2024年問題で変わる建設業!業界の現状や労働環境の変化について解説
建設業界では、2024年問題として人材不足・少子高齢化・超過残業といった問題が挙げられています。では、実際に2024年を迎えた現在では、業界がどのような状況になっているのでしょうか。
本記事では、建設業を取り囲む2024年問題の概要について説明したのち、最新の業界動向を解説します。
目次
2024年問題についてわかりやすく解説
2024年問題とは、働き方改革関連法の対応として、建設業界が解決しなければならない労働環境問題のことです。主に次のような問題を対象としており、抜本的な改革が進められています。
- 人材不足
- 少子高齢化
- 超過残業
また上記の問題は、これまでに何度も重要課題として取り上げられてきました。そういったなか、2024年というタイミングで問題を取り上げられたのは、国内で多くの人口比率を占める世代(いわゆる団塊の世代)が後期高齢者へと変わり始める年だからです。
つまり、このタイミングで施策を講じなければ、今まで以上に多くの人材が不足し、建設業界全体が窮地に追いやられてしまいます。今後、人手不足などの影響で企業の倒産数を増やさないためにも、国が総力を挙げて対策を実施している状況です。
2025年問題との違い
建設業界は、2024年問題とは別に2025年問題という課題を抱えています。
2025年問題とは、総務省統計局が発表した労働力調査より、2025年に建設従事者の高齢化が進み、40歳以上の割合が7割を超え、主力として活躍できる人材が今よりもさらに減少するという問題です。2025年問題にも団塊の世代の後期高齢化が大きくかかわることから、2024年問題と合わせて解決が目指されています。
2024年問題として取り上げられている建設業の課題
2024年問題では、建設業界を取り巻く複数の課題が挙げられています。そのなかでも、それぞれが強い関係性をもつ重要課題を3つ整理しました。
【課題1】人材不足
出典:東京商工リサーチ「人手不足倒産 産業別」
東京商工リサーチによると、建設業界の人手不足倒産の割合が年々増加傾向にあることがわかっています。特に建設業界では2024年の人手不足倒産の比率が前年と比べて250%も増加している状況です。
他業界と比べても非常に倒産率が高く、今後も人手不足により倒産数が増加すると予想されています。
【課題2】少子高齢化
出典:日本建設業連合会「建設業の状況」
建設業界は今、少子高齢化の問題を抱えています。労働者の3人に1人が55歳以上である一方、29歳以下の若手労働者が全体の1割程度にとどまっている状況です。
また厚生労働省が公開している「新規学卒就職者の離職状況」によると、入社して3年以内に辞めてしまう離職者の割合が3〜5割程度いることがわかっています。若手が集まりにくい環境であることも含め、今後さらに少子高齢化が加速していくと危惧されている状況です。
【課題3】超過残業
出典:厚生労働省「過労死等防止対策白書」
厚生労働省が公表している「過労死等防止対策白書」によると、建設業の現場監督のうち6人に1人が週60時間以上残業をしており、過労死ラインを超過する水準であったと発表しています。
このように、建設業は人手不足や高齢化の影響を受け、主力として働いている人材が慢性的な残業に悩まされている状況です。実際に建設業界では、過労死自殺といった問題が起きています。
2024年問題に向けて実施されている取り組み
2024年問題の年を迎えた現在、すでに国がさまざまな対策に乗り出しています。実際に取り組まれている施策の概要についてわかりやすく整理しました。
人材確保・人材育成に向けた予算の確保
出典:厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けて」
人手不足問題を解決するため、国土交通省および厚生労働省は、それぞれが協力し2025年(令和7年度)に向けた次の人材確保・人材育成の予算を立ち上げました。
- 働き方改革等による建設業の魅力向上
- 建設事業主等に対する助成金による支援
- 建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施
国が主体となり建設業界のイメージ向上を図るのはもちろん、人手不足に伴う経営難を乗り切る対策として助成金などが確保されています。また、新たな人材を確保する施策として「高校生に対する地元における職業の理解の促進支援」を用意しているなど、周知活動にも力を入れていく計画です。
生産性向上システム・ツールの導入
2024年問題のなかで挙げられている「少子高齢化問題」を解決するため、近年では少ない人材で効率よく業務を進めるために生産性向上の施策が進められています。参考として建設業界に関わるシステム・ツールを以下に整理しました。
- 業務や資料を一元管理できる「建設管理システム」
- 一連の作業を自動化できる「RPAツール」
- 設計検討の作業を効率化できる「BIMソフト」
例えば、建設管理システムを導入し、従来のアナログな業務管理手法から脱却することで、進捗管理・タスク管理の手間を削減できます。またRPAツールを活用すれば何度も発生するルーティン作業を自動化し、業務処理効率を上げることが可能です。
さらには3Dモデルを使い作図効率および計算の効率化を図れるBIMソフトを活用することにより、1人当たりの作業量を増やしつつ、作業時間を削減できるといった生産性向上を実現しやすくなります。
なかでもBIMソフトは2023年4月より業務の原則適用がスタートしている状況です。設計検討に関わる作業については、今後BIM業務なども数多く発注されていく計画になっています。
残業時間の上限規制
出典:厚生労働省「上限規制について詳しく知ろう」
建設業界の慢性的な超過残業の問題を解決すべく、厚生労働省が残業時間の上限規制を設けました。当規制は2024年4月以降からスタートしており、原則として月45時間以内、年360時間以内に残業を抑えるよう、建設業界の各企業に通達を出しています。
ただし臨時的に原則の条件を超える場合には、次の条件以内を守るようルール化されています。
- 1ヶ月45時間を超える残業は年間6回までに抑えること
- 残業時間の上限は年720時間までに抑えること
- 休日労働と合わせて1ヶ月100時間未満とし、2~6ヶ月平均で80時間以内に抑えること
なお一部例外として、近年頻発している災害復旧・復興事業を実施する場合においては規制が適用されません。
また、残業時間の上限規制を無視した場合には、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科されます。建設従事者が働きやすい環境づくりがすでに施行されているため、2024年問題解決に向けて着々と計画が進められている状況です。
まとめ
建設業界の2024年問題は、特に人手不足や少子高齢化の影響を色濃く受けており、団塊の世代が後期高齢者となることで、さらに問題が加速していくと危惧されています。そういったなか、すでに国が総力を挙げて課題解決に乗り出している状況です。
人手不足解消に向けた予算の確保はもちろん、新技術の導入による生産性向上、建設従事者がライフワークバランスを維持しやすくなる残業時間の上限規制など、複数の取り組みが平行して進められています。まだ始まったばかりの取り組みであることから、今後の動向から目が離せません。