ウォーターPPPとは?いつから始まる?メリット・デメリットも解説

日本で起きている少子高齢化問題・施設の老朽化問題が顕在化したことにより、今後水道関連の事業においてウォーターPPPという仕組みが導入される計画です。では、ウォーターPPPにはどのような目的や効果があるのでしょうか。

本記事では、ウォーターPPPの概要や要件を深掘りしたのち、スタートするメリット・デメリットについて建設業界との関わりを交えながら解説します。

ウォーターPPPとは?わかりやすく解説

ウォーターPPPとは、以下に示す水道関連の分野において、公共施設等運営事業へ移行することを目的に、長期契約で管理・更新を一体的にマネジメントする仕組みのことです。

  • 水道
  • 下水道
  • 工業用水道

公共施設等運営事業とは?

利用料金を徴収する公共施設について、施設の所有権を自治体などが有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式です。

特に水道関連分野を含む建設業は、人手不足や高齢化の影響を強く受けているほか、埋設管の老朽化問題などに悩まされ続けています。

出典:国土交通省「下水道の維持管理」

なかでも設置から50年以上経過した管渠が、令和14年には9万kmを超えると予想されているなど、老朽化対策が追い付いていません。そこで発案されたのがウォーターPPPという仕組みです。

ウォーターPPPは公共と民間がパートナーシップを組み、水道関連の公共施設を管理・運用するというものであり、今までより高効率かつ低コストで維持管理に乗り出しやすくなります。令和9年度以降に要件化が進められるため、近いうちに水道関連の動き方が大きく変化すると予想されます。

ウォーターPPPのガイドラインにある4要件とは

ウォーターPPPは、すでに国土交通省から下水道分野のガイドライン(レベル3.5という設定段階)が公開されています。

そしてガイドラインのなかでは、事業に参入できる要件として4つの重要項目が定められました。どのような条件をもつ企業が新たな建設業界の動きに参加できるのか、詳しく見ていきましょう。

長期契約(原則10年)

ウォーターPPPに参加するためには、原則として10年間の長期契約を締結しなければなりません。10年もの間、継続してパートナーシップを組み続けながら事業を提供することに了承しなければ、ウォーターPPPに参加できないことに注意が必要です。

性能発注を原則

ウォーターPPPは、民間事業者に裁量をゆだねる「性能発注」が原則となります。民間事業者はサービス水準や性能を明らかにしなければならない一方で、国が進める計画よりもすばやく建設コストや工期を確定できるのが魅力です。

維持管理・更新の一体マネジメント

ウォーターPPPは、国がマネジメントを実施してその条件下で複数業務を委託をする「維持管理・更新一体マネジメント方式」を実施したのち、徐々に国の管理下のもと民間企業などが施設を運営する「コンセッション方式」に移行することが目的とされています。民間企業はこの動きを了承したうえで、委託などに対応しなければなりません。

プロフィットシェアの仕組みを導入

ウォーターPPPに参加したい民間企業は、プロフィットシェアと呼ばれる契約形態を採用しなければなりません。プロフィットシェアとは、あらかじめ設定された利益配分に基づいて報酬が出る契約形態です。契約期間中は分配の比率によって売上が変化することに気を付けなければなりません。

ウォーターPPPのメリット

ウォーターPPPを実施することには、国の建設事業、そして民間企業にとってのメリットがあります。どのような効果が生まれるのか詳しく見ていきましょう。

資金不足・技術的課題といった問題の解決

ウォーターPPPがスタートすれば、国が抱えている以下の問題を解決できるのがメリットです。

  • 水道関連への資金投資不足
  • 人材不足による技術的な対応力の低下

建設業界で人手不足・資金不足の問題を抱えているのは、民間企業だけでなく発注者となる国や自治体なども同様です。水道関連の事業以外にも費用を回す項目が多いことから、どうしても資金や人材が不足します。

一方でウォーターPPPの仕組みを活用すれば、民間企業が主体となって動くため、素早い意思決定や計画の立案が可能です。複数の民間企業が協力することにより、人材や資金を集めて動きやすくなることから、国・自治体が抱えている意思決定の遅さといった問題を解決できると注目されています。

水道基盤の強化

ウォーターPPPにより水道関連の事業スピードが向上すれば、老朽化問題を短期間で解決できるようになると考えられています。

例えば、民間企業が主体となり老朽化した下水管や設備を取り換えることから、新技術の導入などを活用して効率よく維持管理の延長を延ばせるのが魅力です。日本全国の水道基盤が強化でき、今よりも安全で高品質な水を届けやすくなると期待されています。

ウォーターPPPのデメリット

建設業界が頭を悩ませている「水道関連の問題」を解決できるウォーターPPPですが、仕組みの導入や民間への委託において2つのデメリットがあると言われています。

業務状況の把握や管理指導が必要になる

ウォーターPPPを実施する10年間は、国や自治体と民間企業が連携しながら動かなければなりません。このとき業務状況の把握や報告、その後の管理指導に大きな手間がかかるのではないかと不安視されている状況です。

10年間という長期的な動きであることから、一度スタートすれば、負担が増したとわかっても止められません。入念にルール化、仕組み化をしなければさらに建設業界の負担が増えるかもしれないと不安の声が挙がっています。

公共サービスの品質が下がりやすい

ウォーターPPPでは、民間企業に性能発注をすることから、次のような理由で公共サービスの品質に変化が起こりやすくなると不安視されています。

  • 利益を得るために価格改定が起こる(国民負担が増える)
  • 価格を抑える影響でサービスの質が下がる(補修・維持管理されなくなる)

水道関連の分野は国民の生活を維持するライフラインであることから、運営主体に依存してしまうことが懸念されています。サービス面でのトラブルが起きないようにするためにも、ウォーターPPPを施行するまでに、価格・サービス品質の維持についてのルール化が必要となるでしょう。

ウォーターPPPに適用できる補助金

2024年現在、発注者となる自治体がウォーターPPPを適用できるように、以下の2つの補助金が用意されています。

どちらもウォーターPPPという仕組みを整えるために欠かせない補助金です。前者は上限5,000万円、後者は申請数などに応じて予算が割り振られます。

まとめ

ウォーターPPPは現在の水道関連の問題を解決する取り組みとして考案され、令和9年以降に要件化される予定となっています。また、ウォーターPPPは原則10年の契約が必要など、民間企業が参加できる条件などが細かく設定されている状況です。

なお、ウォーターPPPにはメリットが多い一方で、管理やサービスにおけるデメリットがあることに注意しなければなりません。建設業界における水道分野の仕組みがどのように変化するのか今後も目が離せません。