建設業で週休2日が義務化?国土交通省の取り組み

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著者:小日向

トレンドワード:週休2日

「週休2日」についてピックアップします。2024年4月より建設業でも働き方改革がスタートしましたが、その中で「週休2日が義務化された?」という疑問の声も多く聞かれます。そこで本記事では、建設業の労働環境改善に対する取組についてご紹介します。国土交通省の取り組みもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

2024年4月、建設業で働き方改革開始

2024年4月から、建設業でも働き方改革がスタートしました。これにより「時間外労働の上限規制」や「年5日の有給休暇取得が必須」になるなど、労働環境改善の動きが強まることが予想されています。

この流れの中で「週休2日が義務化される?」といった疑問も多く聞かれるようになりました。建設業の働き方改革について詳しくは、下記記事をご覧ください。

週休2日とは|「完全週休2日」との違い

週休2日とは「月1回以上週2日の休みがあり、他の週は毎週1日の休みがある」形式のことを指します。一方で完全週休2日制は「毎週2日の休みがある」形式です。

出典:厚生労働省ウェブサイト(https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/001498604.pdf

建設業は「4週6休程度」が最多となっており、他産業では当たり前となっている週休2日が確保できていないのが現状です。また年間の総実労働時間については、全産業と比べて90時間長くなっています。

受注先別にみると、公共工事の方が民間工事よりも「4週8休以上」の割合が多いことが分かります。このように休みが少なく労働環境が悪い状況を改善するため、働き方改革が期待されているのです。

建設業で週休2日は義務?いつから?

実際には、建設業での週休2日は義務化されている訳ではありません。2024年4月の働き方改革で変更となったのは「時間外労働の上限」です。

具体的には、残業の上限が「月45時間・年360時間」に定められました。特別な事情がある場合でも、「年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間」が限度となります。

週休2日の法律や罰則

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/content/001368311.pdf

現時点では、週休2日に関する法律や罰則は存在しません。しかし国土交通省では「新3Kを実現するための直轄工事における取組」の中で、週休2日工事を推奨しています。

あくまでも推奨レベルですが、実際に公共工事では週休2日対象工事の割合が増えています。今後民間工事についても、週休2日の流れが広がるかに注目です。

週休2日のメリット

建設業で週休2日を導入するメリットとしては、下記の点が挙げられます。

長時間労働の是正

建設業では、過重労働や長時間労働の問題が指摘されています。週休2日制度を導入することで従業員の労働時間を適切に管理できるようになり、過労やストレスの軽減につながります。

健康的で満足度の高い労働環境が整えば離職率が低くなり、人材不足解消にも効果的です。長期的な視点で見ると、生産性UPやモチベーション維持にも貢献するでしょう。

デジタルツール導入促進に繋がる

建設業の労働時間が長いのは「工期が間に合わない」といった事情も大きく関係しています。そのため週休2日を導入すると、さらに遅れが生じるのではと思われるかもしれません。

しかし逆に言えば、労働時間の効率的な管理や業務プロセスの改善を促すきっかけとなります。適切なデジタルツールで業務効率化を図ることで、短時間労働が実現するのです。

国土交通省の取り組み|週休2日を促進

ここでは、国土交通省が行っている週休2日の取り組みをご紹介します。国が率先して制度を整えることで、建設業全体の労働環境改善が期待されています。

積算基準を改定|週休2日実施で加点

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001070.html

国土交通省では、必要に応じて直轄土木工事・業務に適用する積算基準の改定を行っています。2024年度の新基準では、働き方改革のための取組の加速や円滑な施工体制の確保が行われる予定です。

具体的には「週休2日の”質の向上”の拡大」を推進しています。主な改定点は、下記の通りです。

  • 他産業と遜色ない休日取得ができる現場の実現に取り組む
  • 2023年度までに工期全体(通期)の週休2日が標準化されたことから、2024年度より月単位の週休2日を推進
  • 土日を休日とする週休2日の実施に努めることを規定し、実施した企業には工事成績評定で加点

施工時期の平準化

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/index.html

公共工事は4~6月が閑散期ですが、12~3月の年度末にかけて繁忙期になる傾向があります。これにより、人材や機材が効率的に活用できていないのが課題です。

そのため国土交通省では「施工時期の平準化」に取り組むことで、年間を通じた工事量の安定を図っています。これにより人材・資材・機材等の効率的な活用促進に寄与し、ひいては公共工事の品質確保への貢献も期待されています。

週休2日工事の事例

ここでは、実際に週休2日工事が行われている事例についてご紹介します。

東京都|週休2日促進(交替制)工事

https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kentikuhozen/syu2

2024年度から時間外労働の上限規制が建設業にも適用されることを受け、東京都では「週休2日促進工事」、「週休2日交替制工事」を実施しています。

まず「週休2日促進工事」は、財務局建築保全部の発注するすべての営繕工事が対象です。4週8休を前提に労務費を補正し、工事費を積算して予定価格を作成するという仕組みです。基準に満たない場合は、労務費補正分が減額されてしまいます。

一方で「週休2日交替制工事」は、工事内容及び施設の実情等により「週休2日促進工事」が馴染まない工事が対象です。こちらでは、技術者及び技能労働者が4週8休以上の休日を交替で確保するという違いがあります。

埼玉県|週休2日制モデル工事

埼玉県では、将来にわたる週休2日の定着に向けて、「週休2日制モデル工事」を試行しています。具体的には、対象期間において4週8休(現場閉所日数の割合)を28.5%以上達成する工事が対象です。

週休2日制モデル工事における市場単価方式による積算では、通常の工事よりも単価が高く設定されています。これにより、週休2日の広がりが期待されています。

まとめ

建設業では長時間労働が課題となっており、それが原因で重大な事故も発生しています。今後週休2日が広がることで、環境が改善されることが期待されます。