ファシリティ・マネジメントとは|建築具体事例や仕事内容を紹介
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「ファシリティ・マネジメント」についてピックアップします。単なるビル管理ではなく施設運営の最適化を行う取り組みで、日本でも導入されつつあります。本記事では、仕事内容や資格、具体的な建築事例についてご紹介していきます。
ファシリティ・マネジメントとは
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/soumu/zaisan/facility-m-what_fm.html
ファシリティ・マネジメント(FM)とは「企業等が建物施設を総合的に企画・管理する活動」という意味の言葉です。経営的視点で企業活動に貢献し、生産性の高い空間を提供する目的で行われます。アメリカで誕生した考え方で、国際規格として「ISO41001」があります。
FMと似た言葉としては「コンストラクション・マネジメント(CM)」が挙げられます。これは「発注者がコンストラクションマネージャーを設置して、工事発注における体制を補う手法」という意味です。CMが「工事完了までのプロセス」を指すのに対して、FMが関わる期間は「建物のライフサイクル全体」という違いがあります。
コンストラクション・マネジメント(CM)について詳しくは、下記記事をご覧ください。
「ファシリティ・マネジメント」と「ビルメンテナンス」の違い
ファシリティ・マネジメント(FM)は「ビルメンテナンスと同じでは?」と思われがちです。確かに建物管理という意味では似ていますが、その内容は大きく違います。
まずFMは「建物全体の管理」を意味します。具体的には、建物の設計、建設、運営、改修、廃棄に至るまで「ライフサイクル全体」を通じて管理するのです。そのため施設管理や施設保守計画、施設改修計画の策定、検査、セキュリティ管理、利用状況の調査などが含まれます。
一方でビルメンテナンスは「建物の設備や機器、部品などを定期的に点検、清掃、修理、補充する作業」という違いがあります。具体的には「電気設備や空調設備、上下水道設備、エレベーター等のメンテナンス」が含まれます。
FMは建物の維持管理だけでなく「将来を見据えてより良い状態に保つ」ことが求められます。そのためICTやAIなど、最新技術が導入されているケースも多いです。
ファシリティ・マネジメントの仕事内容はきつい?
ファシリティ・マネジャーの仕事内容
ファシリティ・マネジメントを行う仕事として「ファシリティ・マネジャー」があります。具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 施設の維持・保守・修繕計画の策定
- 建物内の設備・機器の管理
- 契約管理 外部業者との契約や入札手続きの管理
- 建物維持コスト管理
- 施設の改修計画の策定
このようにファシリティ・マネジャーの仕事は多岐に渡るため、総合的なスキルが求められます。官公庁や一般企業、工場など幅広い現場で業務を行います。
ファシリティ・マネジメントの資格は?
http://www.jfma.or.jp/qualification/page3.html
ファシリティ・マネジメントには「認定ファシリティマネジャー(CFMJ) 」という資格があります。FMとしての基本的素養を問う内容で、知識、業務、技術の学科試験と論述形式です。
合格率は約4割で、受験資格は無く誰でも受験可能です。試験合格後、実務経験をクリアすると登録資格が得られます。
日本ではまだまだファシリティ・マネジャーが一般的ではないですが、今後省エネや収益性のために導入する企業は増えると予想されています。必ずしも仕事に資格は必要ではないものの、スキルや知識の証明になるため取得が推奨されています。
ファシリティ・マネジメントの建築具体事例
ここでは、ファシリティ・マネジメントの具体的事例をご紹介していきます。下記は毎年行われている「日本ファシリティ・マネジメント大賞」の中から、優秀FM賞を受賞した事例です。これからの建物管理の参考として、チェックしておきましょう。
①ファシリティ活用を通じた社会価値創造取組の推進|第一生命
第一生命では、不動産やファシリティ活用を通じて社会価値創造の取組を行っています。その中でも、福利厚生グラウンドを有効活用した「SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクト」が評価されました。
「地域住民のウェルビーイングを高めるまちづくり」をコンセプトに、健康増進・環境配慮・地域活性化に取り組んでいます。スポーツイベントの開催や保育サービス向上といった事業で、地域の交流を生み出しているのが特徴です。
それだけでなく「運用収益の獲得と社会課題の解決」を両立しており、長期的な持続可能性が感じられる点も評価されました。
②みんなとみらいのオープンイノベーションに向けたFMの取組み|村田製作所
横浜のみなとみらいイノベーションセンターの事例です。「全ての人(みんな)とともに未来(みらい)を拓く」という想いが込められています。具体的には、下記3つの取り組みが行われました。
- 人を活かす・エンゲージメント向上
- 魅力度UP(ブランディング)
- 運営維持のスマート化
施設の運営においては、「IoT活用」としてメーターの読みを無くすことによるメンテナンスの省力化が導入されました。また「遠隔サポート」でエネルギーデータ解析を行っています。
③「DX活用のFMオフィス」づくり|イオンディライト
国内TOPのファシリティマネジメント企業である「イオンディライト」では、本社移転に際してFMノウハウを生かしたスマートオフィスを計画しました。具体的な取組内容は、下記の通りです。
築50年以上の築古ビルのリノベーションのため、課題は多くありました。しかしオープンプロトコルを利用したビル制御により、設備運用効率が大幅に向上しています。
ファシリティ・マネジメントには「BIM」が最適
ここまでの内容にあるように、FM業務では建物設備のライフサイクル全体を複合的に管理する必要があります。その際に役立つのが「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」です。
BIMとは建物のデータを3Dで再現できるツールで、図面情報だけでなく設備機器・建材・築年数などあらゆる情報を複合的に管理できます。そのため設計〜維持管理に渡る活用ができ、導入が広がっています。
国土交通省でもFMでのBIM活用を推進しており、「BIMモデル事業」での事例も多くあります。上図の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」では、BIMから点検用マスターデータベースを構築し、FMソフトウェアで点検を行う検証が行われました。
その結果、BEMS/IoTの連携による保全業務の効率化が図れることが実証されています。また、下記のようなメリットも報告されました。
- 施工者以外が管理した場合でも、ばらばらの図面確認の手間が省ける。
- BIMによる天井内の見える化、不具合状況の見える化が可能。
- 複数棟を管理する場合に常駐人数を分散化でき、サービス向上と費用削減へつながる。
国土交通省ではBIMの幅広い普及を推進するため、「建築BIM加速化事業」を創設して補助金交付を行っています。BIM購入費用が助成されることにより、多くの事業者でBIM活用が広がると期待されています。制度について詳しくは、下記記事をご覧ください。
まとめ|ファシリティ・マネジメントで効率化
建物は「作って終わり」ではなく、その後の年数の方が長いものです。適切な維持管理で運用していくことで、建物・利用する人・所有者など各方面でのメリットが大きくなります。FM管理の際には、BIMやIoTといったデジタルツールを上手に活用していくことが大切です。