大成建設、SLAM技術活用の「T-iDraw Map®」でタイヤ式ダンプの自動運転実証

大成建設株式会社(相川善郎社長)は、2025年3月11日、GPS等の電波が届かないトンネル内において、10トン積みダンプトラックが実用速度となる時速20kmでの自動運転に成功したと発表しました。この成果は、SLAM技術を応用した位置情報取得システム「T-iDraw Map®」の開発・導入によって実現したものです。
目次
トンネル内での自動運転を可能にした独自技術
このシステムは、車両に搭載したセンサーから得られる情報をもとに、「環境地図作成」と「自己位置推定」を3次元で同時に行うことができます。これにより、GPSが使えない環境でも正確な位置情報を取得しながら、建設現場の環境変化に適応した自動運転が可能になりました。
建設業界の課題と「i-Construction 2.0」の推進
日本社会では生産年齢人口の減少や高齢化が進み、建設業界でも労働力不足と生産性向上が急務となっています。こうした背景から、国土交通省は「i-Construction 2.0」を推進し、担い手不足への対応や省人化、生産性向上の取り組みを加速させています。
実用段階へと進化した自動運転技術
大成建設は2021年に「T-iDraw Map®」を開発し、これまでにGNSS(全地球測位衛星システム)が利用できないトンネル内で、キャタピラー式の無人建設機械(クローラダンプ)による自動運転を実現していました。
今回の実証実験は、国土交通省国土技術政策総合研究所の実大トンネル実験施設と、利賀トンネル(2工区)工事現場(国土交通省北陸地方整備局発注)で行われました。より実用性の高いタイヤ式の10トン積みダンプトラックに「T-iDraw Map®」を搭載し、その性能を確認しています。
トンネル内での自動運転実証
実験では、トンネル内の環境データをもとに車両の位置情報を取得しながら、あらかじめ設定したルートを自動走行できることが確認されました。GPS圏外のトンネル内や地下空間でも、実用速度である時速20kmでの自動運転が可能なことが実証されています。
また、トンネル工事特有の移動式鋼製型枠(セントル)がある狭い区間でも、通過速度を適切に調整して安全に走行できることが確認されました。
自動運転技術の今後の展開
大成建設は今後、現在施工中のトンネル建設現場に「T-iDraw Map®」を活用した建設機械や工事用車両の自動運転技術を順次導入していく予定です。将来的には、屋内や地下での自動運転のほか、災害発生時における探査・点検などへの応用も目指しています。
さらに、同社の「T-iROBO®シリーズ」にもこの技術を積極的に展開し、無人・有人の建設機械が協調して稼働する「T-iCraft®」システムとの連携も図りながら、建設現場の安全性と生産性のさらなる向上を推進していくとのことです。
技術の背景
SLAM技術とは「Simultaneous Localization And Mapping」の略称で、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術です。移動体がセンシングによって得た計測値と移動で得た計測値を照らし合わせ、その誤差を収束計算することで、作成した地図上に自己位置を推定します。この技術とシステムには、パナソニック アドバンストテクノロジー株式会社のシステムが活用されています。
「T-iDraw Map®」は、GPS信号が届かない場所で特に有効なSLAM技術を活用した無人建設機械の自動運転システムです。自己位置推定と環境地図作成を同時に行い、GPS位置情報の代替を可能にしました。
このように、最新技術の導入により、建設業界の課題解決と未来への一歩が着実に進んでいます。
出典情報
大成建設株式会社リリース,SLAM技術を活用した位置情報取得技術「T-iDraw Map®」をタイヤ式工事用車両に導入-トンネル坑内を10t積ダンプトラックが実用速度(時速20km)で自動運転-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250311_10360.html