【2025年版】建築コンサルタントとは?建設コンサルタントとの違い・年収・大手企業ランキングを徹底解説

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Category:コラム建築
Tag:建築

著者:上野 海

建築コンサルタント(建築コンサル)とは、建物の設計・施工・維持管理に関して、専門知識をもとに最適な提案を行う「建築のアドバイザー」です。建築士やゼネコンと違い、中立的な立場からコスト・品質・省エネ・法令対応などを総合的にサポートします。

一方で、「建設コンサルと何が違うの?」「年収や将来性は?」と疑問をもつ方も多いでしょう。

そこでこの記事では、建築コンサルタントの仕事内容・必要スキル、建設コンサルとの違い、年収・キャリアパス・大手ランキングについてわかりやすく解説します。

建築コンサルタントとは?

建築コンサルタントとは、建築分野における専門的なコンサルティングサービスを提供する職種です。

設計事務所やゼネコンと連携しながら、建築物の企画・設計・コスト・品質・環境性能までを総合的にマネジメントします。主な役割は以下の通りです。

  • クライアント(企業・自治体・個人)の建設計画に対する助言
  • 設計・施工の最適化提案(コスト削減・省エネ・法令遵守)
  • 建物の資産価値を高める長期維持・管理計画の策定
  • BIMや環境認証(ZEB/CASBEE等)への対応支援

なお、建築コンサルタントは、第三者的な立ち位置ではなく、建築士のように実際に設計対応をするケースも多いです。企業によって、業務の立ち位置が変化しやすい点に注意しましょう。

主な仕事内容(設計支援・省エネ・コスト最適化・BIM導入など)

以下に、建築コンサルタントの仕事内容の例をまとめました。

業務区分内容主な関係者
設計支援建築士や設計事務所へのアドバイス、設計段階の妥当性検証建築士・発注者
省エネ提案ZEB/CASBEE対応、省エネ設備設計、環境認証取得サポート設計事務所・設備会社
コスト最適化VE(Value Engineering)・原価分析・材料選定の助言ゼネコン・施主
BIM導入支援BIMによる設計・施工・維持管理プロセス最適化設計事務所・施工会社

コンサル業務のみ実施する場合は、アドバイスや監修、提案などをメインに行いますが、設計事務所兼コンサルといった立ち位置の会社の場合には設計業務や工事費算出、BIM活用などまで幅広く対応します。

また、建築コンサルタントのなかでもメイン業務になる建築設計について詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです▼

建設コンサルタントとの違い

建築コンサルタントと混同されがちな職種に、「建設コンサルタント(建設コンサル)」があります。名前は似ていますが、対象とするフィールドが次のように異なります。

項目建築コンサルタント建設コンサルタント
主な対象建物(ビル・商業施設・病院・学校など)社会インフラ(道路・橋・河川・上下水道など)
業務範囲設計支援、BIM導入、コスト管理、省エネ提案など調査、計画、設計、施工監理、維持管理など
クライアント民間企業・自治体・設計事務所など国土交通省、地方自治体、公団など
活躍フィールド建築設計・再開発・リニューアル・環境建築公共事業・防災計画・地域開発・インフラ維持

このように、建築コンサルタントが「建物」を扱うのに対し、建設コンサルタントは「道路・橋梁・ダム・上下水道」などの社会インフラ全般を扱います。

どちらも国や自治体、民間企業の技術的支援を担う「技術コンサルタント業」ですが、役割や専門性には明確な線引きがある点に気を付けてください。

また、建設コンサルタントの仕事に興味をおもちなら、以下の記事がおすすめです▼

建築コンサルタントの平均年収・キャリアパス

建築コンサルタントの年収は、経験・資格・担当領域によって大きく変わります。

ここでは、平均年収の目安やキャリアパスについて紹介します。

平均年収と役職別相場(新卒〜管理職)

建築コンサルタントの平均年収は、国などから明確な年収情報が公開されていません。そのため、求人情報サイトなどをもとに、一般的な想定年収の目安を職位ごとに整理しました。

職位想定年収(目安)備考
新卒・アシスタント約350〜450万円設計補助・資料作成など
若手技術者(3〜5年目)約450〜600万円プロジェクトサポート・BIM補助
主任・リーダー職約600〜750万円設計統括・コスト管理・省エネ提案
マネージャー・課長級約750〜900万円チーム統括・顧客折衝・案件提案
シニアコンサル・部長級約900〜1,200万円以上経営戦略・大型案件対応・DX推進

企業によって差はあるものの、日本全体の平均年収461万円(出典:国税庁)と比較しても、高単価であることがわかります。技術系の専門分野で働くため、安定した収入を維持しやすいのが魅力です。

将来性とキャリアの展望(BIM/脱炭素/長寿命化など)

ものづくりの分野は将来的にもなくなることがないため、建築コンサルの将来性は非常に高いと言えます。参考として、今後の成長が期待される領域を整理しました。

  • BIMマネジメント
    建築情報モデリングによる設計・施工効率化
  • ZEB/ZES提案
    エネルギー自給型建築への設計支援
  • リノベーションコンサル
    既存建築の長寿命化・省エネ化提案
  • 災害レジリエンス設計
    防災・減災に強い建築構造支援
  • ESG/脱炭素戦略支援
    不動産・企業の環境経営サポート

なかでも注目が集まっているのがBIM関連業務です。近年では従来のCADソフトからBIMソフトへと移行する動きがあるため、早期にBIMの知識や技術を習得しておくことで、将来的な活躍につながります。

上記のうち、BIMに関する基本知識を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼

建築コンサルタントの大手企業ランキング

民間建築分野で活躍する建築コンサルタント系の企業は、設計支援・再開発・環境建築の専門性が高い傾向があります。代表的な企業例は以下の通りです。

企業名特徴
日建設計コンストラクション・マネジメント国内最大の建築CM会社。BIMとコストマネジメントに強い。
山下PMC株式会社プロジェクトマネジメント(PM・CM)分野でトップクラス。大型再開発案件多数。
久米設計設計・コンサル両方を手掛ける総合型。ZEB対応案件多数。
梓設計官公庁・空港施設・公共建築物に強く、BIM活用先進企業。
アール・アイ・エー(RIA)デザイン×技術提案の融合型企業。地方創生・文化施設に強い。

それぞれ、「建築コンサル×設計・マネジメント・環境対応」の複合型業務を展開しています。今後は脱炭素・ZEB化・ESG経営対応のニーズ増加によって、さらなる市場拡大が予想されます。

建築コンサルタントが「やめとけ」と言われる理由とその真実

建築コンサルタントについて「やめとけ」と言われる背景には、次のような課題があります。

  • 建築案件はクライアントの要望変更が多く、スケジュール調整が難しい
  • 設計判断やコスト提案が直接プロジェクト成否に関わるため、ミスが許されない
  • 繁忙期には長時間労働が発生しやすく、業務負荷が集中する傾向がある
  • 自治体・企業・設計事務所など関係者が多く、調整力と忍耐力が求められる

ただし、近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と働き方改革が進んでおり、技術効率化により、以前よりも働きやすい環境が整備されつつあります。次のような人たちに向いている業種です。

向いている人向かない人
問題解決や提案が好き単純作業を好む
建築・設計への情熱がある建築業界への関心が薄い
納期や調整を管理できるストレス耐性が低い
チーム連携を重視する個人作業中心を希望する

建築コンサルタントで役立つ資格一覧

建築コンサルタント業界では、資格がキャリアと年収に直結するのが特徴です。

特に国や自治体から発注を受ける業務では、資格保有者の有無が「入札条件」や「技術点」に影響することもあります。以下に業務に直結する資格を整理しました。

資格名特徴・内容難易度活躍フィールド
一級建築士設計・監理の最高峰。建築コンサルタントではクライアント提案に必須。★★★★★設計支援・再開発・PM/CM
建築設備士設備設計・空調・電気の知識を評価。BIMモデルにも直結。★★★★☆省エネ・ZEB案件
BIMマネージャー/Revit資格デジタル設計の要。企業DX化で需要急増。★★★☆☆BIM設計・モデル監理
ZEBプランナー/省エネ建築診断士脱炭素対応を評価。補助金申請業務にも関与可能。★★★☆☆官公庁案件・環境設計

特に近年は、「BIM+ZEB+サステナブル設計」の3要素を理解する人材が圧倒的に不足しています。上記の資格をもつ建築コンサルタントであれば、設計・環境・行政対応の主力人材として高評価を得やすくなります。

上記の内、権威的な資格として挙げられるのが建築士です。受験資格を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼

建築コンサルタントについてよくある質問【FAQ】

建築コンサルタント大手5社はどこ?

建築コンサルタント大手5社には、日建設計、久米設計、山下設計、日本設計、三菱地所設計などがあります。いずれも官民プロジェクトに強く、BIM・ZEB対応や海外展開など、建築の総合コンサルティング力に定評があります。

建築コンサルタントの仕事内容は?

建築コンサルタントの仕事は、建物計画・設計支援・コスト最適化・BIM導入支援・省エネ提案など多岐にわたります。設計事務所や企業のパートナーとして、構造・環境・設備・法規の側面から建築プロジェクトを支える役割です。

建築コンサルタントはBIMやDX化で今後どう変わる?

BIMやDX化の進展により、設計から維持管理までデジタル連携型の建築プロセスが標準化されつつあります。特に建築コンサルタントでは、BIMマネージャーやデータエンジニアなど新しい職種の需要が急増しています。

まとめ

建築コンサルタントは、建物づくりの上流工程で課題を発見し、最適な解決策を提案する専門職です。

設計や施工とは異なり、企画・分析・改善提案に重点を置く職種であり、民間・官公庁どちらの案件でも重要な役割を担います。また、建設コンサルとの違いを理解すれば、自分に合ったキャリアをより明確にできるでしょう。

建築系の仕事に興味をお持ちなら、提案という立場で仕事に関われる建築コンサルタントを検討してみてはいかがでしょうか。