3Dレーザースキャナーの注目メーカー|メリットや活用方法も

目次
トレンドワード:3Dレーザースキャナー
「3Dレーザースキャナー」についてピックアップします。本記事では3Dレーザースキャナーのメリットや、注目メーカーについてご紹介します。建設業での活用方法もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
3Dレーザースキャナーとは
3Dレーザースキャナーとは、レーザー光を使って物体や環境の三次元形状を正確に測定する装置のことを指します。具体的にはレーザー光を対象物に照射し、その反射をセンサーで検出することで形状を計測します。
得られたデータはコンピューターで処理され、三次元モデルとして可視化されます。この技術により、非常に正確で詳細な三次元データを迅速に取得できるのが特徴です。物体に触れることなく測定することが可能で、短時間で大量のデータを取得できます。
仕組み
3Dレーザースキャナーの仕組みには、大きく分けて下記4種類があります。
- タイム・オブ・フライト(TOF)方式
- フェーズシフト方式
- 光投影法
- レーザー切断方式
「タイム・オブ・フライト(TOF)方式」とは、レーザー光が対象物表面で反射して返ってくるまでの時間を基に距離を測定する方式です。長距離検出が可能で、設置場所の自由度が高いのが特徴となっています。
「フェーズシフト方式」とは、発射したレーザーの波形と反射したレーザーの波形の位相差を測定して距離を測る方式のことを指します。「位相差方式」とも呼ばれ、複数の変調させたレーザー光を利用するのが特徴です。これにより測定時間は短く済みますが、ノイズが多いというデメリットがあります。
「光投影法」とは、対象物にパターン光を投影して反射光を測定することで形状を認識する方法のことを指します。特定のパターンの光を対象物に投影し、歪みを分析して物体の形状を取得します。迅速に測定できる方式ですが、照明条件によっては精度が低くなるため注意が必要です。
「レーザー切断方式」とは、レーザー光を対象物に照射して可視光をカメラで取得する方式のことを指します。具体的には三角測量を用いて距離情報を取得し、物体の3Dデータを生成します。計測に時間が掛かるというデメリットはありますが、明るい場所での計測や光沢面の計測も可能で高精度という特徴があります。そのため建設・土木といった現場でも広く採用されています。
3Dレーザースキャナーの注目メーカー・製品
ここでは、3Dレーザースキャナーの注目メーカーについてご紹介します。
クモノス
クモノスは、3D計測のトップランナーとして事業を展開している企業です。計測実績は日本最大の2500件以上で、データ容量は400TBを超えています。
過去実績には、世界遺産の東本願寺・法隆寺・二条城・ロンシャン礼拝堂といった建築物の計測があります。1秒間に100万点の点群データを取得できる3Dレーザースキャナを用いており、街、道路、歴史的建築物、土偶や化石といった歴史の遺物、仏像やレリーフなどの文化財だけでなく、水中の構造物や地形等の計測も可能です。
ただし点群データは容量が非常に大きく、一般ユーザーには扱いにくいという難点がありました。そのためクモノスでは、簡単に点群データを閲覧・使用できるクラウドプラットフォームサービスを提供し、点群ビジネスの可能性を大きく広げています。
Leica(ライカ)
ライカはドイツの老舗カメラメーカーで、カメラ製品やスポーツオプティクス製品をグローバルに展開しています。現在では3Dレーザースキャナーの開発も行っており、多くの現場で活用されています。
具体的には「Leica RTC360」や「Leica BLK360 G2」といった製品があります。高性能レーザースキャナーとモバイル端末用アプリを組み合わせることで、リアルタイムでの3次元データのキャプチャとスキャンデータの合成処理を実現します。
トプコン
トプコンは、ヘルスケア・農業・建設業といった幅広い分野で最先端のDXソリューションを提供している企業です。2024年7月には、“だれでも使える”3Dレーザースキャナー「ESN-100」(愛称:“面トル”)と専用フィールドソフトウェア「Topcon Raster Scan」を発売しました。
計測を自動化(自動整準、ターゲット自動検出、スキャンデータの自動結合)するのが特徴で、これにより誰でも簡単に扱える操作性を実現しています。計測作業の手戻りが少なく失敗を防げることから、3次元点群計測をより身近に始められます。
3Dレーザースキャナーのメリット
3Dレーザースキャナーには、下記のようなメリットがあります。
- データが高精度
- 安全性が高い
- 測量の作業効率が上がる
3Dレーザースキャナーは、ミリメートル単位の精度で物体や環境の形状を計測できます。データは主に、建築や製造業などの分野で広く活用されています。
また物体や環境に直接触れることなく測定が可能なため、危険な場所やアクセスしづらい場所の測量が安全に行えます。高所や水辺といった危険な場所でも遠隔から安全にデータを取得できるため、作業員の人手不足といった問題解決にもつながります。
そして短時間で広範囲のデータを取得できるため、従来の測量方法よりも作業時間を大幅に短縮できます。スキャンデータの取得と処理が自動化されていることで、人為的なミスが減少して効率が向上するのもメリットです。
3Dレーザースキャナーの注意点
3Dレーザースキャナーは非常に便利で高精度なツールですが、下記のような条件では測量が困難な場合があるため注意しましょう。
- 水面・鏡面
- 透明・黒い物体
水や鏡のような反射面はレーザー光を拡散させるか反射してしまうため、正確な測量が難しくなります。これにより点群データが不完全になるか、誤ったデータが取得されることがあります。
またガラスやプラスチックなどの透明な物体はレーザー光を透過してしまうため、正確な測定が困難です。黒や非常に暗い色の物体に関しては、レーザー光を吸収しやすく反射が弱いため測定が難しくなります。結果として、データを十分に取得できないことがあります。
しかしレーザー切断方式等、特殊な条件でも測定可能な方式もあります。注意点を理解して適切に対処することで、3Dレーザースキャナーを効果的に活用しましょう。
3Dレーザースキャナーの活用方法事例
ここでは、建設業で3Dレーザースキャナーが活用されている事例をご紹介します。
鹿島建設
鹿島建設は、3Dレーザースキャナーを活用して「アタリガイダンスシステム」を開発しました。これはブレーカに搭載した3Dレーザースキャナで切羽形状のデータを取得し、トンネル工事のアタリを定量的かつ自動で判別するシステムです。
従来までの「アタリ取り」では、熟練技能者がアタリ(発破掘削後の地山で、除去する必要がある部分)を判別し、ブレーカのオペレータに指示を出しながら行う必要がありました。しかし技能者が事故に巻き込まれるリスクがあり、危険な工程となっていました。そこでアタリの確認作業を、目視から3Dレーザースキャナでのスキャニングに置き換える取り組みが進められたという経緯があります。
「アタリガイダンスシステム」では3Dレーザースキャナにより点群をデータ化し、3Dモデル化します。それをトンネル設計断面のデータと重ね合わせて数値化することで、高精度なアタリ判定が可能になるのです。
東急建設
東急建設では、Matterport社のデジタルツインソリューションを本格導入しています。屋内外にわたる鉄道関連の現場調査に3Dレーザースキャナーを利用することで、データ取得の迅速化や業務効率化を実現しています。
また2024年1月には、レーザーレイアウトシステムを開発・提供を⾏う Mechasys(メカシス)への出資を行うことを発表しています。Mechasysは、建設現場向けの高精度レーザーレイアウトシステムを開発・提供しています。
これにより、手作業で行っていた内装工事の墨出し作業の精度向上や効率化が期待できます。また手戻りを削減し作業の課題解決につながることから、システムの日本国内への普及を促すことを目的に出資を行いました。
東洋熱工業
総合エンジニアリング企業の東洋熱工業では、 2013年から3Dレーザースキャナーと BIM の連携に取り組んでいます。そしてライカの世界最小3Dスキャナー「Leica BLK360」を導入したことで、画期的な業務プロセス改革に成功しました。
これまで工事開始後に天井を落とさないと現況把握ができなかった天井裏も、工事開始前に3Dスキャンが可能になっています。「Leica BLK360」は重量1kg程度でコンパクトなスキャナーのため、一人で作業することもでき業務効率化につながります。
まとめ
3Dレーザースキャナーは高精度の計測が可能で、業務効率化にもつながります。建設や土木現場でも導入が広がっており、今後もさらなる活用が期待されています。