建設業でのAI事例紹介|将来人間の仕事は無くなる?

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著者:小日向

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AI」についてピックアップします。人工知能を活用した技術に注目が集まっており、本記事では建設業でのAI活用事例をご紹介します。また話題の「ChatGPT」の紹介や、「AIで人間の仕事は無くなる?」といった疑問も解説していきます。

建設業でのAI活用企業事例

ここでは、建設業で実際に使われている「AI技術」の事例についてご紹介していきます。

①人体検知システム「T-iFinder」|大成建設

大成建設の「T-iFinder」は、建設機械搭載型人工知能(AI)で人体を高精度に検知するシステムです。延べ3,000時間にも及ぶ実証実験を実施し、確実な人体検知、建設機械の緊急停止および警報機能の自動作動状況から安全性が確認されています。

システムには施工環境で収集・蓄積されたデータベースが個別に保有されており、クラウドなどを介さずにその場で処理することが可能です。施工環境に応じて深層学習を重ねたAIにより、最適な人体検知システムを構築しています。

②Archiphilia Engine|竹中工務店

竹中工務店は、空間制御システム「Archiphilia Engine(アーキフィリア エンジン)」を開発しました。これはセンサーから取得した「ビッグデータとAI」によって運転条件を自動的に最適化し、省エネルギーや省人化を実現するシステムです。

AIで「入居者の好みや快適性」といったフィードバックデータを継続的に学習し続けることによって、入居者にカスタマイズされた室内環境を自動的に提供できます。

③コンクリート・アイ|鹿島建設

鹿島建設では、コンクリート構造物の表層品質をAIが評価するアプリ「コンクリート・アイ」の開発を進めています。これにより、コンクリート打設後の表面状態の検査や品質管理の業務効率化が可能になります。

写真を撮影すると「AIがコンクリート構造物の品質を評価」してくれるため、誰でも一定の精度でコンクリートの品質評価ができます。また評価結果はリアルタイムでクラウドに集積され、施工条件や環境条件などのデータと連携した表層品質向上のPDCAサイクルが可能です。

④Construction IQ|オートデスク

Autodesk(オートデスク)は「Construction IQ(コンストラクション・アイキュー)」というAIを開発し、品質管理に役立てています。機械学習と AI機能を利用して「コスト、スケジュール、品質管理、安全性に対するリスク予測や回避」が可能になっています。

具体的には現場技術者が当日の作業を入力すると、AIが事故や施工ミス、遅延が発生しやすい作業などを提示してくれるのです。AIが作業状況から自分で学んで日々反映するため、現場作業員の負担軽減に繋がります。

⑤画像認識AI|アラヤ

アラヤは、脳の研究・脳画像の解析からスタートしたAIベンチャー企業です。「ディープラーニングやエッジAI」の技術を活用して、様々な業界別ソリューションを提案しています。建設業向けには、下記のようなサービスを展開しています。

  • 画像認識AI技術による安全管理の自動化
  • 設備点検の品質向上・効率化
  • 資材の数量カウント自動化、人の行動の記録
  • 技術の伝承と維持
  • 建機自動化の実現

具体的には立ち入り禁止エリアへの侵入検知、作業解析によるオペレーションの改善等が可能です。

⑥画像生成AI|mign

スタートアップベンチャー企業のmignは、画像生成AIのStable Diffusionを組み込んだ建築デザイン支援ツール「studiffuse」を提供しています。

クライアントやデザイナーが入力した画像やキーワードをもとに、「AIが自動で画像を作成」してくれます。自社ブランドのデザイン事例画像を学習させることで、ブランドイメージに近いデザインを創り出すことも可能です。

従来までプラン作成やフィードバックに多くの手間が掛かっていましたが、これによりコミュニケーションの円滑化・スピーディー化が実現します。

そもそも「AI」とは

ここではAIの意味や概要、最新技術として注目の「ChatGPT」についてまとめていきます。

AIの概要

AIとはArtificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略語で、「人工知能」という意味です。人間の脳神経系をモデルにしており、膨大なデータを与えて「コンピュータ自身に学習させる」ディープラーニングの手法が用いられています。

読み込んだデータの量が増えるほど賢くなるという性質は、人間の子どもがだんだん成長していく過程に似ています。これまでデータ分析に多くの時間が掛かっていましたが、技術の進歩により開発効率が指数関数的に上がっています。

2023注目のAI技術「ChatGPT」|Googleを倒す可能性も?

リリース2ヶ月でユーザ1億人を突破したAIの「ChatGPT」が話題です。ここでは、ChatGPTの概要や活用方法についてご紹介します。

ChatGPTとは

2022年11月に登場した「ChatGPT(チャット ジーピーティー)」は、対話型AIチャットサービスです。インターネット上の情報から学習し、ユーザからの指示に「自然な文章で的確な回答」を返してくれるのが特徴です。

ChatGPTに「チャットGPTは、以前までの検索とどこが違うのですか?」と質問したところ、下記のような回答が返ってきました。

要するにChatGPTはユーザの質問に対話形式で回答してくれるので、質問を重ねることでより分かりやすく正確な情報が得られるということになります。

従来までの検索(Google等)では、「ユーザが複数の検索結果を見比べて、自分自身で回答を導き出す」必要がありました。しかしChatGPTは機械学習により「膨大なデータをまとめた回答を提示してくれる」のです。

「3000字でレポートを書いて」と指示すればそれなりの論文が完成するので、ChatGPTの使用を禁止している大学もあります。また文章だけでなくプログラミングにも使えるとあり、活用の広がりが期待されます。

ChatGPTで変革が起こる可能性

ChatGPTは「OpenAI」というベンチャー企業が開発したツールですが、マイクロソフト社が多額の投資をして事業提携を進めています。今後、WindowsやExcel、TeamsといったOSにもChatGPTが搭載される予定です。そのため簡単な書類作成やマクロ作業であれば、「指示を出すだけで自動で完成する」ようになる日も近いでしょう。

ChatGPTの登場で、これまで検索のトップに君臨してきたGoogleも危機感を抱いているようです。対抗するようにチャットボット「Bard」を発表し、開発を進めています。

これまでの20年は「分からないことはGoogle検索で調べる」のが主流でした。しかし将来「ChatGPTに聞く」方法に取って代わられるかもしれず、Googleの動きに注目が集まっています。

AIで人間の仕事は無くなる?

AIは日々進化しており、「将来人間の仕事が無くなるのでは?」と言われています。実際にChatGPTは、MBA(経営学修士)試験に合格するレベルに到達しています。

現在すでに金融投資の分野ではAIを活用した「ロボアドバイザー」が活用されており、人間より信頼性が高いケースも多いです。同様にAIとデスクワークの相性は良く、今後多くのホワイトカラーの仕事がAIに置き換えられると考えられます。

しかし、これは本当に「問題」なのでしょうか。

たとえばこれまでの歴史を見ると、自動車の誕生で馬車の仕事は無くなったかもしれません。しかしその代わりに「自動車工場勤務」の仕事が生まれる等、ワークシフトが繰り返されてきました。現代においても、AIに奪われる仕事の代わりに「新たな仕事」が誕生する可能性があります。

ただしAIが広まれば、人間に求められるスキルがより一層高くなるのも事実です。生涯にわたって学び続ける必要性が高まっており、経済産業研究所の政策提言でも「当面、雇用を守るために必要な対策として、再教育再訓練及び再就職の斡旋が必要」と述べられています。

今更「環境に優しいから竪穴式住居に戻そう」と言われても無理なように、もう過去の技術には戻れません。AI技術を活用し、生活を豊かにする方向に進むべきと考えられます。

まとめ|AIの進化は止められない

AIを「脅威と捉えるかチャンスと捉えるか」で、動き方は変わってきます。たとえばChatGPTを使えば「誰もがプログラマーやライター業務が可能になる」という見方もできるでしょう。使い方次第で、小学生でもアイデアを形にできるのです。

さらにAIが進化すると、「こんな建築図面を作って」と命令すると自動的に作ってくれるようになるかもしれません。しかしAIはあくまでも「作業者」です(現時点においては)。面倒な作業はAIに任せ、人間は「プロデューサー」の業務に集中できます。

またChatGPT等のAIは質問の仕方次第で返答内容も大きく変わるので、「的確に指示を出す」ことが求められます。今後は「AIを使いこなすスキル」が大切になるのではないでしょうか。