気泡コンとは?防音性・地震対策・ゴキブリ発生の真実と後悔しない選び方【2025年最新版】

気泡コンクリート(気泡コン、ALC造)は、住宅や建設業界で利用されている軽量で利便性の高いコンクリートです。しかし、マイナス面の噂も多く、設計や施工での使用に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、気泡コンクリートの特徴を説明したのち、防音性・地震対策・ゴキブリ発生などの真実を紹介します。
目次
気泡コンクリートとは?
気泡コンクリートとは、コンクリート内部に微細な気泡を含ませた軽量かつ高断熱性の建材です。
出典:J-Stage「軽量気泡コンクリート、多孔質ガラスおよび珪藻岩由来多孔質体の水分由来の体積変化挙動と細孔構造との関係」
正式には「ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:高温高圧養生軽量気泡コンクリート)」と呼び、建物の壁や床などに使用することが多く、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)と並ぶ建材のひとつです。
また、建築現場では「気泡コン」「ALC造」という呼び名で流通しており、特に軽量性・耐火性・断熱性に優れていることから、マンションや店舗、工場など幅広い用途で活用されています。
あわせて建築材として利用されているスタンプコンクリートについても興味がある方は、以下の記事もチェックしてみてください。
気泡コンクリートの構造 & 製造方法
気泡コンクリートは、セメントに発泡剤や石灰、けい石、アルミ粉末などを加えて発泡させ、高温高圧のオートクレーブ(蒸気養生釜)で硬化させることで完成します。
出典:J-Stage「軽くて丈夫な気泡コンクリート-その製法と機能-」
内部に無数の気泡を含むため、軽量でありながら断熱性・耐火性にも優れる特徴をもっています。
たとえば、大手建材メーカーの「旭化成建材」は、ALCパネルとして「へーベル」を製造しています。JIS A 5416に登録されている厚形のパネルであり、超高層建築や商業施設、流通施設、住宅といった、さまざまな規模・分野の建築で採用されています。
(参考:旭化成建材「へーベル」)
気泡コンクリートが用いられる建物・構造物
気泡コンクリート(ALCパネル)は、軽量性・断熱性・耐火性・加工性の高さを活かし、さまざまな種類の建物で使用されています。参考として以下に、気泡コンクリートの使用例をまとめました。
建物種別 | 使用部位 |
一般住宅(戸建) | 外壁材、間仕切り |
アパート・マンション | 隣戸間壁、バルコニー下など |
商業施設(店舗) | 外壁、天井パネル |
工場・倉庫 | 屋根パネル、外壁 |
学校・病院 | 間仕切り壁・階段室 |
また、現場での施工性にも優れているのが特徴です。軽量で大判パネルが扱いやすく、施工ミスが少ないため、経験の浅い作業員が多い現場でも重宝されています。
気泡コンクリートと鉄骨造の違い
気泡コンクリートとの比較でよく挙げられるのが、鉄骨造(S造)です。以下に2つの違いを整理しました。
ALCパネル(気泡コン) | 鉄骨造(S造) | |
役割 | 壁材・床材・外装パネルなど | 建物の主要構造体 |
主な材料 | 発泡軽量コンクリート | 鋼材(H形鋼・角形鋼管など) |
用途 | 外壁材・防火壁・屋根パネルなど | 柱・梁・床スラブの主要構造 |
耐火性 | ◎(不燃材認定あり) | △(被覆工事などで対応が必要) |
耐震性 | ○(軽量で変形に強い) | ◎(構造計算に基づいた強度設計が可能) |
コスト | 中~高 | 高(設計・施工が複雑) |
まず、気泡コンクリートは「建材(部材)」である一方、鉄骨造(S造)は「建築構造形式」です。そもそも役割が異なるため「ALC造 vs 鉄骨造」という比較は正確には成立しません。
ただ実際には、ALCパネルを使った鉄骨ALC造(軽量鉄骨+ALC外壁)などもあり「構造体の違い & 使われる部材」として併用されることも少なくありません。
気泡コンクリートのメリット
気泡コンクリートは、従来のコンクリート建材と比べて、性能面に優れる点が複数あります。以下より、現場で活用される具体的なメリットをみていきましょう。
軽量・断熱・耐火性のバランスが良い
気泡コンクリートは、建築用素材のなかでも、特に「軽さ」「機能性の両立」に優れています。
たとえば、同じサイズの鉄筋コンクリート(RC材)と比較して、約1/4の重量しかありません。そのため、構造体への負荷が軽減されることはもちろん、地震時の揺れを緩和しやすいのが魅力です。
気泡コンクリート | 鉄筋コンクリート | |
比重 | 0.5程度 | 2.45程度 |
国土交通省が公開している「建築基準法に基づく構造方法等の認定」の資料でも、主要構造部に使用可能な不燃材料として分類されており、都市部や集合住宅でも安心して利用されています。
(参考:国土交通省「認定区分と対象条文(防耐火構造・防火材料ほか)」)
工期短縮・運搬性に優れている
気泡コンクリートは、プレキャスト化されたパネルをそのまま搬入・施工できるため、現場での加工・施工手間における大幅な削減が可能です。以下に現場でのメリットをまとめました。
- クレーンで吊り上げて簡単に設置できる
- パネル間のジョイントもシンプルなシーリング施工に対応している
- 鉄骨との組み合わせで、施工スピードが早まる
コンクリートのように打設〜養生の必要がないのはもちろん、コンクリートのプレキャスト製品と比べて軽量であるため、効率よく設置できるのが気泡コンクリートの強みです。
環境負荷を抑えた建材として注目されている
持続可能な社会が求められる現代で、気泡コンクリートのALCパネルは環境配慮型建材としても注目されています。以下にSDGsにおける視点でのメリットをまとめました。
- 製造時のCO2排出量が少ない
(軽量・少量資源で済む) - 廃棄時に有害ガスを発生しない
- リサイクル材として再利用できる
環境に優しく建物の断熱性に優れていることから、建築物のZEB・ZEH認証などにも対応しやすくなっています。
またZEBに興味をお持ちの方は、以下の記事もチェックしてみてください。
気泡コンクリートのデメリットや噂|「やめとけ」と言われる理由と対策
気泡コンクリート(ALCパネル)はメリットの多い建材ですが、一部では「やめとけ」といったネガティブな意見や噂もみられます。
なぜそのように噂されるのか、よく聞くデメリットとその真実、またデメリットの改善策をまとめました。
防音性能に劣る?|うるさいと言われる理由
気泡コンクリートは内部に気泡を含む多孔質構造のため、断熱性が高い反面、遮音性(音の透過防止)にはやや不向きです。
特にALC造の戸建住宅では「外の音が響く」「隣の生活音が気になる」といった声が見られます。
防音性能に関する噂は真実であるため、建築の際には「石膏ボードや吸音シートなどを組み合わせて多重構造にする」「目地部分の気密施工を丁寧に行う」「窓サッシは二重窓や高性能樹脂サッシを採用する」といった対策が欠かせません。
ゴキブリが出やすい?|隙間と湿気で虫が集まりやすい理由
「ALC造はゴキブリが出やすい」という話題が散見されますが、これも真実です。以下に、ゴキブリを含む虫が出やすい理由をまとめました。
- パネル間の隙間や継ぎ目から侵入する
- 高気密ではないため屋内と屋外の湿度差ができやすい
- 換気設備が不十分な場合、湿気がこもりやすくなる
上記からわかるように、気密施工や換気の問題であることがほとんどです。ゴキブリなどの発生を抑えるためには「目地や開口部を徹底的にコーキング・気密処理」「換気扇・24時間換気システムの導入」「基礎部分・通気口には防虫網やパッキンの使用」といった対策が欠かせません。
地震に弱い?|誤認に注意
「気泡コンクリートは軽いので地震に弱い」という印象をもたれることがありますが、これは正確ではありません。むしろ、軽量であることが建物全体の揺れを減らすため、耐震性の観点では有利になる場合も多い傾向です。
なかでも、鉄骨造やRC造との併用で気泡コンクリートの性能が発揮されるほか、パネルの耐震固定金具・アンカーなどの正しい施工で十分な強度を保持できます。
まとめ
気泡コンクリート(ALCパネル)は、軽量性・断熱性・耐火性のバランスが取れた建材であり、住宅から商業施設・工場まで幅広く使用されています。
何にでも有効な「万能素材」ではありませんが、設計者としっかり相談しながら使えば、快適で高性能な空間づくりに活かせるのが魅力です。