鹿島建設、環境配慮型コンクリートの採用により、施工時のCO₂排出量を31トン削減

鹿島(社長:天野裕正)は、グループ社員用の実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)の建設にあたり、自社開発した2種類の環境配慮型コンクリートを採用し、建設時におけるCO₂排出量を約31トン削減しました。

これは高さ20mの杉の木2,200本が1年間に吸収する量に相当します。採用したコンクリートは、戻りコン※1を原材料として再利用した「エコクリートⓇR³※2」(アールスリー)と、製造時にCO₂を吸収・固定する「CO₂-SUICOMⓇ※3」(シーオーツースイコム)です。

今回、それぞれのコンクリートを新たな用途に採用したことで、環境配慮型コンクリートの実用化の幅が広がりました。

今後当社は、環境配慮型コンクリートのさらなる高度化および用途拡大を図ることで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

※1 受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されずに工場に戻される生コンクリート

※2 2012年度から環境省環境研究総合推進費(3J153001)研究助成による、鹿島、三和石産株式会社、

東海大学の3者共同開発

※3 鹿島、中国電力株式会社、デンカ株式会社、ランデス株式会社の4社共同開発

エコクリートR³を採用した外構RC目隠し壁

エコクリートR³を採用した外構RC目隠し壁

CO₂-SUICOMを底板・側板に採用した外構緑地システム「DEWレインガーデン®」CO₂-SUICOMを底板・側板に採用した外構緑地システム「DEWレインガーデン®」

鹿島テクニカルセンターに採用した環境配慮型コンクリート

今回採用した環境配慮型コンクリートは以下の2種類です。

施工中の基礎躯体施工中の基礎躯体

1.再生材を使用した「エコクリートR³」

 エコクリートR³は、戻りコンから骨材を取り除いた後、脱水・粉砕して製造するスラッジ再生セメント「Cem R³Ⓡ」(セムアールスリー)を原材料として再利用します。

製造工程で大量のCO₂を発生するセメントの代替物として用いるため、資源循環を図りながらCO₂排出量を抑えることができる画期的な環境配慮型コンクリートです。

エコクリートR³には、Cem R³の含有量により高含有型(Cem R³をセメントの一部として50%程度使用)と低含有型(同20%程度使用)があり、含有量を調整することで幅広い用途に使用可能です。

 今回は、高含有型エコクリートR³の生コンクリートを外構RC目隠し壁に、低含有型エコクリートR³の生コンクリートを基礎躯体に採用しました。

高含有型はこれまでプレキャスト部材として躯体に使用した実績はありますが、生コンクリートを建設現場で打設し、躯体に使用したのは初めてです。

現場打設に際しては、シーカ・ジャパン株式会社(東京都港区、社長:アマン・マルコ)の協力を得ました。

施工中のDEWレインガーデンの底板・側板施工中のDEWレインガーデンの底板・側板

2.製造時にCO₂を吸収・固定する「CO₂-SUICOM」

 CO₂-SUICOMは、製造時にCO₂を吸収・固定することでCO₂排出量をゼロ以下に抑制できる究極の環境配慮型コンクリートです。特長は次の2点です。

①産業副産物と特殊混和材「γ-C₂S」(ガンマシーツーエス)をセメントの代替材料とし、セメントの使用量自体を減らしてCO₂排出量を抑える。

②γ-C₂SとCO₂を反応させてコンクリートにCO₂を大量に吸収・固定させる炭酸化養生を行う。

 今回、CO₂-SUICOMを歩道のインターロッキングブロックと、駐車場の車止め、外構緑地システムDEWレインガーデンの底板・側板に使用しました。

一般的なコンクリートはpH12~13の強アルカリ性を示します。これに対しCO₂-SUICOMは、炭酸化養生の過程で中性に近いpHとなるため、土壌が高pHになるのを抑えることができる植物にも優しい材料です。

この特長を活かし、外構緑地の底板・側板に使用しました。これはCO₂-SUICOMで製作した埋設型枠※4の新たな用途であり、今後の普及・展開が期待されます。


※4 コンクリート打設後も取り外すことなく構造物の一部として使用される型枠

環境配慮型コンクリートの採用効果

 環境配慮型コンクリートの採用により、本施設の建設工事由来のCO₂排出量を約31トン削減しました。今後、当社保有施設「ドーミー南長崎アネックス」新築工事に続き、「J-クレジット」※5の取得を予定しています。


※5 省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO₂等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO₂等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度

今後の展開

 当社は今後、世界市場への展開も視野に、これまでに開発してきたさまざまな環境配慮型コンクリートのさらなる実用化・高度化に向けた研究開発およびサプライチェーン構築を加速していきます。

建物概要

鹿島テクニカルセンター外観鹿島テクニカルセンター外観

所在地:横浜市鶴見区元宮1-19-8
建物用途:事務所(研修所)
延床面積:5,809m²
構造:RC造一部S造、木造、地上5階
設計者:鹿島建設株式会社
施工者:鹿島建設株式会社
竣工年月:2022年12月
供用開始:2023年 4月

(参考)

環境配慮型コンクリート「CO₂-SUICOM®(シーオーツースイコム)」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_sus_con/technology01/index.html

環境配慮型コンクリート「エコクリートⓇR³」、初の大規模適用
(2019年1月17日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/201901/17a1-j.htm


生物多様性や雨水の貯留・浸透に貢献する総合的なソリューションを提供
(2023年1月31日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202301/31a1-j.htm

環境配慮型コンクリートの適用により181t-CO₂のJクレジット取得
(2022年8月9日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202208/pdf/9c1-j.pdf

実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設
(2023年5月23日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202305/23a1-j.htm