グリーンイノベーションとは?基金事業の概要や企業が実施すべき戦略を解説
2050年目標のカーボンニュートラルを実現するため、2兆円規模の事業予算がついたグリーンイノベーションという取り組みに注目が集まっています。しかし、グリーンイノベーションがどのようなものなのかイメージできない方もいるはずです。
本記事では、グリーンイノベーションおよび基金事業の概要を解説したのち、企業が実施すべきグリーンイノベーション戦略について紹介します。
目次
グリーンイノベーションとは
グリーンイノベーションとは、環境への影響を最小限に抑えながら、以下に関連する科学的・技術的な発見や発明に基づくCO2排出量を減らせる持続可能な社会、また循環型社会・ 自然共生型社会を構築する取り組みです。
- 環境
- 資源
- エネルギー
なお、第1回目の戦略会議は2020年7月7日に開催され、現在までに合計8回の推進会議が実施されている状況です。すでに2兆円もの事業予算が確保されていることから、国を挙げた取り組みとして、研究開発に力を注ぐ企業から注目を集めています。
グリーンイノベーション戦略の概要
グリーンイノベーションでは、日本が掲げているカーボンニュートラルの実現という目標達成のために、グリーンイノベーション戦略が立案されています。参考として以下に、戦略のアプローチ例を以下にまとめました。
アプローチの例 | 概要 |
テクノロジー開発 | CO2を排出しない再生可能エネルギーの開発や、エネルギー効率の向上、廃棄物処理問題の解消ができる環境に優しい技術の開発 |
環境配慮設計 | 企業が提供する製品・サービスが、生産・消費・廃棄といったフェーズにおける環境への影響を最小限に抑制 |
エコシステム構築 | 持続可能なビジネスモデルの形成やサプライチェーンの構築 |
レギュレーション&インセンティブ | 企業や個人等に環境保護の必要性を促すための法的枠組みや税制、補助金 |
コンシューマー(消費者)への啓発 | 環境に優しい持続可能な消費を促す教育や情報を提供 |
ステークホルダーとの連携 | 企業単体ではなく、政府・研究機関・市民団体などと協力して環境問題の解決を進行 |
また、グリーンイノベーション戦略は、ただ環境対策を実施するのではなく、環境対策を起点として、企業のビジネスチャンスを生み出すという役割があります。事業拡大や企業間連携などの材料として役立つのはもちろん、それらの取り組みが地域活性化にもつながると期待されています。
企業におけるグリーンイノベーションの必要性
環境に関わる研究・開発を支援するグリーンイノベーションですが、企業運営に役立つ取り組みであるとご存じでしょうか。なぜ企業がグリーンイノベーションに注目すべきなのか、取り組みをスタートする必要性について見ていきましょう。
経営コストの削減
グリーンイノベーションに取り組み、自社工場や導入している重機などでエネルギーの再利用や省エネ対策に取り組めば、次のようなコスト削減が可能となります。
- 2つの製造に使っていた燃料資源を1つにまとめられる
- 今までよりも少量の燃料で製造できるようになる
資源の枯渇や世界情勢などの影響を受けて高騰し続けている燃料の価格ですが、特に海外からの輸入に依存している日本は、直接的な打撃を受けやすいのが特徴です。対して、グリーンイノベーション戦略を立ち上げて対策を講じれば、価格の高騰などに対応できるようになり、経営の安定化を図りやすくなるでしょう。
サービス品質や魅力の向上
グリーンイノベーションの取り組みは、サービスとしての価値や魅力を高めるきっかけを生み出します。
例えば、大量の排気ガスを排出する建設重機は、CO2排出という観点からカーボンニュートラルを実現するために早期解決を目指すべき項目です。そこで、CO2を排出しにくい重機を開発し、施工に導入できるようになれば、その重機を利用している企業であるほど案件を獲得しやすくなります。
環境対策が仕事を生み、持続的な売上につなげられることから、サービス向上や事業の安定化、競合他社との差別化を図りたい企業にこそ、グリーンイノベーションが重要です。
人手不足問題の解消
グリーンイノベーションへの取り組みを一般向けに発信すれば、それが人手不足問題の解消につながりやすくなることをご存じでしょうか。
環境情報科学の学術研究論文集に掲載された「企業の環境配慮が大学生の就職活動先の選択に与える影響」という考察論文によると、アンケート対象者161人のうち、約2割(21人)が環境問題に取り組んでいる企業を、就職の選択肢として見ている傾向が強いことがわかっています。
これは人手不足問題に悩む建設業界においても同様であり、環境対策への取り組みが学生たちの興味を引き、就職先として選ばれやすくなると言えるでしょう。以上より、少子高齢化が深刻介している企業、そして人手不足倒産のリスクを抱えている企業こそ、グリーンイノベーションに取り組む必要があると言えます。
事業を推進するグリーンイノベーション基金の概要
出典:経済産業省「グリーンイノベーション基金事業の今後の進め方について」
グリーンイノベーションの取り組みは現在、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 )が中心となり、基金事業を運営中です。
基金事業では主に、研究・開発に取り組む企業に対し、事業の委託・助成金を提供しています。参考として以下に、グリーンイノベーション基金事業で公募された一例を掲載しました。
公募カテゴリ | 公募項目 |
プロジェクト | 洋上風力発電の低コスト化 |
次世代型太陽電池の開発 | |
大規模水素サプライチェーンの構築 | |
CO2等を用いた燃料製造技術開発 | |
製造分野における熱プロセスの脱炭素化 | |
調査 | 次世代グリーンデータセンター技術開発に関する2024年度調査 |
次世代モーターの開発に関する調査 | |
電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発に関する調査 |
公募については現在も継続的に実施されており、研究・開発等に関わる条件を満たす企業であれば、プロジェクトへの応募が可能です。
グリーンイノベーションの最前線で建設業ができること
企業も参画できるグリーンイノベーションの取り組みですが、現場のなかでCO2を大量に排出する建設業でも、できることがあります。今後の参考として、これまで建設業界で取り組まれてきたグリーンイノベーションの事例をまとめました。
- CO2を用いたコンクリートの製造
- CO2を用いたセメントの製造
- 廃コンクリートの再利用
なかでも力を注いでいるのが、コンクリートやセメントといった材料を繰り返し流用する循環型社会の実現です。限りある国内の資源を無駄にしないためにも、一度施工に使われた廃材を原料に戻し、再利用するという取り組みがスタートしています。
また、国が想定する今後のスケジュールとして、グリーンイノベーションの効果を生み出す建設材料の海外輸出など、販路の拡大などが視野に入れられている状況です。
出典:東京建設業協会「建設業経営を変革する カーボンニュートラル カーボンニュートラル 政策の現在地」
多業種で実施されているグリーンイノベーションですが、建設業界でもできることが数多くあると覚えておきましょう。
まとめ
カーボンニュートラルの実現に向けて取り組まれているグリーンイノベーションは、2024年現在も助成金といった公募を受け付けている状況です。
また、グリーンイノベーションは企業に環境対策を推進するだけではなく、ビジネスチャンスを生み出す力があります。建設業界でも利用できる基金が用意されているため、この機会に取り組みへの参画を検討してみてはいかがでしょうか。