国土交通省調査、建設業全体の人手不足は改善基調、専門技能者の確保は全国的な課題
国土交通省は25日、令和6年11月の建設技能労働者の需給状況に関する調査結果を公表しました。建設現場における人手不足の状況は、全体として改善傾向にあるものの、依然として不足感が続いていることが明らかになりました。
目次
全国の需給状況
■8職種全体の状況
建設業8職種全体での人手不足率は0.9%となり、前月(10月)の2.3%から1.4ポイント改善しました。また、前年同月(1.8%)と比べても0.9ポイント改善しており、建設現場における人手不足の緩和傾向が鮮明になっています。
■6職種の状況
主要6職種(型わく工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築))に限ってみると、不足率は0.7%となっています。これは8職種全体の不足率よりもやや低い水準であり、新たに加わった職種(電工、配管工)での不足感がやや強いことを示しています。
地域別の動向
■東北地方の特徴的な動き
東北地方では、8職種合計の不足率が3.1%となり、全国平均を上回る不足感が示されました。前月の4.9%からは1.8ポイント改善したものの、前年同月の1.8%と比較すると1.3ポイント悪化しており、地域による需給の格差が顕在化しています。
■その他の地域の状況
中部地方と沖縄地方では需給が均衡している一方、その他の地域では依然として不足感が続いています。特に、建設需要の多い都市部では、技能労働者の確保に課題を抱える状況が続いています。
職種別の詳細分析
・型わく工(土木):1.7%の不足率
・型わく工(建築):0.2%の過剰
・左官工事:1.2%の不足率
・とび工:1.8%の不足率
・鉄筋工(土木):1.9%の不足率
・鉄筋工(建築):2.0%の過剰
・電気工事:1.8%の不足率
・配管工事:0.9%の不足率
これらの数値から、全体的に不足率は改善傾向にあるものの、専門性の高い職種では依然として人手不足が続いていることがわかります。特に、型わく工(建築)と鉄筋工(建築)で過剰感が出ている一方、電気工事では不足感が強まるなど、職種による需給の差が顕著になっています。
今後の見通し
■短期的な予測
2024年1月から2月にかけての労働者確保の見通しについては、全国、東北地方ともに「普通」との評価が示されました。これは、年度末に向けた工事の進捗状況と人員配置の調整が、概ね計画通りに進むと予測されていることを示しています。
■新規募集の状況
新規募集に関する過不足状況では、6職種計、8職種計ともに前年同月を下回る不足率となっており、採用市場においても改善の兆しが見られます。
現場の労働強化状況
■残業・休日作業の実態
現場における残業・休日作業を実施している割合は全体の3.7%となっており、前月(2.1%)と比べて1.6ポイント増加しています。この数値は前年同月(3.1%)と比較しても0.6ポイント高く、一部の現場では工期遵守のための労働強化が行われていることがわかります。
■労働強化の主な理由
・前工程の工事遅延(33.3%)
・天候不順による影響(26.7%)
・昼間時間帯の作業制約(20.0%)
・その他の要因(15.0%)
・無理な受注(5.0%)
調査の実施概要
■調査期間と対象
本調査は令和6年11月10日から20日までの間の1日(日曜、休日を除く)を調査対象日として実施されました。
■調査対象企業
建設業法上の許可を受けた法人企業(資本金300万円以上)のうち、調査対象職種の労働者を直接雇用する約3,000社を対象としています。有効回答数は1,179店社、調査対象となった手持現場数は5,553箇所に上ります。
今後の課題と展望
建設業界における人手不足は全体として改善傾向にありますが、地域や職種による偏りが依然として存在しています。特に専門性の高い職種や特定の地域における不足感は継続しており、これらの解消に向けた取り組みが今後の課題となっています。また、工事の円滑な進行と労働環境の改善の両立も重要な検討事項として挙げられています。
出典情報
国土交通省リリース,建設労働需給調査結果(令和6年11月分調査)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00252.html