国土交通省、10月の建設労働者調査で不足率増加、東北地域で顕著な人手不足
国土交通省は、建設技能労働者の需給状況を把握するため、令和6年10月10日から20日までの間の1日(日曜・休日を除く)を対象とした調査を実施しました。この調査は建設業法上の許可を受けた法人企業(資本金300万円以上)約3,000社を対象とし、建設現場における人材の過不足状況を詳細に分析しています。
目次
全国的な不足傾向の深刻化
調査結果によると、建設技能労働者8職種の全国平均の不足率は2.3%を記録しました。これは前月(9月)の1.6%から0.7ポイント上昇しており、不足感が強まっている状況を示しています。また、前年同月(令和5年10月)の1.9%と比較しても0.4ポイント高い水準となり、建設業界における人材確保の課題が年々深刻化していることが明らかになりました。
■職種別の状況(原数値)
東北地域における危機的状況
特に深刻な状況を示しているのが東北地域です。同地域の8職種における不足率は4.9%に達し、前月の2.0%から2.9ポイントという大幅な上昇を記録しました。さらに、前年同月の1.3%と比較すると3.6ポイントも増加しており、地方における建設人材の確保が極めて困難な状況に陥っていることが浮き彫りとなりました。特に被災3県では6.0%という高い不足率を示しており、復興事業の進展に影響を及ぼす可能性も懸念されています。
東北地域の職種別の詳細分析
調査対象となった8職種の状況を詳しく見ていくと、以下のような特徴が明らかになりました。
特に不足が深刻な職種:
・左官:8.8%の不足率
・配管工:7.3%の不足率
・型わく工(土木):6.1%の不足率
比較的需給が安定している職種:
・電工:1.7%の不足率
・とび工:2.7%の不足率
特異な状況を示す職種:
・型わく工(建築):2.1%の過剰
これは他の職種と異なる傾向を示しており、建築工事の需要変動が影響している可能性があります。
地域別の需給動向
全国10地域の分析からは、以下のような特徴的な傾向が見られました。
深刻な不足地域:
・東北:4.9%(前月比2.9ポイント増)
・北海道:4.4%(前月比△0.1ポイント)
・関東:3.9%(前月比1.8ポイント増)
比較的安定している地域:
・沖縄:0.0%(需給均衡)
・中部:0.5%(前月比0.3ポイント増)
・中国:0.6%(前月比△0.5ポイント)
■地域別の状況(8職種計)(原数値)
現場運営の実態
残業・休日作業(強化現場)の状況についても興味深いデータが得られています。
・強化現場の割合:全手持現場数の2.1%
・前月からの変化:0.7ポイント減少
・前年同月比:1.5ポイント減少
強化理由の内訳:
・前工程の工事遅延:41.3%
・昼間時間帯時間の制約:14.3%
・無理な受注:11.1%
・天候不順:4.8%
・その他:28.6%
■手持現場の状況(8職種計)(原数値)
今後の見通しと対策
12月および1月の労働者確保に関する見通しでは、全国・東北地域ともに「普通」との回答が主流となっていますが、これは現在の不足状態を前提とした相対的な判断である可能性が高いと考えられます。
■今後の労働者の確保に関する見通し(8職種計)(原数値)
今後の課題として、以下の点が重要となっています。
人材育成の強化
・若手技能者の確保と育成
・熟練技能者の技術継承
・職業訓練制度の充実
労働環境の改善
・給与水準の見直し
・働き方改革の推進
・福利厚生の充実
生産性向上への取り組み
・ICT技術の活用
・施工方法の効率化
・作業プロセスの見直し
この調査結果は、建設業界が直面する構造的な課題を明確に示しており、特に地方における人材不足の解消や、専門技能者の育成・確保が喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。今後は、業界全体での継続的な取り組みと、政府による支援策の強化が求められます。
出典情報
国土交通省リリース,11 月の主要建設資材の需給動向は全ての調査対象資材において均衡~主要建設資材需給・価格動向調査(令和6 年11 月1~5 日現在)の結果~,https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00248.html