竹中工務店、万博建設でCO2削減 会場面積の4.4倍分に相当する環境貢献を実現

竹中工務店は、大阪・関西万博のパビリオンワールド(PW)西工区における23件の施設で、資源循環と脱炭素に貢献する取り組みを積極的に推進しました。この取り組みにより、約684.2ヘクタールの森林が1年間に吸収するCO2量に相当する削減効果を達成しています。これは大阪・関西万博の会場面積の約4.4倍に相当する規模です。
「サーキュラーデザインビルド」によるアプローチ
竹中工務店は「サーキュラーデザインビルド」という考え方を提唱しています。これは従来の「スクラップ&ビルド」という使い捨て型の建設方法から脱却し、「つくる」・「つかう」・「つなぐ」をキーワードにした新しい建設の形です。リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)・アップサイクル(価値向上型再利用)などを通じて、資源の投入量と廃棄物を減らすことを目指しています。
大阪・関西万博は「持続可能な万博」を目指しており、特に「Planet(生態系、環境)」に関して国際的な合意事項(パリ協定や大阪ブルー・オーシャン・ビジョンなど)の実現に貢献する会場づくりを掲げています。3R(リデュース・リユース・リサイクル)の積極的な活用もその一環です。
竹中工務店はこうした方針に基づき、万博の会期が半年という短期間であることを考慮しながら、必要な性能や品質を確保しつつ環境に配慮した施設の設計・施工を進めました。
具体的な三つの取り組み
竹中工務店が実施した主な取り組みは次の3つです。
・地上部建屋におけるリユース資材の採用
・CO2排出量低減材料の採用
・エネルギー・資源消費を抑える計画
これらの取り組みにより、アップフロントカーボン(資材製造・施工・解体段階で発生するCO2)を6,020.8トン削減しました。
リユース資材の積極的な導入
PW西工区の施設では、会期後の解体を考慮して、総床面積の約73%をプレファブ工法によるリユース資材で計画しました。竹中工務店は大和リースと協力し、上部躯体や外壁、屋根、建具について再利用可能なプレファブ部材を採用しました。
従来の1.8メートルのモジュール(規格)を活用しながら設計を調整することで、リユース可能な部材の使用範囲を最大限に広げました。さらに、展示施設に必要な広い無柱空間を実現するための新しいモジュールも開発しています。
また、プレファブ部材を利用して規格外のサイディング材を外壁に取り付けられる工夫も行い、外装デザインの自由度を確保しました。
環境に配慮した先進的な建材の使用
EXPOメッセ棟の基礎の一部には「CUCO®-建築用プレキャスト部材」を採用しました。これはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業の一環として開発された先進的な建材です。
このプレキャスト部材は次の3つの技術で構成されています。
・ECMセメントによるCO2削減技術
・再生微粉・再生骨材にCO2を固定化する技術(CCU材料)
・特殊混和材LEAFをセメントに混合して硬化後にCO2を吸収する技術
その他にも、ダンボールダクト・アルミケーブル・アルミ冷媒配管・水道用高性能ポリエチレン管など、製造過程や施工過程でのCO2排出量が少ない低炭素型材料を積極的に採用しました。これらの材料は軽量で施工も簡便なため、作業の省力化を通じた脱炭素効果も期待できます。
特に、ダンボールダクトは折りたたんだ状態で運搬できるため、資材運搬に必要なトラックの回数を減らせるという利点もあります。
地盤特性を考慮した資源節約型の基礎設計
夢洲の埋め立て地盤の特性を考慮し、建物の使用期間中の地盤沈下傾向を予測したうえで、「空隙を設けない浮き基礎」をほぼすべての建物で採用しました。
この工法により、コンクリートや鉄筋などの資源使用量と掘削土量を最小限に抑えることができます。また、建物と周辺地盤との間に沈下差に対応できる仕組みを取り入れ、地盤沈下が生じても建物の使用に支障がでないよう工夫されています。
このように竹中工務店は、大阪・関西万博という短期間のイベントに向けた建設においても、環境への配慮を最大限に行い、将来の持続可能な建設のあり方を示す先進的な取り組みを実践しています。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,大阪・関西万博会場の約4.4倍の面積の森林吸収量に相当するCO2削減を実施 様々なCO2削減技術をPW(パビリオンワールド)西工区諸施設23件で推進,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/04/05/