【2026年最新版】建築積算とは?やり方・基準・資格・年収・ソフトまで完全解説|実務者向け

建築工事の金額は、感覚や経験だけで決まっているわけではありません。設計図と仕様書をもとに、材料・数量・人件費を積み上げて算出する「建築積算」が、その根拠になっています。
そこでこの記事では、建築積算の基本から、設計者の判断基準、資格・ソフト・AI時代の変化までを初心者向けにわかりやすく解説します。
目次
建築積算とは?初心者にもわかる基本定義
建築積算とは、設計図や仕様書をもとに、工事に必要な材料・数量・人件費を数値化し、工事原価を算出する「お金」に関わる専門業務です。
工事金額のベースとなる重要な工程であり、ここがズレると赤字工事や追加請求トラブルにつながります。まずは以下で説明する「建築積算の基本」を正しく理解していきましょう。
建築における積算とは何をする仕事?
結論から言うと、建築積算の仕事は「設計図をお金に換算する作業」です。
設計図や仕様書には「どんな建物をどう造るか」は書かれていますが、「いくらかかるか」は書かれていません。積算担当者はそれを次のように数値化します。
- コンクリートは何m³必要か
- 鉄骨は何トン使うのか
- 職人は何人工かかるのか
- 重機は何台必要か
これらを拾い出し、国土交通省の「公共建築工事積算基準」や市場単価(建設物価など)を参考に金額へと変換して、工事原価を算出します。つまり積算とは、建物の設計図を「数量」と「金額」に翻訳する仕事なのです。
積算と見積の違い(よくある誤解)
よく「積算」と「見積」は同じだと思われがちですが、役割は明確に異なります。
| 区分 | 内容 |
| 積算 | 工事に実際いくらかかるか(原価)を算出 |
| 見積 | 積算原価に会社の経費・利益を加えて提示する金額 |
積算はあくまで「工事を行うための実費計算」であり、見積は「お客様に提示する販売価格」です。
この違いを知らないと、「なぜ見積が高いのか」「業者がぼったくりをしているのでは」と誤解してしまうかもしれません。実際は、積算された金額に、経費や保証、リスク対応費が上乗せされているケースがほとんどです。
積算が建設プロジェクトで重要な理由
積算が重要な理由は、「工事の成否がここで決まる」からです。
国土交通省の公共工事では、積算基準にもとづかない見積は契約不成立や監査指摘の対象になります。また民間工事でも、積算が甘いと以下のリスクが発生します。
- 工事発注後に予算オーバーだとわかる
- 追加工事のトラブルが起きる
- 施工会社が赤字になり品質が落ちる
積算は、お金と品質を守る安全装置です。正しい積算があってこそ、設計どおりの建物が適正価格で実現します。
建築積算のやり方|実務の流れを5ステップで解説
建築積算は「なんとなく計算する作業」ではなく、全国でほぼ共通した手順で進められる業務プロセスがあります。
ここでは、設計事務所・ゼネコン・積算事務所で実際に行われている標準的な5ステップを、初心者にもわかる形で整理します。この流れを知ることで、「なぜこの見積金額になるのか」を論理的に説明できるようになります。
【1】図面・仕様書の読み取り
積算の出発点は、設計図と仕様書を正確に読み解くことです。
図面には平面図・立面図・断面図・詳細図などがあり、仕様書には材料の種類、施工方法、仕上げのグレードなどが記載されています。そして、積算担当者はここで次の点を確認します。
- 構造(RC造・S造・木造など)
- 仕上げ材の種類(タイル・塗装・ALCなど)
- 設備のグレード(空調方式、給排水仕様)
国土交通省の公共工事では「設計図書の内容を忠実に反映すること」が積算の原則とされています(発注後に交付される設計図書にも同様の記載があります)。
図面を誤読すると、その後の数量も金額もすべてズレるため、最も重要な工程です。
【2】拾い出し(数量計算)
拾い出しとは、「図面上の情報を数量に変換する作業」です。
たとえば、壁の長さ×高さで仕上げ面積を求めたり、基礎の形状からコンクリート体積を算出したりします。主な拾い出し対象は以下のとおりです。
- コンクリート(m³)
- 鉄筋(kg・t)
- 内装仕上げ(m²)
- 建具(枚・箇所)
なお、拾い出しの単位は、国土交通省の積算基準などで細かく定められています。たとえば舗装に使うコンクリートは㎥ですが、アスファルトは㎡で算出するなど、違いがある点に注意してください。
なお、BIM(3D設計)が導入されている現場では、モデルから自動で数量を算出することもあります。ただし、最終チェックは人が行わなければなりません。
【3】単価設定(値入)
数量が出たら、それに単価を掛けます。これを「値入」と呼び、基準は工事の種類によって異なります。
| 工事種別 | 単価の基準 |
| 公共工事 | 国交省「公共建築工事積算基準」 |
| 民間工事 | 建設物価、積算資料、実勢価格 |
ここで重要なのは、「最安値」ではなく、なぜこの単価なのかを「説明できる価格」を採用することです。後から監査や施主説明が求められるため、根拠のある単価でなければなりません。
【4】工事原価の計算
【3】の準備が完了したら、単価と数量を掛け合わせ、工種ごとに合計します。工事原価は次の3要素で構成されます。
工事原価=直接工事費+共通仮設費
(出典:国土交通省「公共建築工事積算基準」)
直接工事費には、材料費(コンクリート・鉄骨・仕上材など)と労務費(職人の作業)などが含まれています。対して共通仮設費には仮囲い、現場事務所、仮設電気・水道、仮設トイレ、安全設備など、工事を行うための共通インフラにかかる費用が含まれます。
そして、この合計が「純粋な工事原価」です。施工会社はここに会社経費や利益を加えて見積金額を決めます。
【5】内訳書・見積書の作成
最後に、計算結果を「内訳明細書」や「見積書」にまとめます。この書類が、発注者・設計者・施工者の共通言語になります。なお、内訳書が細かいほど、次のメリットがあります。
- 価格の妥当性が説明できる
- 追加変更時の交渉がスムーズ
「一式」だらけの見積書はトラブルの元になるため注意してください。
設計者はどのように積算額を決めているのか?
建築設計者が算定する積算額は、単なる「足し算」ではありません。その金額が将来の契約・工事・紛争に耐えられるかを考えながら数字を決めています。
つまり建築積算は、価格算定であると同時にリスク管理の仕事です。ここを理解すると、なぜ設計者が特定の単価や資料を選ぶのかが見えてきます。
設計者はなぜ「積算資料」を複数使い分けるのか?
結論から言うと、設計者が複数の積算資料を使う理由は「価格の正確性」ではなく「説明責任」を守るためです。
建設工事は、完成までに設計変更・物価変動・工法変更が必ず発生します。そのたびに、発注者・施工者・監査機関に「なぜこの金額なのか」を説明できる根拠が必要になります。そのため設計者は次のような資料を併用します。
- 国交省の積算基準(公的な基準)
- 建設物価・積算資料(市場価格)
- メーカー見積(実際の調達価格)
- 過去の工事実績(現場での再現性)
※各基準等の情報は後述
これらを突き合わせることで、価格がぶれにくく、かつ第三者に説明できる積算を作ります。一つの資料だけで積算すると根拠が弱まるため、実務では非常に危険です。
なぜ設計事務所によって積算がズレるのか?
設計事務所ごとに積算がズレる理由は、「どのリスクをどこまで織り込むか」の考え方が違うからです。同じ図面でも、設計者によって次の判断が異なります。
- 施工が難しい部分をどれだけ割増するか
- 市場価格の変動をどこまで見込むか
- 将来の設計変更リスクを考慮するか
公共工事を多く扱う設計事務所は、国交省基準を厳格に適用し、価格の再現性を重視します。一方、民間建築を多く扱う設計事務所は、市場価格やメーカー見積を優先し、現実的な調達コストを重視します。
つまり積算の差は「いい加減さ」ではなく、設計者の経験と重視するポイントの違いによって生まれます。
設計者が使う積算参考資料の種類と役割
建築業務に関わる設計者が積算をする際、1つの資料だけで対応することはありません。なぜなら建築工事の価格は、工事内容・市場環境・契約条件によって常に変動するからです。
設計者は主に、公的基準・市場価格・実際の調達価格・過去実績という4つの視点から積算資料を使い分けます。以下よりそれぞれの役割を紹介します。
公共建築工事積算基準(国土交通省)
国や自治体が発注する公共工事では、公共建築工事積算基準が積算の絶対ルールになります。設計者は、次のような場面で、予定価格や内訳書を作成します。
- 官庁・学校・病院などの公共建築
- 補助金が入る事業
- 監査・会計検査を受ける工事
この基準の強みは「全国で統一された公平性」です。積算の基本ベースになると理解しておきましょう。
建設物価・積算資料(建設会社向け)
建設物価や積算資料(経済調査会など)は、建材・工事単価の市場価格を毎月調査してまとめた民間データです。
たとえば、前述した公共建築工事積算基準に工事項目がない場合や、個別で積み上げなければならない「特定の費用の内訳」などに用います。
国の基準よりも市場に近いため、「実際に業者が仕入れられる価格」を反映した積算ができます。
メーカー見積・カタログ
メーカー見積やカタログは、特定の製品・設備の「実際の購入価格」を知るために使います。
設計時には、積算基準に定められていない工事や材料で、新技術や最新の製品を使うといったケースがあります。この際、積算基準では対応できないため、メーカーから取得した見積を根拠として利用します。
なお、類似のメーカーがある場合には、3社見積もりを行い、そのなかで安価になるものを費用として採用するのが一般的です。
また、設計図だけでは価格が読めない設備工事では、メーカー見積が積算の根拠になります。
過去の実行予算・工事実績
実行予算とは、施工会社が実際に工事を行ったときのリアルなコストです。次のような場合に、積算で用いるケースがあります。
- 同じような規模・用途の建物
- 新しい工法や特殊工事
- 積算基準が実態と合わない場合
条件は絞られますが、「理論値」ではなく「現場で本当にかかったお金」を反映でき、精度の高い積算が可能になります。
業務別|設計者が重視する積算基準の違い
設計者がどの積算基準を重視するかは、「どんな建物を」「誰のお金で」建てるのかによって大きく変わります。公共工事と民間工事、オフィスと病院では、求められる積算の考え方がまったく異なるからです。
参考として以下に、業務別の積算基準の違いを紹介します。(あくまで目安です)
| 建築の種類 | 設計者が重視する積算基準 | 理由 |
| 公共建築(庁舎・学校・病院) | 国交省 公共建築工事積算基準 | 監査・会計検査に耐える必要があるため |
| 民間オフィス・商業施設 | 建設物価・積算資料 | 市場価格に近い金額が求められるため |
| 病院・研究施設 | メーカー見積+国交省基準 | 高額設備の実勢価格が重要なため |
| 工場・物流施設 | 過去の工事実績 | 工法・工程の再現性を重視するため |
| BIM設計案件 | BIM数量+積算基準 | 数量の正確性と説明性を両立するため |
なお国の事業などでは、公共建築工事積算基準をベースにするのが基本ですが、民間企業などの場合は、クライアントによって用いる基準やルールがばらつきます。設計図書でどのように積算すべきかを確実にチェックしてください。
建築積算に向いている人の特徴
建築積算は「数字の仕事」というイメージを持たれがちですが、実際には図面理解力・論理思考・コミュニケーション力を組み合わせる専門職です。
人によって向き不向きがあるため、自身向きの仕事なのかをチェックしてみてください。
向いている人のタイプ
建築積算に向いているのは、設計事務所・ゼネコン・デベロッパーでキャリアを積みたい人のようなタイプです。
- 図面や細かい数字を見るのが苦にならない
- なぜこの金額になるのかを論理的に説明したい
- 設計・施工の全体像を理解したい
- 価格交渉や根拠説明に強くなりたい
積算は「建物をお金で設計する仕事」とも言われます。現場作業が少なくても、設計や工事の中枢に関われる点が大きな魅力です。
向いていない人の共通点
一方で、正確性を求められる点をストレスに感じるタイプの人は、積算が苦しくなりやすい傾向があります。
- 曖昧な数字や仮定が苦手
- 図面を見るのが極端に嫌い
- 価格の根拠を説明するのが苦手
- 変化の少ないデスクワークが合わない
積算は「だいたい」では通用しません。数値に責任を持ち、後から検証されても説明できる仕事です。
建築積算ソフトとは?手計算との違い
建築積算ソフトとは、図面や数量データをもとに工事費を自動計算する専門ツールです。たとえば、次のようなソフトが提供されています。
- 積算ソフト(建設物価調査会)
- 建築みつも郎17
- BI for ArchiCAD
手計算では拾い出し・単価入力・集計をすべて人が行うため、ミスや作業時間が課題になります。一方、積算ソフトを使えば、数量の再計算や設計変更にも即座に対応でき、根拠付きの内訳書を自動生成できます。
特にBIM連携型の積算ソフトでは、3Dモデルから数量を取得できるため、設計変更が多いプロジェクトで威力を発揮します。積算精度とスピードを両立させるため、現在の実務ではソフト活用が標準になりつつあります。
建築積算士とは?資格の価値と勉強方法
建築積算士は、公益社団法人日本建築積算協会が認定する、工事費を適正に算定できる専門家資格です。
設計事務所やゼネコンで積算担当として信頼される指標になり、公共工事や大型案件では評価されやすい資格です。また、勉強方法としては、公式テキストで積算基準と内訳構成を理解し、過去問題で出題傾向を把握するのが王道です。
実務経験がある人ほど有利ですが、設計や施工管理からのステップアップ資格としても活用できます。
建築積算はAI時代にどう変わるのか?
AIとBIMの普及により、建築積算は「数量を拾う仕事」から「金額を判断する仕事」へと変化しています。実際、日本建築積算協会では「BIM概算ガイドブック」も公開されています。
すでにBIMモデルから自動で数量を算出し、AIが単価候補を提示する技術は実用段階に入っています。しかし、設計条件や工事リスク、市場動向をどう反映させるかは人間の判断が不可欠です。
今後の積算担当者には、単なる計算力ではなく、設計意図と価格の妥当性を説明できるスキルが求められます。AIは積算者を置き換えるのではなく、強力な補助役になる存在です。
まとめ
建築積算は、設計図をもとに工事費の根拠をつくる建設プロジェクトの中核業務です。
設計者は国交省基準や建設物価、メーカー見積、実績データを使い分けながら、トラブルにならない金額を設計しています。AIや積算ソフトの進化により計算作業は効率化されますが、価格の妥当性を判断する力は今後も人に求められます。