人手不足倒産の前兆とは?倒産の傾向や今すぐ始められる対策を解説
近年、人手不足の影響を受け、多くの国内企業が倒産し始めているという話をよく聞きます。では、どのような企業で人手不足倒産が起きているのでしょうか。
本記事では、人手不足倒産の状況や、人手不足倒産が起きる前兆などを深掘りしたのち、問題を回避するための対策について解説します。
目次
人手不足倒産をしている企業が増加中
出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」
帝国データバンクが実施した人手不足の動向調査によると、2024年における人手不足倒産をした企業数が、過去10年間のうち最大の値を出していることがわかりました。
人手不足倒産は、新型コロナウイルスがまん延して自粛を余儀なくされた2020〜2021年あたりから増加が始まり、2024年には163件もの倒産が確認されている状況です。また、倒産した業種のほとんどが従業員数50人未満で経営をしている会社であり、約3割が建設関連の業種だったと判明しています。
なお、人手不足倒産は今後も多くの企業で起こりうる問題です。なぜ人手不足倒産が起きるのか、そして倒産を回避するために何ができるのか詳しく見ていきましょう。
【なぜ?】人手不足倒産が起きる前兆や理由
そもそもなぜ、1億人以上の人々が生活する日本で人手不足倒産が起きるのでしょうか。
まずは人手不足倒産が起きる企業の前兆や、具体的な理由について解説します。経営状況や職場状況と比較しながら問題がないか確認してみてください。
職場で少子高齢化の影響が出ている
出典:生命保険文化センター「少子高齢化はどれくらい進むの?」
人手不足倒産が起きている大きな理由として挙げられるのが、日本が抱える少子高齢化の問題です。
2020年時点で約3割の人たちが65歳以上の後期高齢者になっている日本は、世界でもっとも高齢化が進んでいる国だと言われています。また、出生率が低下していることにも目を向けなければなりません。
出典厚生労働省「出生数、合計特殊出生率の推移」
日本の出生率は、1974年まで起きていた第二次ベビーブームにおける年間200万人超えという状況から徐々に減少し、今では年間90万人を切るなど大幅に出生率が激減しています。
そして特に少子高齢化の影響をダイレクトに受けているのが建設業界です。29歳以下の若手人材が1割程度であり、危機的状況が迫りつつあります。
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」
以上より、辞めていった人材の代わりに人を雇おうとしても、そもそも働ける人がいません。ベビーブームに生まれた人たちが定年を迎えだした今、辞める人たちの代わりが見つからないと悩んでいる企業は、人手不足倒産に注意してください。
顧客に満足のいくサービスを提供できていない
顧客に満足のいくサービスを提供できていない会社も、次の流れで人手不足倒産のリスクが高まっていきます。
- サービス品質が落ちる
- 競合他社に顧客を奪われていく
- 売上が落ちて人材・人件費をカットせざるを得なくなる
- 会社評判のせいで求人を出しても人が集まりにくくなる
企業に人が入ってこない間も、高齢になった従業員は辞めていきます。最終的には、売上や人材とのバランスが取れなくなり、人手不足倒産をしてしまうこともあるでしょう。
以上より「最近顧客からの発注が減っている」「求人を出しても人が集まらなくなった」「内定を出してもすぐに辞退される」という状況に悩んでいる会社は、人手不足倒産のリスクが高まっているのかもしれません。
残業など従業員の負担が増加している
残業時間が多いなど、従業員に負担がかかりやすい職場環境だと、人が出ていきやすく人手不足倒産のリスクが高まりやすい傾向です。
特に建設業界は、残業時間が長いと言われています。厚生労働省の調査によると、他業種と比べて年364時間も労働時間が長く、日換算すると約1ヶ月もの時間を追加で仕事をしているような状況です。
出典:厚生労働省「建設業における時間外労働の上限規制について」
残業によりワークライフバランスを確保できなくなり、若手人材が辞めていくことはもちろん高齢化が慢性化している状態であるため、ベテランの人材も次々と辞めていきます。結果として、職場環境の悪さから人がいなくなり、人手不足倒産に陥ってしまうのです。
「社員のほとんどが毎日のように残業している」「残業の改善に力を入れていない」という企業は、近いうちに人手不足倒産のリスクがやってくるかもしれません。
人手不足倒産を避けるために必要な対策
建設業の問題を解決して人手不足倒産のリスクを減らしたいなら、本項で紹介する3つの対策に取り組んでみてください。すぐに始められるもの、そして計画的に進めていくものを紹介するので、取り入れやすいものからチャレンジしてみましょう。
従業員の働きやすい環境を構築する
お金をかけることなくすぐに始められるのが、職場環境の改革です。例えば、次のような方法で職場環境をより良いものに変えられます。
- 残業増加の原因を見つけ出す
- 各従業員の業務負担率を見える化する
そもそもなぜ残業が発生しているのかを見つけ出すことはもちろん、誰に仕事が集まりやすいのかなどをヒアリングし、情報を整理していきます。職場環境の改革はひとりだけでは進められないため、ぜひ経営者層などまわりの人を巻き込みながら計画を立ててみてください。
業務効率化・DX化に力を入れる
すでに人手不足の問題が顕在化している場合には、業務効率化・DX化をスタートするのがおすすめです。
もし、アナログな作業が多いせいでひとり当たりの負担が増えているのなら、効率化できるシステムやツールを導入しましょう。例えば、建設業の場合DX化としてBIM/CIMやRPAツール、UAVといった導入などが効率化のアイデアとして登場しています。
また、NETISに登録されている業務効率化ツールやシステムなども数多く見つかるので、ぜひ自社のアナログな作業を改善できるツールがないか調べてみてください。
採用活動の精度を高める
人がよく辞める企業の場合、入社後のミスマッチを防止するために採用活動の精度を高めることが大切です。例えば、次の方法で求める人材が集まりやすくなります。
- 採用ページの情報を充実化する
- 職場見学に力を入れる
- 良く見せるための嘘(残業時間や社内の雰囲気など)を載せない
建設業の仕事は、求職者にとってイメージしづらい部分が多いため、少しでも可視化できるように仕事内容や社員インタビューを載せた採用ページを準備するのがよいでしょう。また、よく見せすぎないこともミスマッチを防ぐうえで欠かせません。
なかには入社後に強いギャップを感じて辞めてしまう人もいるので、教育の手間や新たな人材確保の手間を減らしたいなら、最初からターゲットを絞り込んで採用活動を進めることが重要です。
人手不足倒産が「嘘」だと言われている理由
噂のひとつとして「人手不足倒産は嘘だ」という意見が出ています。ですが実際に建設業界などでは、人手不足倒産が起きている状況です。ではなぜ、嘘だと言われているのでしょうか。具体的な理由を以下にまとめました。
- 人手不足が起きていない業種も多いため
- 人手不足とは別の理由で倒産している会社もあるため
例えば、人が集まりやすいIT系の会社などでは人手不足が起きていません。また、人手不足とは関係なく、売上を出せないせいで倒産する企業などもあります。以上より、業界によって特色が違うほか、倒産の要因はほかにも複数あることから「人手不足倒産=嘘」という噂が広まっているのです。
まとめ
人手不足倒産が起きている企業のうち、約3割は建設業界だと言われています。また、少子高齢化や職場環境の問題など、人手不足の問題解決を阻む原因が数多くあることも建設業界ならではの特徴です。
今後起きるかもしれない人手不足倒産を回避したいなら、本記事で紹介した兆候や原因を把握し、自社の状況と比較してみてください。もしあてはまる項目が多いなら、新技術の導入や業務効率化システムなどを活用して、人手不足に悩まされない仕事スタイルを確立してみてはいかがでしょうか。