【2026年版】建設工事とは?許可・契約・変更管理まで「実務順」でわかる完全ガイド

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著者:鈴原 千景

建設工事は「建物を建てる工事」だけではなく、土木・改修・維持補修まで含む広い概念です。さらに近年は、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、現場の回し方(工期の組み方・段取り・変更管理)が変わっています。

また、国交省は「建設業法等改正法が完全施行」される旨を公表しており、令和7年12月12日から完全施行とされています。本記事では、浅い用語解説で終わらせず、「受発注で迷わない順番」に合わせて、建設工事の全体像をみていきましょう。

建設工事とは

建設工事とは、建物や土木構造物などを新設・改修・解体し、目的とする状態に完成させるための工事を意味します。実務では、請負契約のもとで「完成」まで責任を負う工事を指す場面が多く、設計・施工・監理の分担や契約範囲によって必要な許可・体制の確認ポイントが変わります。

建設工事の「定義」で押さえるべきポイント

建設工事は制度上の区分(業種)と実務上の呼び方(工種)が混ざりやすく、ここが最初の誤解ポイントです。大事なのは「呼び名」ではなく、何を成果物として、誰が完成責任を負うのか。請負であれば、施工の出来だけでなく、引渡し要件・是正・保証対応まで含めた整理が必要になります。

一般建設業と特定建設業

一般建設業と特定建設業の区分は、下請に出す金額と下請構成が固まらないと判断できません。元請として工事を受ける場合、下請に出す金額と下請構成によって、必要な体制が変わります。

判断を誤った場合、契約は成立しても配置や書類運用が追いつかず、着工や工程に影響が出るといえるでしょう。

観点一般建設業特定建設業注意点
判断の軸元請として下請に出す金額が基準未満元請として下請に出す金額が基準以上当初契約だけでなく追加変更後の着地も対象
体制への影響体制要件が相対的に軽い体制要件が重い(配置・書類負荷増)体制未整備は着工遅延の原因
受注前に固める項目下請比率、配置予定、施工体制の概略下請構成の確定、配置予定の確定境界付近は下請構成の固定が先

土木工事と建築工事の違い

土木工事と建築工事は、対象物と目的で分けられます。ただし、実務では土木要素と建築要素が同一案件に混在するため、「工種の呼び方」だけで判断すると、許可や体制の整理が後手になります。

観点土木工事建築工事実務で注意する点
主な対象道路・橋梁・河川・造成・上下水道などを対象にする住宅・ビル・工場などの建物や、改修・更新を対象にする工事造成+建物、外構+設備更新のように要素が混在する案件が多い
現場の会話掘削・埋戻し・舗装・管路など、工程や作業で話が進む躯体・仕上・設備・改修など、部位や工種で話が進む会話は工種で成立しますが、許可や体制は工種だけで決まらない
整理の単位許可・技術者・書類は制度上の業種区分に沿って異なる許可・技術者・書類は制度上の業種区分に沿って異なる「現場の呼び方」と「制度の区分」を分けて考える

建設工事の進め方

建設工事の流れは、ある程度決まっています。しかし、工程や品質、コストが安定しないケースも珍しくありません。この課題は、施工フェーズの技術不足ではなく、入口(見積・契約)で前提条件が固まっていない点と変更の管理ができていない点が原因です。

ここでは、現場が荒れないために必要な「順番」と「決め切るポイント」についてみていきましょう。

入口(見積)で確定しておくべき施工条件

見積は金額算定ではなく、施工の成立条件(前提)と責任分界を確定する工程です。見積条件・特記・内訳の情報に以下を追記するとスムーズな工事につながります。

  • 搬入・作業条件:動線/車両制限/荷下ろし/作業時間(音出し・休日夜間)/近隣制約(誘導員・周知・一次窓口)
  • 既存条件:既存図の位置付け/調査範囲(天井裏・床下・PS等)/未確認部の扱い(含む or 変更対象)
  • 養生・仮設・撤去:養生範囲/仮設内容/撤去線引き・産廃区分/「含む・含まない」
  • 別途工事・取り合い:工種境界/開口貫通復旧/停電断水・申請・立会いの段取り責任
  • 支給材:遅延時の工期・待機/不良時の再施工費/受入検査の責任分界

ポイントとしては、未確認部分は「条件」ではなくリスクとして、扱い(包含/除外=変更対象)を決めずに着工しないことです。BIM/CIMを活用したシミュレーションなどもリスク回避に役立ちます。

追加変更を揉め事にしない運用ルール

BIM/CIMを使用しても追加変更は、発生します。揉めるのは変更ではなく、合意内容が未定義のまま施工が進むときだといえるだろう。そのため、変更管理は「現場対応」ではなく、契約運用の設計として先に決めなければなりません。

運用ルールは次の5点を意識しましょう。

  • 承認前着手の禁止:口頭指示のみでは着手しない。例外(漏水・安全等)を認めるなら、例外条件/承認者/事後起票期限/暫定単価をセットで規定。
  • 手順の順番固定:起票 → 承認 → 単価確定 → 着手。順番を崩すと未合意・未回収が残るため、必ず守る
  • 承認期限の設定:起票から回答までの期限(例:2営業日)と、遅延時の連絡ルール(回答予定日通知)を決める
  • 単価決定方式の固定:都度見積/単価表/実績精算(工数×単価+材料)のいずれかを事前合意し、都度交渉を発生させない
  • 証跡の標準化:誰が・いつ・何を・いくらで承認したか(起票日、依頼者、承認者、内容・数量、単価・金額、承認日時)を必ず残す

よくある失敗と回避策

建設工事が崩れる主因は施工技術ではありません。多くは、代表的な失敗は次の3つです。

失敗1:前提条件が不一致のまま契約し、追加変更が連続するケース

見積時に施工条件・別途範囲・支給材の責任分界が整理されないまま契約すると、着工後に想定外。その結果、追加変更が累積し、最終的には金額ではなく契約解釈の問題に発展します。

回避策としては、見積や前提条件をできる限り確認しておくとよいでしょう。

  • 搬入・作業制約を数値で明確化
  • 別途工事と取り合いの線引きを明文化
  • 支給材の遅延・不良時の責任区分を規定

失敗2:変更承認が滞り、工程と原価が同時に崩れるケースです

変更起票は存在しても、承認期限や単価決定方式が未定義の場合、承認待ちによる停滞や未合意着手が発生します。その結果、工程の遅延とコストの悪化が同時進行に進むことになるといえるでしょう。

回避策は、変更ルールを契約内容に含めると、コストの増加や工程の遅延などが発生してもリカバリーしやすくなります。

  • 承認期限を設定
  • 例外着手の条件・承認者・事後期限を規定
  • 単価決定方式(都度見積/単価表/実績精算)を事前合意

失敗3:図面・指示が分散し、手戻りが常態化するケースです

図面や指示がメール・口頭・チャットに散在し、最新版の管理が徹底されない場合、誤施工や二重施工が発生します。そのため、情報管理を一本化すれば、リスクを避けられるでしょう。

  • 最新版図面の単一管理
  • 承認履歴の一元化
  • 指示経路の固定

重要なのは、ツールの導入ではなく、運用方法にあるといえます。

まとめ

建設工事は新築だけでなく土木・改修・維持補修まで含む概念で、許可・体制・契約整理は「呼び名」ではなく完成責任で決まります。工事が様々なアクシデントに見舞われる主因は施工ではなく、入口(見積・契約)で施工条件と責任の所在を明確にしていないためです。

追加変更はゼロにできないため、承認前着手禁止として、起票→承認→単価→着手・承認期限・単価方式・証跡の5ルールで未収を防ぐことが求められます。失敗の理由は「前提の不一致」「承認の遅延」「情報の分散」です。前提条件の文書化・情報の変更ルールの認識合わせ・最新情報と過去の情報の一元管理で、トラブルを避けましょう。