竹中工務店開発、大阪・関西万博に誕生した森になる建築、3Dプリントと生分解性素材で実現

竹中工務店(社長:佐々木正人)が大阪・関西万博の会場内「大地の広場」で建設を進めていた「森になる建築」が2025年3月27日に完成しました。この建築物は、最先端の3Dプリント技術を用いて2024年8月から建設が進められてきました。
この建築物は、直径4.65メートル、高さ2.95メートルの2棟で構成されています。大阪・関西万博の会期中(2025年4月13日から10月13日まで)は、来場者のための休憩施設として利用される予定です。
自然に還る素材と多様な人々の参加
この建築物の最大の特徴は、環境に配慮した素材選びにあります。構造体には生分解性樹脂が採用されています。これは使用後に自然界の微生物によって分解される素材です。
外装には「シーズペーパー」と呼ばれる特殊な和紙が使われています。このシーズペーパーは、植物の種をすき込んだ和紙で、一般市民が参加したワークショップで作られました。さらに、伝統工芸の職人や福祉施設の方々によって作られた和紙も使用されています。
このプロジェクトは、多くの人々の協力によって完成した建築物であり、使用後に廃棄物として残るのではなく、自然に還ることを目指しています。
日本初の「酢酸セルロース造」建築物の誕生までの道のり
この「森になる建築」は、2020年から2021年にかけて実施された竹中工務店の社内コンペで最優秀賞を獲得した「Seeds Paper Pavilion」のアイデアが発展したものです。
技術開発から始まり、強度試験などの実証実験を経て、「休憩に使える仮設建築物」として建築確認申請の確認済証が交付されました。2024年7月に着工し、3Dプリンターを使って「酢酸セルロース造」の構造体を現地で作り上げました。2025年2月には検査済証が交付され、日本で初めての「酢酸セルロース造」による建築物が実現しました。
多くの企業や団体との協力体制
このプロジェクトは、竹中工務店だけでなく、さまざまな専門分野の企業や団体との協力によって進められました。
主な協力企業・団体は以下の通りです。
・素材開発・提供:株式会社ダイセル
・3Dプリント機材提供:エス.ラボ株式会社
・部品開発・提供:株式会社ニフコ
・植栽技術開発・技術提供:阪神園芸株式会社
・再生パルプ提供:大和板紙株式会社
・仕上材開発・植栽指導:兵庫県立人と自然の博物館
環境と調和する未来の建築を目指して
竹中工務店は、この「森になる建築」のプロジェクトを通じて、環境との調和と社会との共創を目指した新しい建築の形を提案しています。今後も同社は、環境に配慮した革新的な建築技術の開発に取り組んでいく方針です。
「森になる建築」は、建築物が使用後も地球環境に負担をかけない、持続可能な社会の実現に向けた一歩となることが期待されています。大阪・関西万博を訪れる人々は、この新しい建築の姿を直接見ることができます。
この建築物の完成によって、建築分野における環境問題への取り組みが一層進むことが期待されます。未来の建築のあり方を考えるきっかけとして、多くの人々に新たな視点を提供することでしょう。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,大阪・関西万博会場内に提供する「森になる建築」が完成 生分解性素材を活用した未来型建築が実現,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/04/03/