建設業における搬送の問題点とは?搬送ロボットのメリットも解説
建設業における資材や機材搬送は、人材に対する負荷の高い作業の1つです。人手に頼った搬送では、作業を中断してでも当日の現場の状況に合わせる必要があったり、事前の打ち合わせが必須となったりするケースが多かったといえます。
しかし、最近では資材や機材搬送をロボットで行うケースも増加しつつあります。本記事では、資材搬送の問題にふれたうえで、搬送ロボットのメリットや活用事例についてみていきましょう。
目次
建設業における資材や機材搬送の問題点
建設工事では、資材や機材の搬送は必須となる作業の1つです。しかし、人的リソースに頼った資材や機材の搬送は、以下のような問題点があるため、大きな負担になっていました。
- 休憩時間や夜間など人が少ない時間に搬送が求められる
- 重量物や大型資材の場合、人手と時間、スケジュール調整も必要
- 搬送場所によってはクレーンの設置も必要となるためコストがかかる
- 作業効率の低下、ケガの増加が発生しやすくなる(重量物であるぼと負荷も大きい)
- スケジュールによって残業や休日出勤などライフワークバランスが取りにくくなる
仮に、十分な人数が現場に配置されている場合であっても、人による資材搬送では、ケガや落下のリスクがいつでもあるといえます。また、大規模な現場になるほど、スケジュール調整も難しくなるといえるでしょう。
加えて、建設業における3Kのイメージそのままの作業であることから、現在では搬送ロボットの開発・活用やパワーアシストスーツの活用も進められています。
搬送ロボットの仕組み
技術の進化によって、建物の構造を理解した情報システムとしてBIMを活用し、デジタル空間上にロボットを配置したうえで、動作を制御することが可能となりました。たとえば、搬送ルートで起きる問題を予測しつつ、現実のロボットを実際に制御するといった方法も採用できるようになっています。
搬送ロボットの仕組みをまとめると、次のようになります。
- ロボットには、ライダー(自動運転カーで使用するセンサー)が搭載されており、周囲の状況を把握し、BIMのデータと合わせて自分の現在位置を特定できる
- 走行中に障害物が有れば自動的で検知し停止するできる
- バーコードリーダーが搭載されており、荷物にあるQRコードを読み取りが可能
自動搬送管理システムとBIMが連携し、ロボットの移動経路を確定させられるため、遠隔からでも運行管理が可能です。
搬送ロボットの3つのメリット
搬送ロボットの活用によって、3Kのイメージを払拭し、企業イメージの改善や人材確保につながります。 とくに、今後ICT施工やBIMを活用した工事を行っていく場合、テクノロジーやデジタルに興味を持つ人材も集めやすくなるでしょう。
さらに、搬送ロボットには以下3つのメリットがあります。
- 作業員の負担軽減-ケガや作業効率の低下が防ぎやすくなる。また、人材が少ない状況でもロボットに搬送を任せられるため、管理者がいれば搬送が自動的に完了できる。短時間で大量の資材を搬送することもできるため、生産性向上にもつながる
- 安全性が向上する-工事によっては、搬送のためだけにクレーンやフォークリフトを利用する必要がなくなる。そのため、落下事故や接触事故が起きにくくなり、安全性が向上する
- BIMと連動しシミュレーションができる-自動搬送管理システムとBIMの連携によって、詳細なシミュレーション実施が可能。また、現場の流れに合わせた搬送ルートの提案から搬送の実施まで完了できるため、ヒューマンエラーの減少にもつながる
搬送ロボットによって、現場における搬送の負荷を軽減できることに加え、生産性向上や事故やケガの軽減につながるといえるでしょう。
搬送ロボットの活用事例
竹中工務店と鹿島建設、アクティオは、共同で資材自動搬送ロボットを開発しました。
3社が共同で開発した搬送ロボットは、工事用エレベータに積み込まれた資材や機材を所定のフロアで荷下ろし、所定の位置まで自立走行させることが可能です。
BIM(建設するビルのデジタル情報を管理)データを元にロボットが自動的に経路を決定し動くことができます。必要な場所に、必要な資材を自動的に搬送できることに加え、貴重なスキルを持つ人材が業務に集中しやすくなる点はメリットだといえるでしょう。
また、自動的に搬送が可能であるため、夜間や休憩時間に搬送作業を実施できるため、生産性向上にも期待できます。
省力化を含むロボット事業は政府も注力している
2025年4月の段階で、国土交通省は「i-Construction 2.0」を打ち出しており、以下3つの項目を自動化することを目標としています。
- 施工の自動化
- データ連携の自動化
- 施工管理の自動化
とくに、ロボットの活用は省人化にも効果的な施策だといえるでしょう。建設業では労働人口が減少していることに加え、インフラの老朽化が進んでいます。業界として生産性を向上させなければ、インフラ整備も間に合わなくなる状況です。そのため、政府としても省人化を進める施策の1つとして、「i-Construction 2.0」を掲げているといえるでしょう。
中小企業省力化投資補助金による建設業の省人化も進んでいる
国土交通省と経済産業省は現在「中小企業省力化投資補助金」を交付しており、2024年6月の段階で建設業関連製品の追加が発表されています。
- 補助上限額は1,000万円
- 補助率は2分の1
- 資本金3億円以下、従業員300人以上
現状のカタログをみると、建設業に向けた製品は測量機器やバランサ装置、3Dレーザースキャナ、マシンガイダンス機能付ショベルなどが代表的です。そのうえで、今後は開発が進んでいる自動搬送ロボットも中小企業省力化投資補助金の対象になることが予想されます。
中小企業の場合、大手と比較するとノウハウや人材スキルの問題から、省力化が進んでいない ケースもあります。しかし、今後円滑な企業活動を行っていくことを前提とした場合、労働人口不足を補うため、施工用ロボットや遠隔操作のできる重機などを活用していく必要があるでしょう。
まとめ
搬送ロボットの開発は、大手企業で進められており、今後中小企業でも活用する事業者が増加すると予想されます。政府の「中小企業省力化投資補助金」も、各業務の省人化を進めるためのものであり、建設業においては省人化と生産性向上を両立させていく必要があります。
補助金と搬送ロボットもふくめて、建設業における省力化がどのように進められていくのか注目しておきましょう。