空き家問題をDX化で解決!事例をもとにご紹介!【先行配信】
トレンドワード:空き家問題
全国各地で年々深刻になっている「空き家問題」についてピックアップします。空き家の課題や解決するための対策のほか、DXを活用した方法もご紹介します。東京都や群馬県などの、空き家活用事例もチェックしておきましょう。
空き家が894万戸に|国土交通省も懸念
現在日本では少子高齢化が進み、誰も住まなくなった「空き家」が849万戸となっています。今後も空き家の数は増えると予想されており、大きな社会問題になりつつあります。
国交省が「空き家対策小委員会」を設立
空き家が増加しているという現状を踏まえ、国土交通省では2022年10月・社会資本整備審議会 住宅宅地分科会に「空き家対策小委員会」を設置しました。今後の空き家の発生抑制、利活用、適切な管理・除却等のあり方について議論され、対策が検討されています。
また同時期に「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」も開催されており、マンションの管理や修繕、再生を巡る問題について幅広く議論が行われました。戸建てと同様マンションについても「建物の老朽化・住民の高齢化」が問題となっており、適切な管理が求められているのです。
空き家対策の課題
- 景観や治安の悪化につながる
- 解体費用が掛かる
- 空き家より更地の方が税金が高い
- 個人の資産のため行政の立ち入りが難しい
人が住まない空き家になってしまうと、建物や敷地の手入れがされず周囲の景観に悪影響を与えてしまいます。また不法侵入や放火といった犯罪につながる可能性があり、空き家の多いエリアは治安が悪くなりがちです。
一方で空き家を解体しようと思っても、数百万円単位の解体費用が掛かるのが負担という声は多いです。さらに建物があると「住宅用地特例」で安くなっていた固定資産税が、更地にすることで「6倍に上がる」という点も解体のハードルを上げています。
空き家になっていても「個人の資産」のため行政が介入するのは難しく、対応に時間がかかってしまうのが現状です。
空き家問題を解決するための対策
ここでは、空き家問題を解決するための対策をご紹介します。AIを活用したサービスなど、空き家対策でもDX化が進んでいます。
「行政代執行」で空き家を強制解体
「行政代執行」とは、空き家の持ち主の代わりに解体や撤去をする行政処置のことを指します。持ち主不明な空き家に関しては「略式代執行」が行われます。この制度は2015年から施行され、2020年度には行政・略式を合わせて89件が解体されました。
解体にかかる費用は一旦行政が立て替えますが、後日「所有者に請求される」仕組みとなっています。ただしいきなり行政が解体するわけではなく、いくつかのステップを経る仕組みです。まず「特定空き家」に認定され、戒告を受けても対策を取らなかった場合に費用が強制徴収されるのです。
そもそも「特定空家等」とは、下記のような空き家のことを指します。
- ① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- ② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- ③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
行政代執行が行われるのはいわば「最終手段」のため、なるべく避けられるよう所有者が対策を取っておくのがおすすめです。
また、2022年11月には「改正所有者不明土地法」が施行されました。こちらは所有者不明土地のスムーズな利用をはかる法律で、備蓄倉庫・再生可能エネルギー発電設備といった「公益性の高い施設として活用する」のが主な目的です。
建物倒壊など災害発生の恐れがある場合には、管理不全土地管理命令の請求権を「市町村長に付与」するなど大きな権限が与えられているのが特徴となっています。これにより、空き家管理がさらにスピーディーに行われることが予想されるでしょう。
空き家改修の「補助金制度」
各自治体では、空き家活用のための補助金を交付しているケースが多いです。たとえば横浜市では、市内に移住する子育て世帯、若年等世帯に向けた補助金制度を実施しています。補助率は1/2で、「子供のための改修工事」では上限100万円、「耐震改修工事」では上限150万円が受け取れます。
空き家をリフォームすることで、子育て世帯が流入しやすい街づくりを目指していることがわかります。ほかにも空き家に関する補助金制度のある自治体は多いので、ぜひお住まいの地域をチェックしてみましょう。
売却がお得になる「3000万円控除」
本来相続した空き家を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」を支払う必要があります。しかし「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」(空き家特例)が適用されれば、「最大3000万円」が控除される仕組みとなっています。
ただし3000万円控除の適用には、いくつかの条件があります。
- 相続開始の日から3年までに譲渡されること。
- 相続直前まで居住している場合のほか、老人ホーム入居の場合も適用可能。
2019年からは、要望を受けて老人ホームに居住していた場合も適用対象となりました。
空き家対策に最新技術「DX活用」
地方の実家が空き家になっている場合などは、管理や売却のためにわざわざ通うのが大変です。こういった事情から、最近では空き家にもDX技術を活用する動きがみられています。
AKIDAS(アキダス)は、空き家を活用したい不動産関連事業者向けにデータベースを提供するサービスです。現地にいる調査員が空き家情報を登録する仕組みのため、都市部にある業者でも気軽に情報が得られるのがメリットでしょう。
一方で「クラッソーネ」は、空き家の解体工事会社と施主をマッチングする「見積サービス」となっています。物件情報を入力すれば最短1分で概算見積が把握できる「解体費用シミュレーター」が特色です。令和3年度・令和4年度の国土交通省「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に2年連続で採択されています。京都府亀岡市、埼玉県上尾市など多くの自治体と連携協定を締結しており、さらなる広がりが見込まれます。
空き家対策の活用事例
ここでは、自治体で行われている空き家対策の事例をご紹介していきます。
事例①東京都
東京都都市整備局では、空き家の解決事例をまとめています。上図は相続後3年間空き家となっていた戸建住宅ですが、賃貸併用住宅へと建て替えた事例です。売却後の査定額やリフォームの見積のほか、預貯金・生活費といった具体的な費用のシミュレーションも行いました。
売却や建て替えといった様々な空き家活用パターンを検討した結果、将来的にも収益が得られる「賃貸併用住宅」がベストと選択されました。行政の窓口相談で、理想的な空き家活用ができた好例の一つです。
事例②長野県
こちらは空き家となっていた民家を、市町村の体験交流施設に改修した事例です。元々の梁や柱といった構造部材はそのまま生かし、床材などの内装をリフォームすることで新しく生まれ変わりました。
また長野市では「空き家バンク登録促進等事業補助金」を実施しています。空き家の清掃や家具の処分・運搬にかかる費用を補助するという内容で、補助金額は「対象経費の4分の3以内 上限15万円」となっています。
さらに「移住者空き家改修等補助」では、他地域から長野に移住する方向けに改修工事費用をサポートしています。補助金額は、改修工事が「最大100万円」、家財道具等処分が「最大10万円」です。さらに中学生以下の子供がいる場合は「1人につき10万円、最大30万円」を上限額に加算する仕組みとなっています。何かとお金のかかる子育て世帯には、リーズナブルに広い住環境が手に入るのは魅力的でしょう。
事例③群馬県
こちらの群馬県の事例では、市街中心地の戸建て住宅を駐車場に転用しています。中には家具などがたくさん残っていた状態のため、整理が進まずしばらく放置されている状態でした。しかし老朽空き家対策事業補助金の養鶏を満たしていたため、補助金も受けて解体・整備を行いました。転用後は駐車料金の収入も得られ、一石二鳥の活用方法です。
空き家問題は適切に対策しよう
都市部に住んでいる方でも「地方にある実家を相続することになった」など、突然空き家問題に直面することは意外と多いです。空き家はそのまま放置すると近隣の迷惑になるほか、最悪の場合は行政代執行で解体され費用を請求される場合も。
基本的に空き家は個人の資産のため、各々での対応が求められます。DXを活用した解体シミュレーションを活用したり、賃貸住宅や駐車場に転用したりするなど、対策をチェックしておきましょう。