国土交通省発表、建設業の景況感に変化の兆し 大手50社の11月受注動向で民間工事が減少基調
国土交通省は令和6年12月26日、主要建設会社50社を対象とした「建設工事受注動態統計調査」の11月の結果を発表しました。この調査は、建設業界の景気動向を測る重要な指標として注目されています。
目次
民間工事の受注状況
民間工事の受注額は、前年同月と比較して8.8%の減少となりました。この減少は、複数の業種で見られ、特にサービス業、電気・ガス・熱供給・水道業、金融業、保険業などの分野で顕著でした。10月期には増加傾向を示していた民間工事ですが、11月期に入り再び減少に転じる結果となりました。
■総計でも減少傾向が鮮明に
建設工事全体の受注総額においても、前年同月比で10.2%の減少を記録しました。これは民間工事の落ち込みが大きく影響したものと考えられます。総計についても、10月期の増加から一転して減少基調となっています。
業種別の受注動向の詳細
【増加した業種】
・製造業:前年同期比で増加を維持
・非製造業の一部:小売業などで若干の伸び
【減少が目立った業種】
・サービス業:前年比でマイナス
・電気・ガス・熱供給・水道業:受注減
・金融業、保険業:前年を下回る実績
・建設業:土木部門を中心に減少
公共工事の状況
公共工事については、国の機関からの発注は減少したものの、地方機関からの発注は増加を示しました。特に以下の特徴が見られます:
・国の機関:前年同月比19.8%減
・地方機関:前年同月比20.1%増
・発注者別では、独立行政法人が増加
・地方公共企業、市区町村からの発注も堅調
注目すべき市場動向
■住宅関連
・住宅建設は依然として回復基調が鈍い
・マンション、一戸建ての受注にばらつき
■インフラ整備
・道路、鉄道関連の工事は増加傾向
・教育・研究施設の建設も堅調
■地域別の特徴
・都市部と地方で受注状況に格差
・地方創生関連事業は比較的安定
今後の展望と課題
建設業界は以下のような課題に直面しています。
■需要の変動
・民間投資の様子見姿勢が強まる
・公共投資の重要性が増加
■構造的な問題
・人手不足の継続
・資材価格の高騰への対応
■将来的な展望
・インフラ更新需要の増加
・環境配慮型建設への移行
統計調査の詳細
この統計調査は、建設業界の動向を正確に把握するため、以下の項目について詳細な分析を行っています。
・発注者別の受注状況
・工事種類別の受注実績
・地域別の受注動向
・前年同月比での増減比較
なお、詳細なデータについては、政府統計の総合窓口「e-Stat」にて公開されており、誰でも閲覧することが可能です。統計データには、時系列での推移や、季節調整値なども含まれており、建設業界の動向を多角的に分析することができます。
この調査結果は、建設業界の現状を把握するだけでなく、日本経済全体の動向を見る上でも重要な指標となっています。特に、民間設備投資の動向や公共投資の実態を知る手がかりとして、エコノミスト(経済専門家)からも注目されています。
出典情報
国土交通省リリース,令和6年11月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果,https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001270.html