大林組、新会社設立で都市型データセンター事業に本格参入 都心部に1000億円規模の投資計画
大手建設会社の大林組は、データセンター事業への本格参入を発表しました。新会社「MiTASUN(ミタサン)株式会社」を設立し、東京都心部での都市型データセンターの開発・運営に乗り出します。2028年度には第一号となる施設を東京都港区に開設する計画で、今後10年間で総額約1,000億円を投資する方針です。
成長市場に向けた新規事業展開
この事業展開は、大林グループが掲げる「持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充」の一環として位置付けられています。同社は、建設事業で培った技術力と開発事業のノウハウを活かし、新たなビジネス機会の創出を目指しています。
データセンター市場は急速な成長を続けており、2022年に2兆円だった市場規模は、2027年には4兆円まで拡大すると予測されています。この成長の背景には、人工知能(AI)技術の進歩やクラウドサービスの利用拡大があります。
都心部の遊休ビルを活用した新戦略
現在、大規模なデータセンターの多くは大都市圏の郊外に集中していますが、今後は都心部でのニーズが高まると予想されています。その理由は、データ処理の即時性を重視する「エッジコンピューティング」の需要増加です。
都心でのデータセンター建設には用地確保という課題がありますが、大林組は独自の解決策を提案しています。大規模オフィスビルの供給増加により空室化が進む中規模ビルを活用し、これらを適切な電力消費量に抑えたデータセンターへと転換する計画です。
段階的な事業拡大とアライアンス戦略
新会社MiTASUNは、すでに都内での第二号となる用地も確保しており、2031年度までに40MW級のデータセンター群の構築を目指しています。さらに、他社とのアライアンスも積極的に推進し、以下の施策を展開する方針です。
・他社保有ビルのデータセンター化
・他のデータセンター事業者との相互接続
・持続的な施設規模の拡大
新会社の概要
MiTASUN株式会社の概要は以下の通りです。
・資本金:4.95億円
・本社所在地:東京都港区三田三丁目12-14
・代表者:綱脇彰則
・設立時期:2024年11月下旬
主な事業内容として、情報処理サービス業、情報提供サービス業、電気通信事業に加え、不動産の売買・賃貸なども手がけます。
今後の展望
大林グループは、この新規事業を通じて都市インフラの高度化に貢献し、持続可能な社会の実現を目指すとしています。特に注目されるのは、遊休化した都心の中規模ビルの有効活用という側面です。
データセンターの需要は今後も拡大が見込まれており、とりわけ都心部での需要増加が予想されています。大林組の都市型データセンター事業は、都市開発における新たなモデルケースとなる可能性を秘めています。エッジコンピューティングのニーズに応える立地と、既存ビルの活用による効率的な施設展開は、今後の都市型データセンター開発のスタンダードとなるかもしれません。
(注)エッジコンピューティングとは、利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置して、ネットワークの端点でデータ処理を行う技術を指します。
出典情報
株式会社大林組リリース,都市型データセンターの開発、運用を目的とした新会社を設立,https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20241111_7.html#