国土交通省発表 5月の建築着工床面積、非居住用が堅調維持、倉庫・通信施設が好調続く

国土交通省がまとめた令和7年5月の建築着工統計によると、全国の建築物の着工床面積は合計700万平方メートルとなり、前年同月に比べて16.3%の減少となりました。これで2カ月連続のマイナスとなり、建築業界における停滞傾向が浮き彫りとなっています。

公共建築は4カ月連続減少、民間主導も鈍化

建築主別に見ると、公共部門の着工床面積は230千平方メートルで、前年同月比15.0%の減少となり、4カ月連続で前年を下回りました。特に市区町村による建築が落ち込み、施設整備やインフラ更新の鈍化が指摘されています。

民間部門も厳しい状況にあります。着工床面積は6,767千平方メートルで、前年同月比16.4%減。企業活動や個人による新規開発が抑制されており、先行き不透明感が強まっています。

居住用建築の不振が顕著 住宅市場の冷え込み続く

民間による居住用建築は3,466千平方メートルで、前年同月から36.8%も減少しました。特に個人住宅や分譲マンションの新設が落ち込み、住宅ローン金利の上昇や建設コストの高騰、資材不足の影響が色濃く表れています。

居住用のうち、居住専用住宅は3,324千平方メートル(前年同月比32.6%減)、住居と事業を併用するタイプは143千平方メートル(同74.2%減)と大幅な落ち込みを記録しました。特に併用住宅の減少率が顕著で、個人事業主による建築が大きく減っている様子がうかがえます。

非居住建築物は4カ月連続増加 物流・製造・通信で需要拡大

一方、非居住用建築物は明るい材料も見られました。着工床面積は3,531千平方メートルで、前年同月比22.8%の増加となり、4カ月連続のプラスとなっています。用途別では以下のような伸びが確認されました。

■主な増加項目

・製造業用:763千平方メートル(前年同月比39.0%増)

・情報通信業用:61千平方メートル(同81.0%増)

・卸売・小売業用:445千平方メートル(同32.3%増)

・金融・保険業用:19千平方メートル(同43.4%増)

・運輸業用(主に倉庫):1,212千平方メートル(同134.0%増)

特に倉庫やデータセンターなど、Eコマースやデジタルインフラに関連する施設の着工が好調でした。これらの業種では、DX推進や物流網再編の動きが活発になっており、建築需要を下支えしています。

■減少が目立つ分野

一方で以下の用途ではマイナスとなりました。

・不動産業用:41千平方メートル(前年同月比85.0%減)

・医療・福祉用:192千平方メートル(同21.6%減)

・その他サービス業用:189千平方メートル(同28.4%減)

これらの分野では、採算性や需要見通しの不透明感から、投資が慎重になっていると考えられます。

使途別でも明暗 事務所減少、工場・倉庫が急伸

建築物の使途別に見ると、以下の傾向が見られました。

・事務所:34万㎡(前年同月比31.1%減、7カ月連続の減少)

・店舗:39万㎡(同27.9%増、前月の減少から回復)

・工場:61万㎡(同29.0%増、7カ月ぶりの増加)

・倉庫:133万㎡(同116.2%増、大幅増加)

とりわけ倉庫の伸びが突出しており、Eコマースの成長に対応した大型物流施設の需要が反映されています。逆にオフィスビルは引き続き苦戦しており、テレワーク定着や企業のオフィス縮小傾向が影響していると見られます。

構造別では非木造が堅調、鉄骨造が増加

建築物の構造別では、木造が2,365千㎡で前年同月比33.3%減と大きく減少したのに対し、非木造は4,633千㎡で同3.8%の減少にとどまりました。なかでも鉄骨造(S造)は2,885千㎡で前年より4.6%の増加となっており、工場や倉庫など大型建築への採用が広がっています。

鉄筋コンクリート造(RC造)はやや減少していますが、依然として住宅・マンション用途を中心に主力構造として高い比率を維持しています。

出典情報

国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和 7 年 5 月分)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha705.pdf