積算業務の課題を解決するサービスとはとは~立ち上げに至るまでの背景と積算業務が抱える課題~【前編】

積算業務は近年、積算士の高齢化や残業規制による社内リソースの不足という大きな課題を抱えています。

今回は、そんな積算業務の課題を解決する「積算外注サービス」を提供する株式会社ワイヤベース代表取締役CEOの中村伸志氏にインタビューを行いました。インタビュアーは、3Dスキャンアプリ「Scanat(スキャナット)」を開発したnat株式会社の若狭氏です。

ワイヤーベース立ち上げに至るまでの背景と、積算業務が抱える課題を解説しながら、積算業務の未来展望について語りました。

プロフィール

中村伸志 氏(株式会社WIREBASE 代表取締役CEO)

カリフォルニア大学ロサンジェルス校を卒業後、株式会社YCP Solidianceシンガポール支社に勤務。

大手製造業や保険販売代理店などの東南アジア市場進出・経営戦略支援、新規DX事業立ち上げ、マーケティングプロジェクトを支援。

退職後は、2023年1月に株式会社WIREBASEを創業。

WIREBASE(コーポレートサイト)

積算外注サービスサイト

積算ナビ(積算パートナー登録サイト)

若狭 僚介 氏(nat株式会社)

神奈川県横浜市出身。青山学院大学社会情報学部卒業後、市場調査会社にて事業会社や広告代理店の様々なマーケティング業務に従事。

2022年1月にnat株式会社に参画。セールス部門、マーケティング部門の責任者を経験した後、現在は社長室にてScanatの事業推進を横断的に担当。

異業種からの転身!積算外注サービス立ち上げに至るまでの背景

-では最初に、中村さんのこれまでのご経歴について教えてください。

私自身は建設がバックグラウンドというよりは、全く違う業界から今の事業を始めた経緯があります。

私の両親は、それぞれ独立した個人事業主だったんですね。その背中を追っていつかは独立してみたいという気持ちがあり、それで独立をしたという経緯があります。ですので、何か課題や目標があるというよりは、自分がやってみたいからという気軽な感じで起業したのがきっかけですね。

まず大学を卒業して、シンガポールの日系経営コンサルティングの会社で三年ほど経験を積みました。それから2、3年はWebサイト制作やコンサルティングの案件を受託しながら細々とやっていたのですが、創業して2年目くらいに現在の取締役の仲内が参画したんですね。それからいろいろ事業案を練って進めていきました。

しかし、あまりいい事業案がなかったので一旦ストップして、ニッセイキャピタルのアクセラレーションプログラムに参画しました。そこで、今も投資していただいている担当者の方と一緒に事業検証をしていったんです。

検証を進めていく中で、建設業界はかなりレガシィで、全然DXが進んでいない領域だと。そこでターゲットを絞って、海外の事例を見ていくうちに、この積算領域で何かできるんじゃないかということで、今の事業に至った経緯があります。

-全く違う業界からの起業だったのですね。そうなると、積算業務の課題の特定や自分事化が大変だったのではと思うのですが、その点で気をつけていたことはありますか。

まずは海外の事例を見ていきました。海外では積算をAIで効率化したり自動化する事例があったので、そこを起点にいろいろ考えていったんですね。

しかし、積算を単純にAI化していくのはなかなか難しいので、日本のマーケットに合う形でどう事業を作っていくかというのは、かなり慎重に見極めながら作っていきました。

-事業検証の進め方について教えてください。何社かにプロトタイプを使っていただくような方法でしょうか。

私たちの事業はサービスなので、プロダクト検証というよりは、お客様にニーズがあるかの確認だけでよかったんです。最初は電話営業をして、実際に需要があるのかを確認したんですね。10~20社かけて1社から即採用いただいたので、かなり高い需要があることが確認できました。

-やはり、最初にお客様の声を確認してから進められたのですね。事業年数はどれくらいになるのでしょうか。

2023年の1月に立ち上げたので、2年4か月です。

高齢化と残業規制で積算業務が抱える課題「人手不足」

-実際のお客様は、どういった企業が多いのでしょうか。

スーパーゼネコンさんから、10名でやっている地場の建設会社さんまでさまざまです。工務店さんに近いところや、専門工事業者まで幅広くお取引があります。あとは、設計事務所や建設コンサルタントさんともお取引をさせていただいています。

-幅広い営業力があるのですね。営業をかける場合、何かしらの白地図やリストみたいなものがあるかと思うのですが、そういったものは何をベースに行われているのでしょうか。

独自の調査や、実際にリストを購入したりですね。私たちのターゲットは広いので、実際にサービスを使ってくれそうな会社を見極めて、リストを作って営業しています。

2025年2月には、大阪に西日本支社を設立しました。今後はさらにエリアを広げ、より迅速で精度の高い対応を実現していきたいと考えています。

-ターゲットとして広いところから攻めていける点も一つの強みですね。ここで改めて、積算外注サービスについて教えてください。

建設会社さんとか、ゼネコンさん、サブコンさん、設計事務所さんが抱えている積算業務を私たちが請け負っている形です。実際には私たちが積算をするわけではなくて、契約している積算士の方に依頼しています。

具体的には、積算士の方にリモートで作業をしていただき、私たちが精査や工程管理をして、最終的にお客様に納品するという流れです。現在、全国で約700名(2025年4月末時点)の積算士の方と契約しています。

-積算業務の外注サービスなのですね。このサービスでは、どのような課題があるお客様が多いのでしょうか。

大きく分けて二つの課題があります。一つは、供給量が全然足りてないことです。積算を外注したい会社は多いのですが、適切な積算事務所がなかなか見つからないのが現状です。

二つ目は、品質面での不安です。品質が安定しなければ、今まで付き合ってきた実績のあるところに外注が集中してしまいます。

また、今まで外注してこなかったお客様の課題としては、これまでは社内で内製化していたけれど、積算士の高齢化と残業規制で対応できなくなってしまった、という事情が増えてきていますね。

そういった課題を解決するために、私たちは積算の外注サービスを立ち上げました。現在約700名の積算士と契約してネットワーク化しているので、必要な時にすぐ依頼ができるスピードと安定した品質を両立して提供しています。

自由な働き方ができる!パートナーの積算士にも大きなメリットが

-700名もの積算士を集めることは大変だったのではと思うのですが、どのようにして集められたのでしょうか。また、お客様からご依頼があったとき、すぐにマッチングできるという仕組み化はどういう形で築き上げていったのでしょうか。

最初は身内のネットワークや紹介から始めていったんですが、最近はWebサイトからの集客が主ですね。コロナ禍以降リモートワークが日常化したこともあり、Webサイトから興味関心を持って登録していただく積算士の方が増えてきた感じです。

-ではここで視点を変えて、登録されている積算士側の声も教えてください

パートナーさんへの提供価値としては、副次的な収入が得られることがとても大きいと思い

ます。現在では、毎月安定して100万円近い報酬を得ているパートナーさんもいらっしゃいます。

それと、自由な働き方ができることですね。個人で独立している方も、副業で始めて独立した方もいらっしゃるのですが、安定的に仕事を供給できるので、繁忙期、閑散期に関わらず仕事がある状態を作れています。そういったメリットを提供できる点では、喜んでいただいていると思います。

-積算士の雇用機会提供でも大きなメリットがあるのですね。一方で、お客様の声や評価いただいている点はどのようなものがあるのでしょうか。

今の時代背景として、スピーディーな見積もり作成と積算が強く求められている流れがあります。お施主様からも「早く見積を出してほしい」といった依頼があり、そういったニーズに応えられる点をご評価いただいています。

結構ギリギリのご依頼もあるのですが、それも対応できるので、「助かりました」とのお声をいただくことも多いです。「思った以上に品質がいい」といった評価もいただいていますね。かゆいところに手が届くというか、スピードと品質の両方をご評価いただいています。

-ここまで、ワイヤベース立ち上げに至るまでの背景と、積算業務が抱える課題についてお伺いしました。後編では、今後の具体的な事業展開と、積算外注サービスの未来展望についてお聞きします。