ラピダスとは-国産2ナノ半導体は失敗?北海道工場建設ゼネコンも紹介
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「ラピダス」についてピックアップします。国産2ナノ半導体の量産を目指し、官民一体となった取り組みが進められています。本記事ではラピダスの概要やメリット・課題等についてご紹介します。
ラピダスとは
ラピダス(Rapidus)株式会社とは、2022年に設立された半導体製造企業です。日本の開発力・モノづくり力を結集し、世界最先端のロジック半導体の開発・製造を目指しています。
最先端の半導体製造技術を取り入れることで、ハイパフォーマンスなチップを生産します。最終的には、国際市場において競争力のある製品を国産化することが目標です。そのために、世界中の技術パートナーや企業と協力して技術開発を行っています。
今後、北海道・千歳市に最先端半導体工場を建設し、研究開発と事業化を行う予定です。
経済産業省による支援
経済産業省では、ラピダスに総額9,000億円余りの支援を行っています。ラピダスは国産半導体事業の拠点と位置付けられており、政府でも量産に向けた必要な法案整備が進められている段階です。
しかし最先端半導体の量産化には、5兆円規模の投資が必要という見方もあります。そのため、今後さらなる資金調達をどうするかが課題となっています。
ラピダスの出資企業・提携企業
ラピダスには、下記の国内大手8企業が出資しています。
- キオクシア
- ソニーグループ
- ソフトバンク
- デンソー
- トヨタ自動車
- NTT
- NEC
- 三菱UFJ銀行
そしてベルギーの半導体国際研究機関であるimec(アイメック)と提携し、グローバルな協力関係を構築しています。またアメリカのIBM社とは、2nm半導体技術に関するパートナーシップを締結しました。これにより、最先端のチップレットパッケージ技術の早期確立を目指します。
ラピダスの製品|2ナノ半導体とは
そもそも半導体とは、電気の導電性が導体と絶縁体の中間に位置する物質のことを指します。条件によって電気を通したり通さなかったりする性質が、情報処理に活用されています。
半導体材料の最も一般的な例はシリコンであり、多くの電子デバイスで使用されています。具体的には、コンピュータのCPUやメモリなどの集積回路(IC)の製造に欠かせない材料となっています。電子回路の基本的な構成要素として、現代の電子機器の基盤に活用されているのです。
半導体は回路が細かい方が高性能であり、AIやスーパーコンピューターに活用できます。そのためラピダスでは、2nm(ナノメートル)半導体のチップレットパッケージ設計・製造技術開発を目的としています。
IBMの技術を実用化
AI等の技術開発に伴い、半導体の小型化が求められています。しかし日本の技術力で量産するには現在40ナノ程度が限界であり、最先端技術を持つ台湾・韓国でも3ナノが最小という状態です。
そのためラピダスではアメリカのIBM社から技術を購入し、それを土台として実装量産技術を確立することを目指しています。IBM社は2ナノ半導体手法の開発に成功していますが、実際に製品化している訳ではありません。
2ナノ半導体技術の販売先には複数の候補がありましたが、今回ラピダスが選ばれたことで国策として政府が大々的に支援しています。2025年4月までに試作ラインを完成させ、2027年には量産化される予定です。
ラピダスが注目される背景
ここでは、なぜラピダスが注目されているのかを解説します。
半導体需要の増加
ラピダスが注目される背景には、世界的な半導体需要の増加があります。現在多くの産業でデジタル化が進められており、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能(AI)などの技術が急速に普及しています。
これにより、データセンターや高性能コンピューティング(HPC)システムの需要が増え、それらを支えるための高性能な半導体が必要となっているのです。
国産による地政学上のリスク軽減
現在、半導体のトップメーカーは台湾のTSMCと韓国のサムスン電子となっています。しかし中国の軍事的圧力が強まる中で、有事の際には供給がストップしてしまうリスクがあります。
こういった地政学上のリスクを軽減させるために、日本国内で半導体を製造する必要性があるのです。半導体を安定供給できることで、自動車やAIといった分野の競争力も保たれます。
日本再起の「ラストチャンス」
1990年代、日本は半導体シェアの世界的上位を占めていました。しかし1999年に国策企業として設立された「エルピーダメモリ」は、2012年に業績不振により破綻したという事例があります。その後アメリカや韓国に追い越され、現在も遅れを取っている状態です。
しかしラピダスで世界初の2ナノ半導体量産に成功すれば、日本が再浮上する可能性があります。こういった背景から、官民一体の大型プロジェクトが進められているのです。
ラピダスの課題|失敗確実?心配されるデメリット
ラピダスには大きな期待が掛けられている一方で、「また失敗するのでは?」という心配の声も聞かれます。ここでは、課題やデメリットについて整理しておきます。
台湾や韓国との競争
現在、半導体分野では台湾や韓国の企業がトップを走っています。そして台湾のTSMCでは「2025年に2ナノ」、韓国のサムスン電子では「2025年に2ナノ、2027年に1.4ナノ」という目標が掲げられている状態です。
一方で日本では現在40ナノの量産が限界であり、一足飛びに2ナノを実現できるのか不安視する声も多いです。
量産化の難易度が高い
ラピダスは、IBM社が開発した2ナノ半導体の技術を活用して製品化します。しかし研究室レベルでは成功しているものの、実際に工場で量産できるかどうかは未知数です。
また技術革新のスピードが早まっていることから、他社に先駆けた開発ができるかどうかも注目されています。
投資額が小規模
ラピダスの事業を軌道に乗せるには、5兆円規模の投資が必要と言われています。現在経済産業省では約9,000億円の支援を行っていますが、到底足りていません。
そのため民間からの投資が期待されていますが、まだ実績が無いことから企業の動きは鈍い状態です。今後政府では、民間金融機関からの融資に政府保証を付けるといった対策を行うことで、資金調達の拡大を目指しています。
北海道での人材確保
半導体開発には、多くの技術者が必要です。しかし優秀なエンジニアが海外に流出しているケースも多く、人材確保が課題となっています。
その上で、工場建設地である北海道という立地の課題も心配されています。海外のエンジニアも呼び込むには、家族が暮らす居住地や学校といった生活面のインフラも整える必要があり、整備が求められます。
鹿島建設|ラピダス北海道工場を建設
ラピダスの北海道千歳工場の建設は、大手ゼネコンの鹿島建設が担っています。具体的な工事概要は、下記の通りです。
- 工事名称 Rapidus IIM-1建設計画
- 工事場所 北海道千歳市 工業団地「千歳美々ワールド」
- 発注者 Rapidus株式会社
- 設計者 鹿島建設株式会社
- 施工者 鹿島建設株式会社
- 工期 2023年9月~2025年1月
鹿島建設には、台湾TSMC社の熊本工場の建設を行った実績があります。半導体工場にはクリーンルームといった特殊な設備が求められますが、蓄積された高い技術力によりスムーズな工事が実現しています。
まとめ
ラピダスによって2ナノ半導体が実現すれば、AIやスマートシティといったDX推進にもつながります。そのため日本の半導体復権に向けて、動向が注目されています。