インフラDX大賞とは|令和5年度の国土交通省大臣賞は?

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著者:小日向

インフラDX大賞」についてピックアップします。社会資本や公共サービスの変革に向け、IT技術などの導入が注目されています。本記事では、令和5年度の受賞事例をご紹介します。スタートアップによる新しい動きも反映されているのが特徴で、最新技術に注目してみましょう。

インフラDXとは

インフラDXとは、デジタル技術を活用して社会資本や公共サービスを変革する取り組みのことを指します。業務や組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現することを目的としています。

「インフラDX」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

インフラDXとは|課題や国交省アクションプランを解説

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国交省、インフラDX大賞を実施

国土交通省は平成29年度より「i-Construction大賞」を実施していましたが、令和4年度(2022年)、新たに「インフラDX大賞」と改称しました。インフラ分野の優れた実績を、ベストプラクティスとして横展開することが主な目的です。データとデジタル技術を活用した建設生産プロセスの高度化、効率化、国民サービスの向上等の改革が期待されています。

インフラDX大賞では「スタートアップ奨励賞」が設置されているのが特徴です。スタートアップの取組を支援し、活動の促進、建設業界の活性化へ繋げるという目的があります。

令和5年度のインフラDX大賞

令和5年度「インフラDX大賞」は、計24団体(国土交通大臣賞3団体、優秀賞20団体、スタートアップ奨励賞1団体)が受賞しました。

ここでは、「工事・業務部門」、「地方公共団体等の取組部門」、「i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門」の中から主な受賞事例をご紹介します。

工事・業務部門

国土交通大臣賞|日本ファブテック

https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

日本ファブテックでは、レーザー三次元計測システム「簡測くん」と、集中制御で組立形状を調整する地組形状調整システムを連携させた独自システムを構築しました。高精度で迅速な鋼桁組立作業が要求される連続高架橋工事において、現場作業の効率化と省人化を実現しました。

このシステムにより、従来技術に比べて「鋼橋組立作業における計測者の50%、調整作業従事者の83%」を削減しました。調整量の自動算出から調整作業までの作業をシームレスに繋ぎ、橋梁全体の出来形精度を大きく向上させる有効的な取り組みです。

優秀賞|建設技術研究所

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

建設技術研究所では、AIやクラウドを活用したダム管理支援システムを構築する業務を行いました。従来までは熟練したダム管理者の判断で流入量予測やダム運用を行ってきましたが、過去の高度な判断をAIに学ばせることで高度化・効率化を図ります。

まず高水分野では、AIの活用によりリアルタイムでダム流入量や下流基準地点の流量予測、ダムの最適放流量を算出でき、併せて洪水調節および異常洪水時防災操作、事前放流や特別防災操作等の放流量の算出が可能となりました。

また低水分野では、利根川本川の利水基準地点等で、リアルタイムで基準地点の流量予測やダム毎の最適放流量の算出が可能となりました。業務で検討したAI流量予測、AI強化学習、クラウド型システムは、全国の他の水系、ダムにも適用可能です。今後、さらなる普及が期待できます。

地方公共団体等の取組部門

国土交通大臣賞|京都府和束町

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

京都府和束町では、橋梁架け替え事業の全プロセスにおけるDX技術の試行を行いました。具体的には、小規模自治体での橋梁工事において「ハイブリッド型包括的民間委託」を活用してDX技術を導入することで、同町過年度の架替事例に比して約1/3の工期短縮(8年→2.5年)を実現しました。

「ハイブリッド型包括的民間委託」とは工事の全期間を通じて設計会社から技術支援を受ける制度のことで、大阪公立大、(株)オリエンタルコンサルタンツと共同でプロジェクトに取り組みました。

これは全国初の取り組みであり、若手職員の育成効果や地元施工者の意識向上を実現しました。職員の人材不足・経験不足や、地元施工者の技術力向上・意識改革等に課題を抱える全国の小規模自治体に先駆けて実証しており、先進性・波及性が高い取り組みと言えます。

優秀賞|栃木県

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

栃木県では、全国に先駆けてイベントでの自動運転バス実証実験を実施しました。第77回国民体育大会(いちご一会とちぎ国体)に合わせて実証実験を行い、イベント時の移動手段確保、公共交通の利用促進等を図りました。

具体的には、道路に設置したセンサー(カメラ、LiDAR等)で検知した道路状況を自動運転バスへ情報提供する「路車協調システム」を採用しました。自動運転車の車載センサでは把握が困難な交差点でも、システムからの適切な支援により自動運転による走行を実現できました。

ラウンドアバウトでの路車協調システム連携はほとんど実績がないため、今後、他地域におけるモデルケースや全国普及の一助になることが期待されています。

i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門

国土交通大臣賞|丸本組

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

丸本組では、河道掘削工事におけるAIを活用した取り組みを実施しました。具体的には、AIカメラによる重機の掘削・積込み作業の解析と作業計画の最適化、AIカメラによるダンプトラックのリアルタイム入退管理を行いました。

AIとカメラによる重機の作業状態のリアルタイム表示により、的確なダンプトラック台数調整によって工程を当初計画より20日短縮しました。また運搬日報の自動帳票化は、天候不良時などを除き「手書きに対して90%以上の精度」を発揮しており、さらに一日約20分要する集計作業の解消にも繋がっています。

AI解析とカメラを用いた現場状況のデジタル化により、的確な施工管理を実現しました。経験値や暗黙知を、数値や画像、グラフ等の形式知として記録することで、「建設業のDX化」に繋げた事例です。

優秀賞|東急建設

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

東急建設では、4Dシミュレーションを用いたPPCa(パーシャルプレキャスト)ボックスカルバートの施工を行いました。具体的には、狭隘な空間での施工条件での施工において、VR3Dモデルに時間軸を組み込んだ4Dシミュレーションを活用しました。これにより、プレキャスト部材の寸法や分割位置、据付順序や作業手順および施工歩掛等を反映した綿密な施工計画を立案しているのが特徴です。

PPCaボックスカルバートと4Dシミュレーションの適用により、現場打ちコンクリートに比べて50%の工程削減効果が確認されています。さらに施工サイクルの最適化検討により、プレキャスト部材の据付作業期間を約40%縮減しています。

さらにVRを活用した副次的な効果として、道路利用者(一般車両や歩行者)からの施工中の信号の視認性や安全確認なども検証できることから、工事の安全性向上も期待できます。

スタートアップ奨励賞|DataLabs

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001047.html

DataLabsでは、3次元配筋検査ツール「Modely」を用いた「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測」を推進しています。これは、点群データを3Dモデル化して鉄筋出来形を計測する技術です。

このツールを用いれば、現状課題とされている「2段配置の主鉄筋」「床版の下側鉄筋」の他、環状フープ筋の計測が可能になります。また3次元モデルを生成するため、BIM/CIM原則適用で挙げられている「不可視部のモデル化」を体現し、維持管理の生産性向上にも活用できます。

3Dの現況モデルを点群から自動生成する技術を「実業務で活用できる形」に落とし込み、維持管理への活用可能性を見出すことで、BIM/CIM推進の更なる発展の礎となっています。

まとめ|インフラDX大賞に注目

インフラDX大賞は、建設現場の生産性向上に関するベストプラクティスの横展開に向けて注目されています。特に「スタートアップ奨励賞」では、ベンチャー企業を応援する動きにも注目です。さらなる建設DXの推進に向け、取り組みの広がりが期待されます。