課題を洗い出し
・ 新たな課題を踏まえた被害想定の見直し
・ 新たな課題に対する防災対策の検討
デジタル技術の活用
2024年8月の第4回会議では、首都直下地震を見据えた「デジタル技術の活用の現状等」について議論されました。⼈⼝減少が進む中、災害対応の効率化や⾼度化等を図るためには、防災や災害対策等におけるデジタル技術の活⽤の重要性が高まっているのです。
具体的なデジタル技術の例としては、下記の項目が挙げられます。
特にスマートシティでは、先進的技術の活⽤により都市機能を効率化・⾼度化し、災害対策を含めた各種課題の解決を図ることが期待されています。ただしこういったデジタル技術を非常時でもスムーズに活用するには、大容量通信のデジタルインフラ整備が課題です。データセンターも首都圏に集中していることから、地方分散等のリスク軽減策が求められます。
ゼネコンの地震対応事例
ここでは、大手ゼネコンが行っている地震対応の事例をご紹介します。
大林組|建物地震被災度即時推定システム
大林組は「建物地震被災度即時推定システム」を開発し、㈶日本建築防災協会から第一号事例を取得しました。これは震災時の建物の被災程度を即時に判定できるシステムで、建物の揺れをセンサで計測することにより、構造躯体の被災程度がすぐに把握できます。
従来の方式では建築士などの資格を持つ応急危険度判定士の目視調査で実施されていたため、判定結果を得るまでに数日から数週間かかることが課題でした。しかしこのシステムを使えば、地震後数分で自動的に判定が行われます。
これにより建物管理者が行動を速やかに判断できるようになり、より迅速なBCM(事業継続マネジメント)が実現するのです。
鹿島建設では、制免震技術「KaCLASS」を開発しました。同調質量ダンパ(Tuned Mass Damper)の原理を応用しており、建物全体に大きな制御効果を付与するのが特徴です。
制御層が地震エネルギーを大きく吸収して、建物全体の揺れを大幅に低減します。これにより、巨大地震による長周期地震動に対しても比較的少ない柱梁で高い安全性を確保でき、開放的な空間が実現可能です。
2023年6月に大阪市の超高層タワーレジデンス「ジオタワー大阪十三」で初導入され、より高い安全性を確保した建物を実現しています。
竹中工務店|免震総合モニタリングシステム
竹中工務店は、「免震総合モニタリングシステム」を開発しました。これは免震建物を総合的にモニタリングし、日常から地震後までより一層の安全・安心を提供するのが特徴です。
地震時には「建物健全度推定支援」と「免震層モニタリング」で、建物や免震層内の健全度推定結果を把握できます。一方で日常時には「免震装置変形遠隔監視」と「画像監視」が活用でき、免震装置や免震層内環境が正常な状態であることを遠隔から確認可能です。
様々な機能が一つのシステムに統合されているので、日常の維持管理から地震時までワンクリックで確認できるのが特徴です。新築時はもちろん、現在使用中の建物にも導入できます。
まとめ
南海トラフや首都直下地震は、いつ発生してもおかしくないと言われています。デジタル技術の活用により、被害の減少や復旧の迅速化が求められています。