奥村組開発、プレキャストPC床版の新接合技術Zスパイラル工法で施工時間75%短縮に成功
株式会社奥村組(大阪市阿倍野区)と昭和コンクリート工業株式会社(岐阜県岐阜市)は、橋梁工事の効率化を実現する新しい工法の開発に成功しました。開発された「Zスパイラル工法」は、従来の工法と比べて作業時間を大幅に短縮できることが、実物大の試験で確認されました。
新工法の特長
この新工法は、工場で製作された高強度コンクリート床版(プレキャストPC床版)を現場で接合する際に使用します。従来のループ継手工法では、床版を接合する際に6本の鉄筋を横から差し込む必要がありましたが、Zスパイラル工法では特殊な螺旋状の鉄筋(Zスパイラル筋)を上から挿入するだけで済みます。
作業効率の大幅な改善
従来工法では複数の作業員が協力して横から鉄筋を通す必要がありましたが、新工法では1人の作業員が上から簡単に設置できます。さらに、Zスパイラル筋はらせん形状により一体化されているため、上部を結束するだけで安定した状態で固定できます。結束する箇所も従来の約3分の1に減少し、作業の簡略化に成功しています。
施工性確認試験の詳細
実物大の床版を使用した試験では、4名の作業員で10メートルの接合部3カ所について、鉄筋の組み立てから挿入、結束までの一連の作業を実施しました。その結果、従来工法では平均約40分かかっていた作業が、新工法では約10分で完了。作業時間を約75%短縮できることが実証されました。
安全性・耐久性の確認
この新工法で接合したプレキャストPC床版は、厳密な耐久性試験を実施しています。大型車両による繰り返し走行を再現した輪荷重走行試験により、100年相当の耐久性を有することが証明され、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)の承認も取得しています。
今後の展望
両社は今後、この新工法を高速道路の床版取替工事に積極的に提案していく方針です。工期短縮による工事コストの削減と、作業員の負担軽減が期待されます。
施工の様子を撮影した動画は、以下のURLでご覧いただけます。
専門用語の解説
・プレキャストPC床版:工場であらかじめ圧縮応力を加えて製作された、自動車や歩行者などの荷重を直接受ける橋の床部分です。
・ループ継手工法:従来の標準工法で、ループ状の鉄筋の中に6本の鉄筋を横から通して接合する方式です。
・輪荷重走行試験:大型車両による繰り返し走行を模擬した試験で、床版の変形やひずみを測定し、耐久性を評価します。
会社概要
株式会社奥村組
所在地:大阪市阿倍野区松崎町2-2-2
代表者:代表取締役社長 奥村 太加典
事業内容:総合建設業およびこれに関連する業務
ウェブサイト:https://www.okumuragumi.co.jp/
昭和コンクリート工業株式会社
所在地:岐阜県岐阜市香蘭1-1
代表者:代表取締役社長 村瀬 大一郎
事業内容:プレストレストコンクリート橋梁の設計製造施工およびプレキャストコンクリート製品の設計製造販売
ウェブサイト:https://www.showa-con.co.jp/
出典情報
株式会社奥村組リリース,プレキャストPC床版の新しい継手工法「Zスパイラル工法」の施工性確認試験を実施~接合部の配筋にかかる作業時間を75%短縮~,https://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2024/pcz75.html